diary Alisato's 本買い日誌
1997年 06月 *


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1997年 06月

読了本一覧

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1997.06.01 (日)

 利根川を渡って、茨城県の文教堂書店に行く。ここは鄙には稀なステキな書店である。といっても、建物や書棚の作りは他の郊外型書店とあまり変わりはない。品揃えと書棚の作り方のセンスの問題である。

棚を見ればその本屋の姿勢が分かる。この本屋は子供の本も岩波文庫、ちくま文庫もそれなりの点数がちゃんと揃っている(これは、その書店がいかに良心的であるかどうかの目安)し、美術、宗教・思想、パソコン書のコーナーも充実(本屋としてのレベルが高い)、その上、ハヤカワ文庫・創元推理文庫・現代教養文庫もちゃ〜んと揃っている(マニアも見捨てない(笑))んである。
横浜の書店ですらあまり見かけない創元ライブラリの中井英夫全集が平積みになっているのを見たときには感激しましたね。こういう本屋さんには生き延びてもらわにゃ〜、というわけで、せっせとここで本を買う。

『岩波文庫解説総目録』があったので買う。これでしばらく遊べる。

平井和正『月光魔術団』Vol.8

平井和正『月光魔術團』Vol.8(アスペクト) 読了。

ドラッグとマフィアとレイプ団、テロリズムが支配する博徳学院にやってきたのは、ライオンヘアの美少女犬神メイ。どうやら彼女には、周囲の人間を変化させる力があるようで、 "ひとり生徒会"の異名をもつ生徒会長、鷹垣人美はメイのツレになって超人化し、 "地獄の蜷川"の異名をもつスケバンは、メイに憑依されトップモデルへと変身中。

『ウルフガイ』が、世紀末によみがえるとこういう話になっちゃうわけですねぇ。スケバン蜷川がメイとその仲間に出会って、どんどん癒されていくっていうのが嬉しいです。
8巻まできたのに、まだどういう話なのか先が見えないんですよね〜。(^_^;)

ますます美しさに磨きがかかる、"にーな"こと蜷川の活躍が嬉しい。彼女が初登場したときには、まさかこんな展開になろうとは思ってもみなかった。平井和正は言霊様の調子がいいようで、次の巻もすぐ出そうだ。

今日の収穫

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1997.06.02 (月)

 図書館で、吉本ばなな『TUGUMI』(中央公論社)、『新潮日本文学 三島由紀夫集』、 久世光彦『怖い絵』(文芸春秋)を借りる。
このところ、何を読んでも三島由紀夫のことが目に付くので、ともかく三島を読むことにする。
ついでに『カント・アンジェリコ』をカウンターに頼んでおく。1ヶ月後には読めるでしょう、多分。

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1997.06.03 (火)

洋書買いに挑戦

 OKKO’S HOMEPAGE(URL:http://www.fsinet.or.jp/~okko/)に刺激されて、マカヴォイの原書を読もうかという気になる。『世界のレンズ』の続編がなかなか出ないんだもの。
三省堂等を覗いたときには、見当たらなかったので、WWWの本屋にアタック。手始めにOKKO’S HOMEPAGEからリンクされているD&I洋書販売 (URL: http://www.deodeo.co.jp/d-i/)を覗いて見る。 MacAvoyで検索してみると、おお出てきた!が、ペーパーバックはほとんど絶版。が、ハードカバーのThe Belly Of The Wolfを見つける。20ドル。(手数料やらなにやらで、日本円では4千円ぐらい)勢いで申し込む。でも、原書が届いたとたん翻訳が出たりして…。

吉本ばなな『TUGUMI』

吉本ばなな『TUGUMI』(中央公論社)

大学生の「私」が語る、病弱でわがままで自由奔放な従姉妹つぐみとの海辺の夏の思い出。

私には、吉本ばなな版『野イバラ荘園』(大島弓子, 朝日ソノラマ)としか読めなかったが、風間賢二氏のいうドッペルゲンガー譚として読めるのも面白い。
誰もが指摘するように、吉本ばななの作品は哀しさと優しさと癒しに満ちている。どれも秀作だと思うが、あまり次の作品を読みたいとは思わないのは、私自身がもう吉本ばななの作品を必要としていないからだろう。10代20代の頃だったら、吉本ばななの本を救命具のようにしっかり握って放さなかったかもしれない。

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1997.06.04 (水)

 野村 宏平さんの"Index to Anthologies"(URL:http://www.linkclub.com/~k-nomura/)へのリンク許可を戴いた。 "Index to Anthologies"は、1994年以降、日本国内で刊行されたミステリ、SF、ホラー小説のアンソロジーのデータベース。すっばらしいサイトです。アンソロジーって目次だけ眺めていても楽しいの。こういうページができてホント嬉

ジョーン・ロビンソン『思い出のマーニー』上下

ジョーン・ロビンソン『思い出のマーニー』上下(岩波少年文庫)読了。
読み終わった後しばらく、「あっち」の世界から戻ってこれなかった。子供の頃ならともかくこの歳でこういうことがあろうとは!優れた児童文学は、本当にとんでもない力を持っているものだと思います。

