diary Alisato's 本買い日誌
1999年11月後半 *


1999年
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11月後半

11月後半の話題
11月後半の読了本


1999.11.15(月)

■阿刀田高『アイデアを捜せ』

 阿刀田高『アイデアを捜せ』(文春文庫)読了。
 どうやら阿刀田高のエッセイは私の好みに合っているようです。元国会図書館員のせいか巻末にリストがついてくるのもポイント高し。博学でどんでん返しを好むところも私好み。

 私の中では都筑道夫、泡坂妻夫のラインのヒトという位置づけです。
 他の本も探す予定。

ホームページの更新

 読了記録をつけるのがせいいっぱいで、感想が書けませーん。
 考えてみたら、やたらとコンテンツが多いんですよねぇ、このサイト。(と、さりげなく(?)宣伝)
 生きているコンテンツだけでも、日記にリストが6つ(ハヤカワ文庫FT角川ホラー文庫赤木かん子井辻朱美花郁悠紀子波津彬子)、和風素材とそのリンク集、花郁悠紀子掲示板、作成中のリストが2つ(コバルト文庫和製ファンタジー)。 点数を絞りたいけど、どれもやめたくな〜い、欲張りなワタシ。

 一番の計算違いは花郁悠紀子作品リストかも。もうほとんど改訂することはあるまいと思っていたら、文庫版がでるとは。 嬉しいけどリストを直さなくちゃならんのが大変です。

 コバルトと和製ファンタジーは一緒に立ちあげるべきじゃなかったなぁ。でも発端が一緒でしたからねぇ……。
 コバルト文庫は旧作家番号190番まで入力済み。現在、いちばん面倒なY.A.シリーズのリストを作ってます。 整理番号が訳者名で管理されていて、その扱いが面倒なのです。
 それから、コバルト・ブックスの情報もいただいたので、そっちもリスト化する予定。

 和製ファンタジー関連では、眼鏡猫さんからのメールを転載しました。 読書遍歴についてです。
 「和製ファンタジーのルーツ」には、作家/作品の側のルーツと、読者の側のルーツ(ファンタジー読みは、いかなる経過をたどってファンタジーを読むようになったか)の二つの面があると思うので、個人的な読書遍歴も貴重な証言だったりするのです。
 眼鏡猫さんの場合は、どちらかというと「マニアな人の証言」の部類に入りそうですねぇ。

新刊書店で本を買う

 新刊書店で以下の本を購入。『フェネラ』は、レジでビニール袋詰めにされようとする寸前に「それ下さい!」と、ひったくるように購入。(笑) 店員さんも手間が省けてよかったでしょ。

・花郁悠紀子『フェネラ』(秋田文庫)……久美沙織さんが解説です。
・朝松健『比良坂ファイル 幻の女』(ハルキ文庫)……妹尾ゆふ子さんが解説です。
・矢沢あい『下弦の月 3』(りぼんマスコットコミックス)


1999.11.16(火)

 コバルト文庫のリストを修正中、もう縁を切りたい某ボランティアサークルのメンバーから先日のバザーの件でうざってー電話があって話しているうちにどこかが切れてしまって「いやです」を20回ぐらいくりかえす壊れた人になって受話器を叩きつけ別のメンバーのおばさんに報告して盛大なおばさんのひとり語りの入った慰めを聞いているうちに、ちょっと復調する。バイタリティのありすぎる人はうっとぉしい時もあるけど、充電に役にたつこともあるようです。

 風邪をひいたようなので、薬飲んで眠って、起きて、花郁悠紀子ページを更新する。


1999.11.17(水)

 眼鏡猫さんからのメールへのリンクが切れてました。直しました。今度は大丈夫……だと思う。

風邪薬を買いに

 風邪気味なので、町内のとある薬屋が作っている自家整調剤の風邪薬を買いに出かける。天気はいいが風が強くて、薬買いに行って風邪を悪化ささせるような気がしないでもない。
 途中本屋で、久美沙織『新人賞の獲り方おしえます』(徳間文庫)と白泉社の『メロディ』を買う。
 久美沙織『新人賞の獲り方おしえます』は、単行本も持っているのに文庫本も買ってしまいましたよ。あとがき長いし、瀬名秀明の解説がついてたもんで。『メロディ』には、波津彬子が初登場。たまげたことに、11月末に単行本、12月に文庫2冊が白泉社から出るそうです。

