利根川を越えて、栃木県の本屋へ行く。
ここは、田舎には珍しく美術書などもちゃんと揃えた大型書店である。
本の並べ方にもポリシーがあってなかなかよろしい。
既に2冊(講談社文庫版と創元ライブラリ版)を持っているにもかかわらず、巻末の年表ほしさに『虚無への供物』を買ってしまう。
久世光彦『一九三四年冬−乱歩』(新潮文庫)読了。
1934年冬、長編小説に行き詰まった江戸川乱歩は、怪しげな外国人相手のホテルに篭り、短編『梔子姫』を執筆するのだった。美青年の中国人ボーイ、ミステリマニアの金髪の人妻とその夫、謎の商人などなどの怪しげな人物を配置し、100冊以上の書物に言及し、作中小説として乱歩の偽作まで出てくる虚実あいまぜになったペダンチックな超傑作。
私の97年のベストブックはこれに決まりのような気がする。こういうの好きなんですよ。事実と虚構が入り交じっている話って。その上、ペダントリーに満ち満ちていて。元ネタがわからないのって、すごく悔しいけど、その分、燃える。(笑) この本のおかげで、私の「この本も読まなきゃリスト」は長くなるばかりです。
インタビュー記事によると、連載中『Yの悲劇』の作者をバーナビー・ロスと書いたところ、作者はエラリー・クィーンだという抗議文がいっぱい届いたとか。今の読者って、『Yの悲劇』がエラリー・クィーンではなく、バーナビー・ロス名義で書かれたという基本的事実も知らんのか?
エリス・ピーターズ『修道士カドフェルの出現 ―カドフェル短編集―-』(現代教養文庫)読了。
カドフェルが修道士になったいきさつを描いた「ウッドストックへの道」他、「光の価値」「目撃者」と、付録として「カドフェルシリーズ:ガイド」を収録。「カドフェルシリーズ:ガイド」は、物語の背景やシリーズに出てくる食べ物・薬草や各巻のあらすじ等をまとめた小事典。これで、ほんとうにカドフェルシリーズは終わりなんだなぁ…。
タニス・リー『血のごとく赤く』(ハヤカワ文庫FT) 読了。
実は原書で読んだことがあるのだか、私の語学力では「いばらの森」以外、何が起こったのかさっぱりわからなかったのだった。日本語訳を読んでみて、判らなくても無理はないと自分を慰めましたけど。タニス・リーの文章って、暗喩が多いんですもの。
好きなのは「狼の森」と「黄金の綱」。「血のごとく赤く」は、バージョンアップ版ともいえるニール・ゲイマンの「雪と鏡とりんご」(『SFマガジン』96年12月号)を読んだ後ではいささか甘すぎ。「緑の薔薇」もいまひとつ。『美女と野獣』ネタでは、私はボーモン夫人の原作が一番好きですからねぇ。
シャーロット・マクラウド『復活の人』(創元推理文庫)
お茶とケーキ派ミステリの女王 シャーロット・マクラウドのセーラ・ケリング物の最新刊。さすがにマンネリです。『納骨堂の奥に』や『下宿人が死んでゆく』の頃はほんとに良かったんですけど。今回は、初心に帰った(?)お葬式のシーンなどもありますが…。
セーラ・ケリング物に関する限り、片岡しのぶさんの訳の方が好みです。
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ひらやま氏より、ハヤカワ文庫FT総目録の資料を送っていただく。
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図書館で、風間賢二『ダンスする文学』(自由国民社)を借りる。
風間氏は、初期の早川FT文庫担当だった人。
でも、ちらっと読んでみたけど、なんか難しい...。
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勢いで、プレイステーションと『FF7』を買ってしまう。
確かに画面は凄いが…いまいち乗り切れない。『パラッパラッパー』を買うべきだったか?