児童文学ガイドでは必ずといっていいほど出てくる作品ですが、確かにそれだけのことはある名作。


自分の殻に閉じこもり環境不適応を起こして、海辺の村に預けられたアンナ。彼女は不思議な少女マーニーと友達になるが、やがて……。

アンナが自分の殻に閉じこもるのは、拒否されるのが怖いから。彼女は自分と他の人との間に常に見えない壁を感じている。

====引用開始====
なぜかというと、ほかの人たちは、みんな"内側の人"----なにか、目に見えない魔法の輪の内側にいる人だからです。でもアンナ自身はその輪の"外側"にいました。だから、そいういうことは、アンナと関係のないことなのでした。
====引用終了====

一度でもアンナと同じように感じたことのある人なら、読んでみる価値があります。
そうでない人(っていうのは、ネット上には少ないと思うけど)も、海の匂いや葦の生えた水際の感触や海どりの声を感じるために、お読みください。

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1997.06.05 (木)

 中断していたFF7を再開。CGムービーの画面は凄い。

ジョナサン・キャロル『死者の書』

ジョナサン・キャロル『死者の書』(創元推理文庫)

ホラー文庫華やかなりし頃発行され、"ファンタジー・ホラー"と呼ぶ書評が多かったので、すごく怖いんだとばかり思ってびくびくしながら読んだ。おかげで、ちょっと怖かった。読んでみたらそれほど怖い話ではなく、形態としては恋愛小説なのだった。 先入観なしで読んだら、もしかしてファンタジーだと感じれられたかもしれない。

ひとりの物語作家の作品に魅せられた男の話である。本好きの人は身につまされるとみえて、冒頭の古本屋のシーンを絶賛する人が多い。

原題にも邦題にも仕掛けがある。ラストやテーマが作家の創造力であることを考えると、邦題より、原題のほうがいいと思う。ホラーっぽい邦題は、題名だけで怖い。

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1997.06.06 (金)

 『幻想文学』誌のバックナンバーをつらつらと眺める。
この雑誌は、幻想文学の専門誌で、SF、ファンタジーはもちろんのこと純文学から神話・宗教まで、幻想文学周辺の本を幅広くカバーしているのである。地方・小出版流通センターというマイナーな取次ぎでしか扱っていないため、大型書店でしか手に取ることができなかったが、最近、地方・小出版流通センターのホームページ (URL: http://www.bekkoame.or.jp/~much/access/actop.html)があるのを発見、この雑誌が健在であることを確認した。6月には50号が出ることになっている。早く読みたいものだ。

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1997.06.08 (日)

リサ・ゴールドスタイン『太陽と月のアラベスク』

リサ・ゴールドスタイン『太陽と月のアラベスク』(ハヤカワ文庫FT)読了。

エリザベス朝のロンドンを舞台に妖精戦争が起こる歴史ファンタジー。
主人公の一人が中年の本屋を営む寡婦だったりするところが、画期的。登場人物が多いのに名前の表記がわかり難く(トムなんとかが二人もいる)、時々誰が誰やらわからなくなる。こういうのは、訳者がもう少し考慮すべき問題なんじゃないかと思う。ピーター・グリナーウェイっぽく映像化して欲しい。

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1997.06.09 (月)

 図書館に『魍魎の匣』があるのを見つけ、借りてきてしまう。
ついでに三代目魚武濱田成夫『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない』(角川文庫)と 『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(角川文庫)を読む。単純が言葉がこれほど「ちから」を持つとは! 唸る。
  ネットスケープ Ver.1.1で、この日記を見たところ、レイアウトがグチャグチャであった。行儀よくHTMLを書かないとダメらしい。古いブラウザの方が、文法に厳格だ。

三代目魚武濱田成夫『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない』

三代目魚武濱田成夫『駅の名前を全部言えるようなガキにだけは死んでもなりたくない』『君が前の彼氏としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ』(角川文庫)を読む。

長い題名だが、詩集である。中身もだいだいこんな調子で続いているが、一見暴力的に見えることばの中に他者を傷つけるようなものはほとんど含まれず、見えない思いやりに満ちている。彼のことばは、すべて"自分を称える詩"で、自分を称えることに忙しい人間は、他人を傷つけたり引きずり下ろしている暇なんかないのだろう。(笑)
私はこれを読んだら、その前にあったいやなこをを忘れてしまった。
はたち前の若い人に対しては、彼のことばはもっとまっすぐに届くのだろうか?