 さて、薬局で薬を買おうと思ったら財布がないっ! 私は小遣い用のと家計用のとふたつ財布を持っていまして、家計用のがみつからない。本屋で落としたとも思えないので、家にあるのでしょうといいながら、小遣い用の財布から金を出して薬を購入。
 店先で大騒ぎしていた私を哀れんでか、薬局のおばちゃんはしょうが湯のサンプルを3袋もつけてくれました。ありがとう、ありがとう。

 ぜったい家にあるはずだと自分を励ましつつ昨日までの記憶をたどり(でも、さっぱり思い出せない)、冷や汗かきながらおお慌てで戻り(徒歩だったから、帰り着くまでが遠かったよ)、家の中に駆け込むと、ダイニングテーブルの上に財布が鎮座ましましておりました。ああ、良かった。

■竹内志麻子『青い月(ちきゅう)の恋人たち』

 竹内志麻子『青い月(ちきゅう)の恋人たち』(集英社文庫 コバルトシリーズ) 読了。
 タイトルと表紙を見て、爽やかなラブコメかとおもったら、これが結構過激というか……。(笑)
主人公は、非処女(って、わざわざ書いてある)の17歳の女子高校生で、その彼氏が9歳年上の画家見習いで、 劇団の主演女優が割り込んできて自殺未遂事件を起こすは、クラスメイトの妹は妻子ある男と不倫してるは、クラスメイトの美少年は画家のマダムのツバメだわで、ゴージャスでない名香智子といった感じ。
 主人公が17歳で作者が24歳なのに、視点がババくさいというか醒めているのが妙といえば妙です。 これもお仕事だからと割り切ってアイドル歌手やってる女の子のような雰囲気があります。

 のちの才能(この作者、『ぼっけぇ、きょうてぇ』のヒトです)の片鱗が見えるかどうか、私にはよくわからんのですが、 ときどき、あれっと思うような表現にぶつかります。たとえば、こんなの。

===引用開始===
 毎日プールヘ入って焼けてるはずなのに、今日の鳴子は貧血で倒れてた人のように青白い頬をしていた。
 ジーンズに包まれて見えなかった足は、もっと白いような気もした。
(p.82)
===引用終了===

ちょっと他のも読んでみようかなぁ。コバルト文庫で、以下のような本が出てました。

・『夢見るうさぎとポリスボーイ』(1986/11)
・『そこでそのまま恋をして』(1987/07/15
・『青い月の恋人たち』(1988/05)
・『人魚たちの子守歌』(1988/12)
・『どんな恋にも美人なあたし』(1989/11)
・『ひと夏の迷い子たち』(1990/07)
・『制服のマリア』(1992/09)

コバルト・ピンキーからは、以下の本が出てます。どちらも漫画のノベライゼーション。
・『花より男子』1〜15
・『パッション・ガールズ』

漫画の小説化

 ところで、『花より男子』の話で思いだしましたが、なぜ漫画作品を小説にしたりするのか、私には不思議でなりません。 どうして漫画だけじゃいけないの? なんでわざわざ小説化するの? 小説にして、どんなメリットがあるというのでしょう?
 映画やアニメやゲームの小説化というのなら、わかります。ビデオやゲーム機は、電車の中では使えないものね。 あの感動を小説でもう一度……ってのは、私にも覚えがあるし。
 小説を漫画化するというのも、わかります。小説には絵がついていないものね。 漫画では描ききれなかったストーリーを書くとか、視点を変えてといかいうのも、わかるんだけど。 でも、コバルト文庫などの目録を見る限り、そのまんま小説化しているようなんですよねぇ。
 心理描写が細かい――のかなぁ?

 あ、ひょっとして漫画を読む層と、こういうコミック・ノベライセーションを読む層は別なのだろうか? 謎です。


1999.11.19(金)

 FTPの失敗で、トップページが壊れていたようです。ご指摘くださった皆様ありがとうございます。

 リンクページの修正中(まだ終わっていません)。みなさん、ドメインを取得したり、お引越ししたりして、結構URLが変更になってますね。 こういうのは、リンクチェッカーじゃチェックできないから、地道にチェックする必要がありますね。

 風邪はひいてるし、胃は痛いし……。

■キャサリン・アサロ「四声のオーロラ」

 キャサリン・アサロ「四声のオーロラ」(『SFマガジン 1999年12月号』掲載)読了。

 夢想者たちの住むアンサーツ星のナイチンゲール市に閉じ込められた男・ジャトは、ひとりの女性宇宙士と出会う。 彼女の見せた夢の支払にジャトは彼の作品である「四声のフーガを奏でる鳥の彫像」を手渡そうとするが……。