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1997.06.10 (火)

 ハヤカワ文庫FTおすすめ本(読みたい人はこちら)のカ行の項目を書き上げる。が、その直後、古いデータを上書きする。バックアップなぞ残っていないので、呆然自失。

goo(URL:http://www.goo.ne.jp/>で、海外サイトを対象に"Cadfael"で検索を掛けてみたところ、675件も出てきた。ひえぇぇぇ。一番最初に出てきた、 Brother Cadfael's World は、出版社の公式ページらしい。The Cadfael Companionの一部を参照することができる。次回は"Brother Cadfael"で、再検索してみよう。

久世光彦『怖い絵』

久世光彦『怖い絵』(文芸春秋)読了。

"怖い絵"と文学作品をモチーフにした私小説風連作短編集。テーマは死とエロスである。
「姉は血を吐く、妹は火吐く」「『死の島』からの帰還」「蝋燭劇場」「『二人道成寺』の彼方へ」「陰獣に追われ追われて」「誰かサロメを想わざる」「去年の雪いまいずこ」「豹の眼に射抜かれて」「ブリュージュへの誘い」という各タイトルが示すように、判る人には判るしかけがいっぱいである。「姉は血を吐く、妹は火吐く」「陰獣に追われ追われて」「豹の眼に射抜かれて」といった、同性愛の匂いのする作品が面白かった。

各作品で言及されている"怖い絵"の図版も収録されている。私が一番怖かった絵は甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)の『二人道成寺』。確かに「穢い(きたない)」といわれて大正画壇を追放されたというだけのことはある気色悪い凄い絵。竹中英太郎の「陰獣」の絵も怖いです。でも、一番怖いのはこの本の装丁だたったりするんだなぁ。ベージュの紙に黒く「久世光彦 怖い絵」と書いてある。さらに良く見ると「怖い絵」と大きく型押ししてある。このシンプルさがとっても怖いです。

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1997.06.11 (水)

 256色で自分のホームページを見てみたら、色が飛んでいてショックだったので、256色対応の修正を始める。 IE3.0はまだなんとかなるが、ネスケのVer.1.1なんかで見るともう、ボロボロ…。泥沼にはまりこんだ状態で6時間パソコンの前にいた。本を読む時間も取れず。しくしくしく。

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1997.06.12 (木)

 ネットサーフィンしていて、電子書店パピレス(URL:http://www.papy.co.jp/)を見つける。ニフティで覗いてみたことがあるが、画像のあるホームページの方がずっと感じがいい。もう少し軽いといいんだけど。本というのは、絶版になって手に入り難くなるのだというのを実感しているので、こういう電子書店が品揃えを充実させてずっと続いていくといいと思う。

ラインナップの中に<ふしぎ文学館>があった。紙の本としても売っているが、データとしても売っているらしい。価格は紙の本と同じ。都筑道夫『雪崩連太郎全集』や夢野久作『死後の恋』、日影丈吉『恐怖博物誌』などがある。私は紙の本があるのなら、電子ブックより紙の方が好きだが、所蔵スペースのことを考えると、こういったものの方がいいのかもしれない。もちろん、よみたい絶版本であれば、電子データであってもかまわないのだが。

都筑道夫『雪崩連太郎全集』

都筑道夫『雪崩連太郎全集』(出版芸術社)

集英社文庫から『雪崩連太郎幻視行』『雪崩連太郎怨霊行』として出ていた本が、1冊にまとめられたもの。電子書店パピレス(URL:http://www.papy.co.jp/)で購入することができる。
ルポライターの雪崩連太郎が出会う、妖しく不思議な事件の数々。一応ミステリらしい結末はついていますが、都筑道夫は恐怖小説の名手なので、どれも結構怖くて、夜ひとりでは読めません。私が一番怖かったのは、豆人形がお葬式をやっている「小函のなかの墓場」。

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1997.06.13 (金)

[out] 横浜でカラオケ

 高校時代の友人とカラオケをしに横浜へ。電車の中で『ゲイルズバーグの春を愛す』を読み飛ばす。友人の旦那がこのホームページを見て、「○○さん(私の本名)って、ヲタクなんだねぇ〜」と言った由。なんだ、知らなかったのか。(笑)

その後、横浜伊勢崎町の有隣堂本店に寄り、波津彬子のイラスト集『花色更紗』を買う。 1993年発行のものなのであるかどうかわからなかったが、1冊見つかる。ラッキー!有隣堂は、横浜では老舗の大型書店で、色違いの文庫カバーが美しいのだが、店員教育がよろしくないので、あまり寄らないのだ。だが、品揃えはさすがに老舗の貫禄。

オデオンビル5Fの先生堂にも寄る。ここは、多分横浜繁華街近くで一番大きい古本屋である。漫画とSF関係の文庫が良く揃っている。FT文庫を探してみる。エリザペス・A.リンの『冬の狼』をみつけ、購入。このシリーズは全部読んだのだが、売っぱらってしまったのだ。(^_^;) もったいないことをしたと思うが、当時は部屋に本が溢れていてどうしようもなかったのだ。

さらに、横浜駅へ行き、本屋を6ヶ所周る。
で、丸善ポルタ店で『創元推理文庫解説目録』をゲット。ラッキーッ!!!!やっぱり目録の神様がついているのかも。(笑)

  実家に帰って、蔵書整理をする。まだ、本棚1本分の文庫とコミックスが残っていて、どう処分しようか悩んでいる。
『牧神』の5、6号を発見。この雑誌は、知る人ぞ知る幻想文学研究雑誌である。巻末に牧神社の刊行案内が載っていた。デ・ラ・メアの美しい本を出していたのである。泡坂妻夫の文庫本といっしょに埼玉へ送ってもらうことにする。

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1997.06.14 (土)

 横浜から埼玉に帰る途中、神田古本街に寄る。三省堂本店で『幻想文学』の28号と43号を買う。あちこち回ったけど、幻想文学の棚があるのは、やはりここだけですね。泡坂妻夫『自来也小町 宝引きの辰捕者帳』(文春文庫) を買い、『同時代ライブラリー解説目録』をゲット。消費税が引き上げになったせいで、解説目録が新しく出されているらしい。目録マニアよ、手に入れるなら今がチャンスだ。(笑)

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1997.06.16 (月)

 図書館に『三島由紀夫作品集』『怖い絵』を返却。結局、三島は一行も読めなかった。しくしくしく。
「特集:花郁悠紀子」の準備を始める。

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1997.06.17 (火)

 ネットサーフィンしてたら大森望さん×水玉センセの「辺境の電脳たち」Web版 を発見。 『The Basic』の連載らしい。Webでこういうのが読めるのね〜。うれしい。

花郁悠紀子作品リストの入力を行う。ハヤカワ文庫目録の入力も全部は終わっていないんだけど、同じことやってると飽きちゃうのだ。(^_^;)

京極夏彦『魍魎の匣』

 京極夏彦『魍魎の匣』再読完了。以前読んだときは気が付かなかったけど、京極堂の話の中に、ストーリー全体のしかけが隠されているのね。「順番が問題」だとか。それにしても"みっしり"っていう言葉のは、どこから来たんでしょう。 "「ほう」"というのは、折口信夫じゃないかという指摘が『幻想文学』のインタビュー記事にありましたが。

私は京極夏彦の描く女学生が好きですねぇ。潔癖でしたたかで。『少女革命ウテナ』を欠かさずビデオ録画している身としては、こういうのとっても好き。(笑)
いまさらあらすじの紹介しても仕方ないのでしませんが、箱づくし。
京極堂とえのきづさんって、関口くんをいぢめてるけど、ほんとは二人ともとっても彼を愛してるのね。(笑) コミケ行ったら、きっと京極堂と榎木津が関口を奪い合うネタが腐るほどあるに違いない。

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1997.06.18 (水)

 萩尾望都作品目録の永井さんよりメールの返信を戴く。永井さんのこの目録は、ものすごい労作である。
うちは夫婦で萩尾望都ファン(最近は読んでいない)で、うちにも実家にも萩尾作品がごろごろしてるのだ。版形の違うのが2冊あったりもするし。(笑) もう少し早くメールしていれば、実家に帰ったときに資料を持ち帰れたのだけれど…。

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1997.06.19 (木)

 ひたすら花郁悠紀子著作リストの入力。ヲタク魂を燃やしてがんばるの(笑)。

実家より本の宅急便が届く。

エリザペス・A.リン『冬の狼』

エリザペス・A.リン『冬の狼』(ハヤカワ文庫FT)

昔読んだときは面白かったので、おすすめFT文庫に入れようと思ったんですが、再読してみたらそれほどでもないので、ここに入れときます。

南からやってきた一族に滅ぼされた北の砦の末裔が砦を取り返す話を、砦の一将兵の目を通して、擬古文で描いた話。いくつもの砦の間を取り結ぶ使者とよばれる一族や、未来を予言する骨牌(かるた)や舞いや精神感応といったものも出てくるけれど、いまとなっては目新しさに欠ける。視点をヒロインの上に置いたら、ストーリー的にはマキャフリィの『竜の戦士』と同じような話。竜と人物の魅力であっちの方が断然面白い。

多分訳者泣かせであったろうウリの「格調高い文体」というのが、今読むととってもカッタルイ。主人公の将兵と砦の世継ぎの君とのそこはかとない同性愛関係とか、男の目を通して見るフェミニズムと(女の)同性愛とか、面白そうな部分もあるのに、この「格調高い文体」が邪魔でいまいちノリ切れませんでした。
1980年の世界幻想文学大賞受賞作なんですけど、年月に耐えない作品っていうのもあるのね、って思いました。それを考えると、1968年に書かれて、今なお面白いマキャフリィってすごいんですね。

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1997.06.20 (金)

 図書館より、『カント・アンジェリコ』入荷(というのだろうか)の知らせ。でも、台風来てるから取りに行かれないよぉ。自転車で3分のところなんですけどね。

げげっパソコンが熱暴走!?