 ハードSF的ガジェットはいろいろ出てくるし、主人公がなぜ閉じ込められているのかとか、「四声のフーガを奏でる鳥の彫像」とは何かなどの謎で読者の興味を引き付ける工夫がされておりますが、要は悪者に閉じ込められたお姫様を強い騎士さまが助け出す物語の男女を入れ替えた話だと思えばよろしいかと。大変面白ろうございました。続編の『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』も読むことに決定。
 波瀾万丈の大銀河恋愛浪漫本格空想科学冒険活劇ってのは、正しい惹句ですね。『星界の紋章』とか『戦士志願』とかが好きな人に向くのではないかな。

 ヒロインのソズの着ているのがアスカのプラグスーツに見えるのは、わたしだけじゃないらしい

■高野史緒「慈悲深き慈愛あまねきアッラーの御名において」

高野史緒「慈悲深き慈愛あまねきアッラーの御名において」(『SFマガジン 1999年12月号』掲載)読了。

 高野史緒は、ものの見方も題材も文体も私好みの作家で、作品を読むたびにツボ押され状態でたいへん気持ちよーくなってしまうのだが、この作品でもしっかりツボを刺激してくれました。ごろにゃーん。

 「エクス・オペレ・オペラート」(『SFマガジン 1999年2月号』掲載)の続編で、前作にもでてきた科学者アルフォンスが「過去を取り戻す機械」を求めて砂漠の中の伝説の都パルミラへとたどり着く。そこでは「高潔な太守」に率いられた女たちが都に迷い込んだ男達の世話をしていたが……。

(注:以下ネタバレと思われる個所はあぶり出し。リバースしてお読みください。)
 これは、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの作品に対するオマージュだと思います。(あるいは佐藤史生の『アレフ』かも。)
 なぜそう思うかといえば、「パルミラの太守」の正体が高野史緒がティプトリー・ジュニア特集に寄せた一文「女たちさえ知らない女」(『SFマガジン 1997年12月号』p.91)に酷似しているからです。
 そしてティプトリーに捧げられた作品だという視点から読むと、この作品の真のテーマが「男たちの知らない女」であることがわかるのでは。
 父権的なイスラム教が使われているのは、そのためです。タイトルの「慈悲深き慈愛あまねきアッラーの御名において」には、実はたいへんな皮肉が込められているのだと思いますよ > 林さん。(一種のトラップかも。)
 主人公のアルフォンスをはじめとする、男達の描き方にしてもまた然り。特にジュスタンに対する扱いは……。(笑)

 アルフォンスがパルミラから生還できるのは、ある種の男性に対する作者の期待感の現われでありましょう。 (もちろん、彼がいなくなるとせっかくの伏線がふいになって連作が続かないという事情もありましょうが)
 以前のフェミニズムな作家が「男要らないSF」に走ったのに比べると90年代の女性作家はまだ楽観的であります。

 ところで、マーリファが「知恵」を意味し、<夢の先生>の想い人・ベル姫が「美」を意味するのだとしたら、 他の人物の名前にも意味があるような……。


1999.11.20(土)

 すみません、風邪悪化してます。更新止まるかも〜。
 鼻が詰まると思考力が鈍るのはなぜ〜。


1999.11.21(日)

ブック・オフ太田高林店とブック・オフ太田新井店

 天気が良いので、ドライブがてら太田市へ。風邪は小康状態。
 日記によれば、ブック・オフ太田高林店へ行くのは、どうやら一年ぶりらしい。店内レイアウトがすっかり変わっていた。
 100円コーナーで本を漁るが、清算時に半額本が混じっていたことが判明。そのまま買ったが、すっごく悔しい。表紙の痛んだ<騒乱の国ヴォナール>に300円も出してしまったなんて……。
 一方、美本でカラーイラスト満載のリチャード・アダムズ作/井辻朱美訳『鉄のオオカミ』(新書館)を100円でゲット。なんか複雑な気分。
 あとはコバルト文庫をチェックしたりとか。

 購入本は以下の通り。古書マニアな皆さんに習って、ダブリ本にはdマークをつけてみることにしました。
d ピーター・S・ビーグル『心地よく秘密めいたところ』(創元推理文庫)
・テア・フォンハルボウ『メトロポリス』(創元推理文庫)
・ポーラ・ヴォルスキー『魔都シャリーンの嵐』(ハヤカワ文庫FT)
・ポーラ・ヴォルスキー『ベヴィアール宮殿の薔薇』(ハヤカワ文庫FT)
・トーマス・M・ディッシュ『いさましいちびのトースター』(ハヤカワ文庫SF)
・明智抄『野ばらの国』(ぶんか社 ホラーMシリーズ)
d 山岸凉子『妖精王の帰還』(新書館)
・あずみ椋『光り輝く迷宮』(新書館)