 午後から気温が上がり、パソコンを立ち上げたとたん、画面が熱暴走(だと思う)した。げげげっ!!
我が家のパソコン(Aptiva750)は、去年も高温が原因だと思われる故障で二回も修理工場行きとなったのだ。なんせ我が家で最も冬寒く、夏熱い書庫内に置いてあるから…。今年はもう保証期間外。対応を考えねばならない。

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1997.06.21 (土)

 DeoDeo D&I洋書販売から、注文したマカヴォイの本が発注先から発送されたとのメールを受け取る。注文が6/3だから、約3週間で発送まで完了したわけね。近所の書店で日本の本を注文した時より、早いんじゃないか?近日中にはお届けできますとのことだが、いつ届くんでしょ。(アメリカからどうやって来るのかが謎)

図書館で『カント・アンジェリコ』を受け取る。
買い物のついでに、パソコンデスクを見てまわる。パソコンの熱暴走対策として、パソコンの置いてある部屋に窓用エアコンを付けるのと、エアコンのある部屋にパソコンを持ってくるのとどちらがよいか考えた結果、後者の方が冬も楽という結論が出たためだ。まだ、気に入ったものが見つからない。

高野史緒『カント・アンジェリコ』

高野史緒『カント・アンジェリコ』(講談社, ISBN4-06-208327-2)

夜中2時までかかって、『カント・アンジェリコ』読了。面白い。初めて大原まり子やディプトリー・ジュニアの『接続された女』を読んだときの興奮(20年も前のお話です)を思い出す。作者の高野史緒のインタビューの載っている『幻想文学』49号をひっぱりだして、再読。続編の「G線上のアリア」の載った『SFマガジン』97年2月号も図書館から借り出してこよう。

私の今年読んだ本の一番は多分これだな。
ヨーロッパ全土に電話網が張り巡らされ、電飾まである18世紀初頭のパリを舞台に、カストラート(去勢歌手)に国を失った王女、女王陛下の国からきた謎のご隠居(笑)、電気屋の枢機卿、ハッカー崩れの殺し屋などなどが跳梁跋扈するお話。クライマックスに至っては、オペラの舞台で文字どおりのディオニッソス饗宴が繰り広げられちゃって、もうもう、凄いです。

男性は仕掛けの方が気になるみたいですが、女が気にするのは、カストラートと音楽とネットワーク・ラブのことだ。(笑) P.219のウラニア王女がルチフェロ(と、ミケーレ)に語り掛ける言葉にたいていの女性は同意することと思います。

私には音楽方面の知識があまりないので、作者が仕掛けた引用の元ネタがあまりピンとこなかったのが残念。『トゥーランドット』『魔笛』『忠臣蔵』は判りましたけど。それから、なぜか『トーマの心臓』のエーリックがちらちらします(「チャオ。こちらは天使。あなたはどなた?」)

あと笑ったのはここですね、p.126。座右の銘にしようかな(笑)。

====引用開始====
彼の詩に感動しないからといってその凡才をくさす前に、読み手としての己の凡庸さに思いを馳せてみるのも、そう悪いことではないだろう。
====引用終了====

英国の謎のご隠居、レスリー卿が好みです。(爺さまが好きなの)007についてちょっとだけ言及されるので、ショーン・コネリーかなと思いましたが、ローレンス・オリビエの方がイメージですね。

ついでなので、高野史緒関係ブックリスト(98/05/27)

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1997.06.23 (月)

 大森望さんのページのミラーサイト(URL:http://www.st.rim.or.jp/~ohmori/)で、 『カント・アンジェリコ』の書評を探す。小説すばる96年10月号に載っていたらしい。森博嗣が同人漫画家森むくだったと知って、びっくりした。(【ムヅかしい本を読むとねムくなる ローマ編】#6 に出てました。) 新本格は手を出すのに勇気がいるんですが(京極夏彦も周囲の人間があまりに誉めるのでやっと読んだ)、森むくなら、読んで損はないかもしれない。あの絵柄を思い浮かべながら読めばいいわけだし。(私は分裂する前の『ぱふ』を読んでいたコミケ者です。)
で、古い日記を読んでいたら、『幻想文学』のインタビューの裏話も載っていた。石堂藍さんの正体が判明。う〜ん、あんなに本読んで、編集して眠る暇があるんでしょうか。

SFオンライン(URL:http://www.so-net.ne.jp/SF-Online/)の新刊も見に行く。19日に見に行ったら、まだ更新されていなくて、ひょっとして3号雑誌になってしまったかと思いましたが、ちゃんと6月18日号も出てました。よかったよかった。末永く続いて欲しいものです。

[book] 高野史緒にハマる

 図書館で、高野史緒「G線上のアリア」を借りてきて読む。『カント・アンジェリコ』とは文体がちょっと違うのね。やっぱり高野史緒って、90年代の大原まり子じゃないのか。ついでに『ムジカ・マキーナ』『ミステリ・マガジン』96年4月号も図書館で予約。多分どこかから探してきてくれるでしょう。

[book] 浅田次郎を発見

新購入書のコーナーに浅田次郎『プリズンホテル秋』があったので、借りてくる。あの図書館の図書購入基準はよく分かんない。ファンタジー系が意外に揃っているのは、どうも係のお姉さんが自分の好みで本を入れているからのような気がしている。(笑)
カウンターに本を出すとき、ご近所の奥サマに遭遇。奥サマ、『SFマガジン』をひったくり、「何読んでいるの? んまぁ、こーんな難しいの読んでるのぉ。」予想された反応なので、こちらは、えへらえへら笑ってごまかす。

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1997.06.24 (火)