 ブック・オフ太田新井店のほうは、あまり変わっていない様子。

・ブラッドベリ他『スターシップ』(新潮文庫)
『SFマガジン 1993年8月号』
『SFマガジン 1994年2月号』
・神坂一『アトラスの魔道士』(富士見ファンタジア文庫)

 『SFマガジン 1993年8月号』には、パット・マーフィ「骨」、コードウェイナー・スミス「宝石の惑星」、イーガン「貸金庫」が掲載されている。
 ・『SFマガジン 1994年2月号』には、牧野修「甘い血」が載っていたので購入。

ブックマンズアカデミー太田店

 まるで予備校のような名前ですが、本屋です。文真堂書店という新刊書店がおしゃれにリニューアルオープンしたらしい。

 入り口から見える場所にこだわりステーショナリー(文具じゃなくて、「ステーショナリー」)売り場を置いてみたり、雑誌売り場以外は平台なしの書棚だったり、各所に椅子や検索機をおいてみたりと、都会の大型書店を意識した作り。図書館みたいな棚に在庫を1冊づつ並べるというのは、ジュンク堂方式かな? ハヤカワ文庫は、目録にある分は全部並んでいるようでした。コミックスは置かず、新書ノベルズもなるべく数を減らし、その分ハードカバーや専門書に力をいれる方針のようです。でも、棚の作りはまだ甘い(笑)。

 でも、幻想文学の棚に『季刊 幻想文学』のバックナンバーの揃いを発見。 <書物の王国>シリーズも並んでおりました。あの56号が表紙をみせて あかぎかんこ『この本読んだ? おぼえてる?』と並んでいたのには、絶句。

 この店では、以下の本を購入。
・キャサリン・アサロ『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』(ハヤカワ文庫SF)
・あかぎかんこ『この本読んだ? おぼえてる?』(フェリシモ出版)

平和主義者

===引用開始===
 そもそもあたしは平和主義者なのだ。
===引用終了===
神坂一『スレイヤーズ2 アトラスの魔道士』p.6(富士見ファンタジア文庫)
 語っているのは、あのリナ・インバース
 そうですか、平和主義者ってのは、こういう意味があるんですか。なるほどねぇ。

 この一節だけでも買う価値はありましたね。『スレイヤーズ 2』


1999.11.22(月)

 先日のバザーで行方不明になっていた商品が、すったもんだの末、バザー当日には鍵がかかっていた(らしい)ロッカーの中から発見される。発見の経緯には謎が多い。

 早寝したせいで、風邪はかなり良くなる。


1999.11.23(火)

 お久しぶりでございます。
 ちょっとグレてました。
 グレている間も、コバルト文庫のリストの入力をしたり、日記の索引を作ったりはしているのですが。

ヤング・アダルトの嚆矢

 ああ〜、ファンタジー年表の更新をサボっている間に、【大森望さんの日記 11月18日】に怒涛の関連発言がぁぁぁ……。
 リンクもされています。こんなことなら、もっとまじめに更新したのに。
 あの年表は、ファンタジー中心のつもりでしたが、少なくともSFに関してはもう少し増補しないとだめですね。あれだけだと、「SFの夏の時代」がどこに位置していたかが読めなくて、トンチンカンな意見が出てきそうだし。

 三村美衣さんの説だとヤング・アダルトの嚆矢は、笹本祐一『妖精作戦』(ソノラマ文庫, 1984)のようですね。 (京フェスではどんな話題が出たのでしょう。早くレポートがあがらないかな)
 引用します。

===引用開始===
大人というものに魅力も価値も見失ったアウトサイダーたちの文学をアメリカの図書館はヤング・アダルトと分類した。 少年たちが実際に使っているリアルな言葉で綴った一人称小説、若い書き手の登場による書き手と読み手の接近といった、 現在の日本のヤング・アダルトにも通底する要素が、このときすでに内包されていた。
 と、古い回顧を始めてしまったのは、今年、デビュー十周年を記念して新訂版が刊行された『妖精作戦』(笹本祐一)を眺めながら、いろいろ考えてしまったからだ。 この本こそが、現在のヤング・アダルトの嚆矢となった作品である。実際には今後、角川文庫のファンタジー・フェアを経てスニーカー文庫が創刊し、雑誌<ドラゴンマガジン>がスタートして、ヤング・アダルト・マーケットは成立する。が、スピーディな展開がもたらすドライブ感や、七〇年代から八〇年年代にかけてのアニメや特撮ものを共通基盤にした、ヤング・アダルト独特のノリはこの小説から始まったといっていい。
===引用終了===
(『SFマガジン 1995年2月号』p.376「SF総括1994 YOUNG ADULT 異世界ファンタジィ、他」)

1999/11/27追記 大森日記によれば、この説に関しては本人も忘れていた模様だそうです。)

 私はヤングアダルトの嚆矢は、〈クラッシャージョウ〉シリーズの第一巻が妥当だと思うし、 「物語とイラストをパッケージにして商品化した」一番最初の作品は、〈ノースウェスト・スミス〉あたりでないの?(←単なる偏愛の結果か?) とか思うのですが。

 末國義己「〈ヤングアダルト〉という現象 キャラクターと物語受容、その変容をめぐって」は読んでみたいので、『鳩よ!』を捜してみませう。(うちのご近所で見つかるかどうか疑問ですが。)大森せんせの反論を読む限り、すごくヘンみたいですねぇ。

 〈十二国記〉は、最初の2作『月の影 影の海』と『風の万里 黎明の空』だけがヤングアダルトだと思います。
(しかし悪霊シリーズといい〈十二国記〉といい、なんで小野不由美はどれがどれだかわからなくなるようなタイトルをつけるんですかねぇ。ややっこしくてしょうがない。)

コバルト・ブックス

 眞明さんから、コバルト文庫の前身であるコバルト・ブックスとリストも送っていただいたので、それも入力しなくちゃなぁと思っております。
(眞明さん、どうもありがとうございました)
 このコバルト・ブックスは、貸し本用だったものだそうで、綴じ目を紐で補強して、痛まないようにビニールのカバーがかかっています。そのカバーも裏にノリがついたビニール(なんていうんでしたっけ? 図書館で使うやつ)ではなくて、普通のビニールを切って端をセメダインで表紙裏に貼り付けてあるという……。ある種の貴重品です。なんだか昔の文化の一端に触れたような気がします。


1999.11.24(水)

帝国はーとてもーつよいー

 あちこちの 【京フェス'99レポート】 で言及されている「帝国はーとてもーつよいー」というSWの帝国マーチの決めの歌詞ですが、 「デス・スター丸い」では、なかったでしょうか?
(1999/11/27追記 正解だったようです。)

 実はワタクシ、この歌が歌えるのでございます。SF系コンベンションに行ったこともないのに。 白いのが「トルーパー」だったってのは、今回はじめて知りましたが。

 なぜ私がこの歌を知っているのかというと、とある方に教わった(というか、聞いているうちに覚えたというか)からでございます。
 そう、あれは、私がまだ現役女子大生だった頃……
注:以下、年寄りの昔語りが始まるので、うざってーと思った人は、ここまで飛んでね。
 中山星香ファンクラブの「お茶会」なるものに出席した私は、ひとりの女性と同じテーブルになったのです。

 ショートッカットのその方は、どうやらSF大会帰りで異様にハイになっていたらしく、かの「帝国はーとてもーつよいー」という歌をお茶会の間中リバースで歌い続け、「おまえ百までわしゃ九十九まで、ともにまるぺの尽きるまで……」(←いま聞いたら、さらに凄みがあるでしょう。冗談じゃなくなってきてるから)といった、SF大会仕込みのギャグを飛ばしつつ、ラリイ・ニーヴンの作品にでてくるキャットテールのぬいぐるみを振り回し、「ホーガンはいいわよっ! ニーヴンもいいわよっ!」とせっせと布教にいそしんでおられました。

 新井素子嬢が「とある人に作ってもらった」といい、「マリブのさざなみ」という芸をやらせて遊んでいたキャットテールのぬいぐるみ(←新井素子ファンならご存知なのでは?)は、この方がお作りになったそうであります。

 もう顔も名前も(ペンネーム使っていた人もいるから、もともとあやふやなんだけど)思い出せませんが、 キャラクターの強烈さだけは、今でもはっきりと記憶に残っています。
 新井素子にキャットテールのぬいぐるみを作ってあげたというあの方はいったどなた? あれだけの濃さの方ですもの、今でもSF界かネット内にいらっしゃるような気がするんですけれども……。
(って、こーゆー書き方したら、名乗りでたくても名乗り出られないか?(笑))