[net] 大森望ホームページにハマる

 大森望さんの昔の日記のページを読み続ける。うーん、『SFマガジン』って実質2人+アルバイトひとりで作っていたのか〜。なんで早川に公式ホームページがないんだろうと思っていたのですが、そんな人的余裕がないんですね、きっと。
書評をまとめたページも真面目に読み返して、ヴァーナー・ヴィンジ『マイクロチップの魔術師』(新潮文庫/絶版)やジョーゼフ・ディレイニー&マーク・スティーグラーの『ヴァレンティーナ/コンピュータ・ネットワークの女王』(新潮文庫/品切れ)を編集したのが、大森望さんだと知った。2冊とも読んでます。結構面白かったので、まだ実家にあるかもしれない。でも『マイクロチップの魔術師』の挿絵はちょっとエグい。
もしかして、新潮が文庫でファンタジー出してた頃の担当が大森望サンなのか? 菅浩江の『メルサスの少年』は、もう品切れだよねぇ。『ムジカ・マキーナ』は文庫になるのだろうか…
  『カント・アンジェリコ』再読完了。記述の罠にひっかかったので、読み直していたのです。

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1997.06.25 (水)

 近所の本屋に行き、食費を横領して『この文庫がすごい!』を買う。(もう小遣いがないんですぅ)ハヤカワ文庫FTは『ゴースト・トラップ』もロバート・アスプリンの『お師匠様は魔物』もあったけど、お金がないのでパス。アスプリンは、『銀河おさわがせ中隊』(ハヤカワ文庫FT)がとっても良かったから、今度も期待できそう。表紙は、水玉せんせいだし。森博嗣の『すべてがFになる』も見つけたが、お金がないので、やっぱりパス。

新刊書のコーナーに伸たまきの『バーム ブック』(新書館)を見つける。小説版パームとかが載ってるお楽しみ本ですが、こんなところに置いてあっても売れないのではないかなぁ。大森望さんの日記を見ると、新書館は最近はSF方面に手を出しているらしい。ま、いいけどさ。最近の新書館は編集企画力が落ちてると思う。寺山修司がいた頃の『ペーパームーン』誌なんてそりゃもう素敵でしたが、70年代の話ですもんね。

『この文庫がすごい!』をぱらぱらと読む。内容は、こんなもんでしょ、といった感じ。ジャンルが多方面に渡っているので、興味のあるところが少ないのだ。それにしても、こういう本に出てくる女性ライターってどうして皆ああいう感じなんでしょ。青木逸美さんの文体は気に入りましたけど。上品で。インターネット古書店のURLが出ているので、明日にでもアクセスしてみよう。(私は早朝アクセスなのです。これ書いているのは昼間。)

ハヤカワ文庫FT解説目録のハ行を入力。ハ行の作家っていっぱいいるんだよなぁ。頭文字FもBもHもVも全部ここだから。リリースは当分先になりそうです。

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1997.06.26 (木)

[net] ネットサーフィンに耽ける

 森博嗣の浮遊工作室(URL:http://www.degas.nuac.nagoya-u.ac.jp/people/mori/index2.html)を覗く。森博嗣は、やっぱりあのJET PROPOSTの森むくであった。

 古書関係のサイトも覗いて見る。
『この文庫』に出ていた新・源氏物語(URL:http://kbic.ardour.co.jp/~newgenji/oldbook/index.html)は、絶版文庫目録などもあって面白い。古書検索用のサーチエンジンの一覧があってありがたい。

あべの古書店(URL:http://www.fuji-mt.or.jp/~hirosige/)の目録には、幻想文学なる分類がある(笑)。中身は当然、種村季弘とか渋澤龍彦だけど、早川書房の異色作家短篇集もあった。渋澤龍彦はやっぱり高いです。絶版文庫本の都筑道夫が1冊千円。うーん、うちのティッシュペーパーの空き箱につめてる20冊は2万円の価値があるのね(笑)。大事にせねば。サンリオ文庫のフリッツ・ライバー『妻という名の魔女たち』が2000円。私は古本屋で300円ぐらいで買いました。本は売ったり捨てたりしてはいけないのですねぇ。
やっぱり目録を見るのは楽しい。でも、こういうのって、在庫目録だから、内容が更新されちゃう。作家の全著作とか文庫の総目録は、出版社の記念事業か作者または読者のボランティア作業でしか作ることができないんだよねぇ。

浅田次郎『プリズンホテル秋』

浅田次郎『プリズンホテル秋』(徳間書店, ISBN4-19-860148-8)読了。
私的ベスト10入り確実の傑作。 はじめのうち、残りのページがもったいなくて、1章ごとに休んでいた。最後の方は何も考えずに一気読みだったけど。暑い日に麦茶を飲みながら面白い本を読むと、なんだか学生時代の夏休みに戻ったような気がする。幸せ…。

ヤクザがオーナーのホテル通称「プリズンホテル」で起こる事件の数々。大物ヤクザの愛人だった往年の名歌手、マザコンの作家とその愛人の連れ子、ヒモのようなマネージャーを殺そうとする売れない歌手、慰安旅行にきた警察官一行と壮行会にやってきたヤクザの一行、などなどが入り乱れての笑いと涙の極道ファンタジー。