 ともかく、私はそのたった数時間の出会いによって帝国マーチの歌詞をマスターし、世の中には<ペリー・ローダン>シリーズを「まるぺ」と呼ぶ人々が存在することを知ったのでございます。(「まるぺ」がSF界における一種の被差別階級であるのを知るのはもっと後の話となる) SFな方々のバイタリティを目の当たりにし、畏怖の念を植え付けられた貴重な体験でございました。
 お勧めされたニーヴンは、一冊だけ図書館で借りて読んでみましたが、現在のワタクシの蔵書に一冊もニーヴンがないところをみるとあまり好みではなかったのでしょうねぇ。

ソノラマ文庫とクラシャージョウ

 昨日の続き。
以下、晶文社系ヤング・アダルトは「YA」、スニーカー文庫等などへつながるものを「おたく系ヤングアダルト」または、ただの「ヤングアダルト」と表記します。

 〈クラッシャージョウ〉シリーズが本当に「ヤングアダルトの嚆矢」であるのかを確かめようと、WWWでソノラマ文庫の一覧を漁ってみました。
ライトノヴェルズのページ】 には、ISBNまで付いた朝日ソノラマ文庫一覧があるのですが、著者名順なので少々扱いにくい。
goo書籍検索】 は、1977年以前のデータは不完全のようだし、 【TRC】 には、1980年以前のデータはない。 で、しょうがないので、またあちこちから資料を引いてきて、突き合わせてリスト作りました。

 ソノラマ文庫 初期170冊

1980年12月刊行分までのデータが並んでいます。これ以降は、 【TRC】 で「ソノラマ文庫」をキー検索をかければ、ほぼ正確な刊行順リストを見ることが出来ます。

 で、このリストを眺めていますと、ほんとに初期のものは鶴書房の《SFベストセラーズ》に入っていた作品だとか、 横溝正史や野村胡堂などが並んでいますね。要するに単行本を文庫化したのだと思います。
 1977年に入ると、辻真先や赤川次郎の名前も見えて、新作が増えてきているのかなぁという気がします。
 ですが、妙なのは79番以降です。1977年の8月から10月にかけて、いきなり山村正夫編集のミステリーアンソロジーと吉田としの少女小説がまとめて入ってきます。なんなんでしょう、これ? いったいこの時期になにがあったのか、他文庫などとの関連を調べてみたい気がします。(単に担当編集者が替わっただけかも)

 で、1977年11月に〈クラッシャージョウ〉シリーズの第1巻、高千穂遥『連帯惑星ピザンの危機』が出ます。 よっぽど売れたんでしょうね、その後3ヶ月おきに続編が出てます。そしてなんと90年代に入ってもまだ現役です。

 さて、〈クラッシャージョウ〉シリーズが「ヤングアダルト」どうかですが、ソノラマ文庫に入っているから大人向けではないし、作者の視線は読者とほぼ同じ高さだし、ノスタルジー要素なんぞはないし、一応SFだし、大森望定義のヤングアダルトの条件 (【狂乱西葛西日記99年10月26日】参照)は、十分満たしています。

 というわけで、インパクトの強さと影響力の高さ(人気があるってことは、そういことです)から見ても、 〈クラッシャージョウ〉シリーズが「ヤングアダルトの嚆矢」でありましょう。(少なくともソノラマ文庫においては)

 実は少年少女向け文庫としては、ソノラマ文庫、コバルト文庫のほかに秋元文庫というのがあるんですが、これが少々気になります。


1999.11.25(木)

■キャサリン・アサロ『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』

 キャサリン・アサロ『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』(ハヤカワ文庫SF)読了。
 主人公ソズの一人称で書かれているせいか、女探偵物(サラ・パレッキーとかコーンウェルとか)を読んでいるような気分でした。あと、『暗黒星雲のかなたに』とかを思い出したです。
 SFガジェットにアレルギーのない女探偵ミステリーファンは、楽しく読めるのでは? SF的蘊蓄は、右から左に読み流していても十分に面白いです。

 女探偵物と違って、主人公は48歳でも若々しいし強いし、頭悪い男どもに馬鹿にされることも(あんまり)ないし、出てくる男性もわりといい男が多い(そしてなぜか主人公より年下が多い)し……。やっぱり、こういう点ではSFの設定って便利だね。

 『星界の紋章』よりは大人向けでしたねぇ。
 ソズの兄で、マザコンのクージ様が結構好きだったりして。やはり声をアテるなら塩沢兼人さんでしょう。

ブックマーク

 秋元文庫やコバルト文庫の情報を求めてネットを検索していたら、以下のところを発見。

 秋元文庫のリストは、なさそうですねぇ。書籍検索で秋元文庫を調べると1986年以降は検索できないので、1987年には休刊してしまったのでしょうね。スニーカー文庫の創刊と入れ違いってのが、なにやら意味深。


1999.11.26(金)

続・平和主義者

 あら、思わぬところから反応が……。
 そうですか、スレイヤーズ外伝を読まないと「平和主義者」という語の深い意味は、解りませんか。あ、巻末の紹介にある「天下無敵の平和主義者」ってのが、それかな?
 しかし外伝には、ガウリイ(アニメより小説のほうがまとも)もゼルガデス(あたしゃ、アニメ版のこの人のファン)も出てこないんでしょ。ううむ……。とりあえず、ゼロス(実は、こちらもファン)が出てくるところまでは、スレイヤーズ本伝を読む予定。

新井素子はヤング・アダルトか?

 コバルト文庫リスト(すみません、新井素子の著作の順番が間違ってました)を眺めていて思ったのだが、1981年に『星へいく船』を書いている新井素子は「ヤング・アダルトの嚆矢」じゃないんだろうか?
 コバルト文庫に入っていて、作者が若くて、あの文体でSFなのに、なぜ新井素子は「ヤング・アダルト」と呼ばれないのだろう? 『奇想天外』出身だから?

 うっかり新井素子を「ヤング・アダルト」に入れてしまうと、いままで「ヤング・アダルト」を馬鹿にしていた新井素子ファンのSF者の立場がないからだったりはしないですよね。(そういう人いるのかな? たいていの素子ファンは「ヤング・アダルト」に寛大だと思うが……)

 もっとも私の感覚でも新井素子は「おたく系ヤング・アダルト」ではないんですけどね。それがなぜなのか、自分でもわからない。
 デビュー時期が早すぎるせいなのかなぁ。寡作のせいかもしれません。

 大森さんの「ヤング・アダルト」定義に「1年に3冊以上の文庫本を出す作家の作品」(1999/11/27追記 「単行本」じゃなくて「文庫本」ね。3冊じゃ多いか?)というのを付け加えるとよいのかも。(笑)
 そうすりゃ、新井素子も小野不由美も「ヤング・アダルト」からは外れます。

新刊書店で本を買う

 家計簿つけて、銀行にいって、郵便局から某サークルの会費を払い込んで、新刊書店で本を買う。

『プチフラワー』2000年1月号
・綾辻行人『眼球綺譚』(集英社文庫)

 『プチフラワー』は、佐藤史生目当て。佐藤史生と名香智子と萩尾望都のところしか読むところがない。 1冊のちょうど半分ですね。コストパフォーマンスが悪い。


1999.11.27(土)

新刊書店

 『鳩よ!』と『ユリイカ』の最新号を探しに、文教堂系列の本屋へ。
 この店は、以前は中井英夫のハードカバーを入れていたり、新本格系のハードカバーを目立つところに置いたりと、結構面白い棚作りをしていたのだが、どうも最近雰囲気が荒んでいる。アダルト系の本やミリタリー系の本がやけに目立つようになり、平積みの棚は乱れ、一部の棚がスカスカだったり……。新刊は入るのは、もちろん遅い。(これは以前と同じ)
 店長か棚構成担当者が替わったのだと思うが、根本的に人手が足りていないのかもしれない。郊外型書店なので、やたらと売り場が広いのだが、無駄に広いだけという気がしないでもない。大丈夫だろうかなぁ。

 結局欲しい本は全然見つからず。

 次に寄ったのは、TUTAYA系列の店。マンガの新刊が入るのは、私の行き付けの店ではここが一番早い。
 『ユリイカ』1999年12月号をゲット。特集は「ミステリ・ルネッサンス」。
 『SFマガジン』は、コラムだけ読んでパス。次号はヤングの「たんぽぽ娘」が載るそうなので買います。

■『ユリイカ』1999年12月号

 『ユリイカ』1999年12月号 特集:ミステリ・ルネッサンスを読む。

 ミステリ読者が対象ではないので、ミステリに薄い人間にもわかりやすく、大変面白いです。
 『ハサミ男』の殊能将之のインタビューと『バトル・ロワイヤル』の高見広春のインタビューが載っているので、みなさんお買い逃しなく。

 殊能将之のインタビューは、インタビュアーが小谷真理なんですが、なぜか本格ミステリについて殊能将之が小谷真理に対してレクチャーするみたいな形になっています。タイトルが「本格ミステリ VS ファンタジー」で、なかなかに興味深いです。 面白かったので、今度は「本格ミステリ VS SF」をSFマガジンでやって欲しいなり。 SF界もこんな人材を放っておく手はないと思うがなぁ。

 綾辻行人の登場し、本格ミステリの「第三の波」が始まるのが、 「ファンタジー・バブル」始まりとほぼ同時の1987年だというのは、どういうことなんだろうなぁと思ったり。
 SFとミステリーとファンタジーとホラーの4つの年表を作って、突き合わせてみれば面白いのに。


1999.11.28(日)

 日販の【本やタウン】のシステムが変更されて、検索に使えないサイトに成り下がりやがりました。(怒)
 えー、えー、企業ページは金にならないことはやらないんでしょうとも。そうでしょうとも。ふんっ!