「極道ファンタジー」というのは、この本の帯につけられたうたい文句なんですが、魔法使いを出しさえすれば"ファンタジー"になると思っている"エセファンタジー"よりも、よっぽどちゃんとファンタジーとして機能しています。ちなみに正しいファンタジーの機能は、現実からの逃避と癒しです。 "大人の童話"という言い方もされますが、それよりやっぱり「極道ファンタジー」が正しい名称でしょうね。方向性としては つかこうへい作品に似ていますが、つかの偽悪性をとっぱらっての直球勝負です。それでいて、甘くならない大人の味。

一応作家が主人公らしいのですが、今回一番活躍したのは、クラウンホテルからやってきた誠実そのものの支配人でしょう。カタギの人間の職業倫理を受け止めることができたのが、極道の親分だけだったという皮肉。極道ファンタジーはプロフェッショナル達の物語でもあります。

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1997.06.27 (金)

 ちょち早いが7月分の小遣いを前借り(我が家は主婦といえども、小遣い制なんである)し、 ロバート・アスプリン『お師匠様さまは魔物!』(ハヤカワ文庫FT)、 ナンシー・A.コリンズ『ゴースト・トラップ』(ハヤカワ文庫FT)、 森博嗣『すべてがFになる』(講談社ノベルズ)、 リチャード・レイモン『殺戮の<野獣館>』(扶桑社ミステリー)を買う。
 図書館にまわって、『プリズンホテル秋』の続編を探すが、すべて貸し出し中とのことで、予約をいれてもらう。家に帰り着いたところで、図書館から電話があり、以前予約していた『ミステリー・マガジン』が貸し出し可能になったとのこと。だったら、さっき言ってくれよぉ〜と、思ったが、仕方がない。でも炎天下に再度出かけるきになれず、そのまま家で買って来た本を読む。

ロバート・アスプリン『お師匠様さまは魔物!』

ロバート・アスプリン『お師匠様さまは魔物!』(ハヤカワ文庫FT)

富豪刑事が不良部隊を鍛え直してスタートレックしちゃう『銀河おさわがせ中隊』のロバート・アスプリンのキュートなライト・ファンタジー。ファンタジーっていうより、ユーモア次元SFといった方がいいのではないかな。ストーリーよりキャラクターの駄洒落と漫才を楽しむ作品。おさわがせ中隊でもそうでしたが、キャラクターが口先三寸で相手を騙すのが面白いです。また、アスプリンは教師気質のヒトでもあるらしく、必ず何かを教えるシーンがあるのがミソ。
表紙と挿絵が水玉蛍之丞センセイだ。挿絵がMTGかポケモンカードかという雰囲気なのが笑える。アイテムのひとつがゲームボーイの形をしているし。

リチャード・レイモン『殺戮の<野獣館>』

リチャード・レイモン『殺戮の<野獣館>』(扶桑社ミステリー) 読了。
鬼畜な展開であったが、実は高校時代からジョン・ソールの『暗い森の少女』を愛読してたりするので、結構面白かった(^_^;)。


実の娘をレイプして服役していた男が釈放され、逃げた妻と娘を、鬼畜な行為の限りをつくして追跡する。
一方、妻は、大量殺戮が起こった館に住むという怪物を狩りにきたハンターと出会い恋におちる。夫と妻の軌跡が出会うとき、物語は唖然とする結末へと…。

大森望さんの日記でさんざん宣伝されていたので、つい買ってしまいましたが、本当にとんでもねー結末ですわ。(笑) 化け物の方はともかく、鬼畜な夫のストーリーの方はウケる人にはウケると思います。私は結構スキ。(^_^;)

森博嗣『すべてがFになる』

森博嗣『すべてがFになる』(講談社ノベルズ) 読了。
確かに森むくの小説であった。タイトルの意味は最初に直感した通りだった。ソレを最初に思い付く職業の人は多いはず。トリックには参りました。面白かったので、続きも読むことに決定。


14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで、孤島の研究所に閉じこもった天才少女、真賀田四季。島へキャンプにやってきたN大学工学部助教授犀川創平は、教え子の西之園萌絵とともに、博士の部屋へ入ろうとした。その瞬間、進み出てきたのはウエディング・ドレスを着た女の死体。そして、部屋に残されていたコンピュータのディスプレイに残されていたのは、「すべてがFになる」という言葉だった。

コンピュータに関する部分はそれほど大騒ぎする話ではないのですが(プログラマならだいたい判る)、究極のトリックには参りました。ちゃーんと伏線もあったんですけどねぇ。言葉にこだわる作者らしいタイトルに脱帽。
犀川と萌絵の回想にでてくる飛行機炎上シーンは、伸たまきのパーム・シリーズではないかと思います。
それにしても、この作品に出てくる人々のメンタリティってそんなに変かしら?真犯人はともかく、私には、少なくとも犀川は理解できる気がします。彼の基底にあるのは、感情への恐れだろうと思います。萌絵は、うーん、変なやつだ。でも彼女も心のどこかで何かが眠っているんだろうと思いますけど。