1999.11.29(月)

 みのうらさま、スレイヤーズの順番、了解いたしましたー。4巻読む前に外伝ですね。 要するにカバー見返しにある既刊リストの順番に読めばよろしいのですね。

書籍検索と在庫検索

 昨日はワタクシとしたことがつい取り乱しまして、失礼しましたー。
 でもエキスパート検索のなくなった【本やタウン】が使えないのは本当だ。ターゲットやジャンルを絞らない新刊案内なんて使えないコンテンツの極みなのに、何考えてんだ。

 リンクページはそこそこ使えます。
(1999/12/01追記)
と、ぶつくさいっていたら、安田ママさんの掲示板でネコネコさんからの情報が。 モールの書店の中でまだ無料で使えるらしいというので確認してみると、確かに検索画面だけは残ってました。有隣堂のホームページに。直接リンクできないので、たどり着くまでがたいへん。検索してみると……「ただいまお使いになれません」といわれてしまった。

 書店の在庫検索が出来るシステムは確かに便利なんですが、対象書店数が少ないし。
 私が嫌いな有隣堂が参加しています。どんなもんでしょうかね。 店員教育はともかく、老舗だから倉庫の中には、版元品切れ絶版書が眠っている可能性はありますね。

 インターネットで検索できる書籍情報というのは、1976年ぐらいまでが限度のようです。
 データベース屋さんに金を払えば別なんですけどねぇ、それでもきっちりしたデータは出てこないような気がします。 古い書誌情報をどうやって手に入れようか現在思案中。やはり図書館通いしかないのか……。
 マトモな図書館は遠いんだよなぁ。交通費かかるし、うー。

『ユリイカ 詩と批評』特集一覧リストを作る

 特集「ミステリ・ルネッサンス」の号を読んでいたら、ムラムラと特集一覧が欲しくなり、WEB検索したけれども出てこなかったので、また自分で作ってしまいました。

 『ユリイカ 詩と批評』特集一覧(暫定版)

 まだ不完全なので、情報求む。実家に帰れば、まだバックナンバーがあるはずなので、それの巻末リストを見ればかなりの空欄が埋まるとは思うのですが。

ブックマーク

 リンクページになかなか手をいれることができないので、ここに載せておきます。


1999.11.30(火)

 『ユリイカ 詩と批評』特集一覧(暫定版)、情報をいただいたので、更新しました。 さらなる情報提供をお待ちしています。

■綾辻行人『眼球綺譚』

 綾辻行人『眼球綺譚』(集英社文庫)読了。『殺人鬼』のようなスプラッタ・ホラーかと思ったら、大変ワタクシ好みの「奇妙な味」付けの幻想怪奇譚集でありました。

 私が気に入ったのは、「再生」「人形」。この2編は、ちょっとブラッドベリ風かなぁなんて思いました。 あ、私の思い浮かべたブラッドベリ作品は「十月のゲーム」とか「骨」とか、グロテスクとアラベスク系列のやつです。 私は、リリカルでノスタルジックなブラッドベリよりもそーゆーのが好きなんです。
 「眼球綺譚」は、さすが綾辻行人な展開でした。「えっ?」と思って、前のページを繰ってしまいましたです。

■朝松健『比良坂ファイル 幻の女』

 朝松健『比良坂ファイル 幻の女』(ハルキ文庫)読了。
 <逆宇宙存在>と戦う前衛心理学者・比良坂天彦の登場する連作短編集。
 うーん……。 この世に存在しない店ばかりが並ぶ通りとか、石の天使を呼ぶ少女とか、写真の中の幻の女とか、幻のホテルとか、 パーツだけ取り出せば、とても魅力的な幻想怪奇譚が書けそうなネタなのに、なんでこうチープでとっちらかった作品になってしまうんでしょうね。3回ぐらい読み返さないと、誰がどこで何をしているのかよく分からなかったりするし。
 菊地秀行のえらさを再認識しましたです。



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