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1997.06.28 (土)

 高橋誠さんから、FT文庫リストの不明分(騒乱の国ヴォナールの原書名やロバートスンの著者名番号)の情報をいただく。書誌ではわからない情報もあって、困っていたので、こういう情報は貴重なんです。

郊外書店はあなどれない

普段、行かない本屋にいった。郊外型大型書店なんだけど、書棚の手入れがいまいちで、本がちゃんとソートされて並んでいない。ところどころ空いている棚もある。が、そのメンテナンスの悪さと広さが幸いして、既に目録落ちしている本が並んでいたりするんである。(笑) 取次ぎから来た本は売れるまでそのまま置いてあるらしい。本をきちんと並べていない本屋って嫌いだったんだけど、こうなるとそういう本屋にも存在価値があるのかも。(笑) こういう本屋は、つぶれぬよう、売れすぎないようがんばって欲しいものです。それにしても、本屋はあちこち見てまわらないといけませんね。
森博嗣『冷たい密室と博士たち』(講談社ノベルズ)と 『笑わない数学者』(講談社ノベルズ)を買う。どちらも初刷。『冷たい密室』なんて、5刷までいっているのに、いやはや…。
  図書館で借りてきた『ミステリマガジン』96年4月号を読む。お目当ての高野史緒「ガスパリーニ」は、ヴァイオリンに魅入られた人々が出てくる幻想譚。木村仁良の「サイバーガムシュー」は、海外女流作家のサイトの特集。あとで覗いてみようと思う。

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1997.06.29 (日)

 森博嗣『詩的私的ジャック』(講談社ノベルズ)を勢いで買ってしまう。
  図書館より連絡があり『プリズンホテル冬』が貸し出し可能だが、明日明後日と休館日なので、水曜日以降に来て欲しいとのこと。

[diary] パソコンのお引越し

 パソコンデスクを買い、猛暑寒冷の書庫からエアコンのあるリビングへパソコンの引越し。作業環境が快適になったのはいいが、資料を載せる作業台がないのと、画面が窓の光を反射するのが難。もっといい場所はあるのだが、電話線をつなぐのが大変なのだ。仕方なくカーテンを閉めて、薄暗い中で作業している。
(1999.03.21 現在は、さらに移動させダイニングに置いてある。窓のとなりに置いてあるので、画面が外光を反射することはなくなった。なかなかに快適である。)

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1997.06.30 (月)

 来客カウンタ1000人目のJunwatanabeさんよりメールをいただく。のべ1000人の方が来てくださったわけですね。(その中の何十人分かは自分なんだけど(笑)) 皆様ありがとうございます。やっぱりカウンタをつけてよかったな〜。

『冷たい密室と博士たち』『笑わない数学者』読了。前者はわりとフツー。後者は、北村薫の推薦文のおかげで結構悩んだ。(実はまだ最後の方程式が解けてない。トリックはわかったけど。)

森博嗣『冷たい密室と博士たち』

森博嗣『冷たい密室と博士たち』(講談社ノベルズ) 読了。


衆人環視の中で発見された低温度実験室内の男女二名の死体。実験に居合わせた犀川と萌絵そして犀川の友人喜多が真相を推理する。

これは、フツーのミステリ。どうやらとっても論理的らしいですが、私はあんまりトリックの解明には興味がないので、ちゃんと検証してませんです。どこに興味があるかというと犀川と萌絵の漫才です。『動物のお医者さん』の工学部版ということですから、それはそれで正しい読み方だろうと思います。

森博嗣『笑わない数学者』

森博嗣『笑わない数学者』(講談社ノベルズ) 読了。


伝説的数学者、天王寺翔蔵博士の住む三ツ星館で、庭に立つブロンズのオリオン像が忽然と消えた。博士は言う。「この謎が解けるか?」オリオン像が消える時、人が死ぬ。

全体的にはEQへのオマージュ(各章のタイトルと館の構造)ではないかと思われるのですが、時々ルイス・キャロル(セイウチ・鏡・双子の刑事・胡椒・数学者・内と外 etc.)がよぎったりします。(原典探しをするのが私の読み方)
主人公の犀川は、言葉にこだわる人で、そういうところもルイス・キャロル的。言語学っていうのは、理系なのか?
p.319の「チェスメン・フロム・ザ・ゴァード」は、Chessmen from the gourd で、「瓢箪から駒」の直訳。こんなところで、いきなりチェスが出てくるのも変ですから、やっぱりルイス・キャロルしたかったからだとしか思えない。

日記にも書いた通り、トリックは私にも解るようなもの。はっきりいって、館の図が出ていたところで、原典までわかってしまいました。でも問題は、それじゃなくて、「内と外」だったんですね。
数学の問題と最終章の方程式は、読者への宿題ですね。まだ解けていません。まあ、探偵が間違っているっていうのだけは判るんだけど。
『すべてがFになる』と同じくらい面白かったです。

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有里 alisato@geocities.co.jp
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最終更新日:2001/09/14