古本屋へ行ったところ、欲しい本がいろいろ見つかるので感激する。
『ゲイルズバーグ...』は持っていたはずだが、本がどこにあるか見つからないので購入。
『クリスマスのフロスト』も図書館で読んだのだが、面白かったので、購入。
小沢淳『金翅鳥飛翔』(講談社X文庫ホワイトハート)
平凡な高校生がインド神話がらみの力に目覚める話のプロローグ部分らしい。ストーリー展開よりは、キャラクターで読ませる。
でも私は早く<千年王国ラレンティア>の続きが読みたいです。
R.D.ウィングフィールド『クリスマスのフロスト』(創元推理文庫)
シモネタギャグを飛ばし、部下のエリート刑事をいたぶりつつ、警部フロストが少女失踪事件を追う。
主人公のフロストは、非常に下品なのだが、憎めない人物。ドーバー警部なんかよりずっと愛らしいです。(笑) 翻案して、ビートたけし主演でドラマ化すると面白いだろうと思います。(たけし軍団は抜きで。)
出たのは1994年。マニア間での評価は高かったはずなのに、続きがでませんな。 (といっていたら、1997年冬に『フロスト日和』が出た。)
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麻城ゆう『朱雀、消滅』(角川スニーカー文庫)を買う。
麻城ゆう『朱雀、消滅』(角川スニーカー文庫)
<時代の巫子>というシリーズの2作目。1作目は『青竜、目覚める』という。
舞台は20XX年東京、コスプレマニアで作家の母を持つ中学生宮坂白竜は、謎の占い師に「無敵の強運」を与えられる。そのころ彼の通う中学校では、奇妙な事件が頻発していた。やがて彼とその友人は、クラスメイト達が教室の中で惨殺されるという事件に巻き込まれ、その真相を知ることになる。
中学生が変身して戦隊物をやっちゃう話。(笑)
麻城ゆうの話は一見軽そうですが、実は重いテーマを借り物でない自分の言葉で構成しようとしているんでしょうね。いまひとつ力及ばず(失礼!)という感じもありますが、その姿勢が好きです。
C★NOVELSの『反風水師誕生』『反風水師、その愛』の続編でもあります。あちらは、あんまりむちゃくちゃ(怪獣大戦争とか(笑))やるので、シリーズ打ち切りになってしまったとか。
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通販で申し込んでいた『ミステリマガジン』96年2月号が届く。
聖職者特集とのことで、エリス・ピータズのカドフェルシリーズの解題が載っているのだ。
「有里の本棚」で、カドフェルの特集をするかどうか思案中。
誰かがやってそうな気がするんだけど、YAHOO!で検索した限りでは、見つからなかった。
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図書館で、菊地秀行『シビルの爪』[3]を借りる。もう、前の巻の話なんて忘れてしまった。
作者自身もそうだったらしく、前巻とのつながりはあまないようだ。(笑)
菊地秀行『シビルの爪』[3](中央公論社 C★NOVELS)
事件屋を営む吸血鬼が、謎の美貌の青年と出会って事件に巻き込まれるシリーズ。一人称で語られるのが、<アダルト・ウルフガイ>を彷彿させる。
『シビルの爪』は、別の吸血鬼に狙われた美少女タレントを守る話だったはずだが、なんだかよくわからないうちにエジプトのピラミッドの中での活劇になってしまった。
ストーリーはこれで完結だが、結局どういう話だったんだろうなぁ。うーん…。
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季節の変り目で自律神経が壊れたのか、頭痛がひどいので、なにもせず本を読む。(本当は目を使っちゃいけないんだ)
FT総目録の資料として借りた『SFマガジン』97年2月号や、『ダンスする文学』、『黎明の王 白昼の女王』など。
イアン・マクドナルド『黎明の王 白昼の女王』(ハヤカワ文庫FT)読了。
いかにも男流SF作家の書いたファンタジーであったが、最後に至って立派に癒しのファンタジーとなった。途中で投げてはいけないですね。確かに90年代を代表する名作になるかもしれない。
妖精物語っぽい表紙に騙されてはいけない。これは、フィリップ・K.ディック記念賞受賞作なのだ。そのつもりで、読み始めること。
三部構成になっていて、第一部は1913年に一人の少女が森で妖精と出会い失踪するという事件を日記や書簡、新聞記事などで構成し、第二部は1930年代のダブリンの少女が妖精の国へ連れ去られようとするのを、彼女の「守護者」と父親が阻止しようとする話。第三部は現代を舞台に第二部の主人公の少女の孫が彼女を連れ去ろうとする"ファーガス"(これが妖精の正体らしい)と戦う話である。
第二部の文体が変だと思ったら、ジェイムズ・ジョイスの文体模写をやっているかららしい。また、ここで出てくる二人の浮浪者は『ゴドーを待ちながら』のパロディだと思う。一瞬、『ランボー』の姿もよぎる。
基本アイデアは『ミサゴの森』(私は未読。読みたい。)のいただきではないか、という指摘もあるようだが、
====引用開始====
リミックスだ。すべてがリミックスなんだよ。分解し、分析し、サンプリングし、ふたたびいっしょにする。 (p.498)
====引用終了====
なんて書いているところを見ると、確信犯なのだろう。
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天気が良かったので、ベランダに寝椅子を持ち出して、本を読んでみる。結果、眩しくて、読書には向かないことが判明(笑)。
でも、あたたかかったので、頭痛は飛んでしまった。太陽光は偉大である。
風間賢二『ダンスする文学』(自由国民社)読了。
ハヤカワ文庫FTの担当者だった風間賢二による現代文学ガイド。前半はポスト・モダンといわれる作品の書評だが、私はそういう方面は全然読まないので、チンプンカンプン。中盤のモダン・ファンタジーとモダン・ホラーのあたりからやっと私の守備範囲になり、話についていくことができた。吉本ばななの『TUGUMI』をドッベルゲンガー譚と捉えているのが面白かった。この人はどうやらホラーが好きらしく『幻想文学』や『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』でもホラーの書評を担当している。というわけで、コリン・ウィルソンの書評がとっても嬉しそうだ。(笑)
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『SFマガジン』97年2月号に載った高野史緒「G線上のアリア」が良かったので、 『カント・アンジェリコ』(講談社)『ムジカ・マキーナ』(新潮社)も読んでみようかと思う。図書館に頼もう。(ここに書いとけば忘れまい。)
同号の「マイベストSF」には、なぜか京極夏彦の『鉄鼠の檻』が。私は別にSFやミステリのジャンル分けにはこだわんないですけど、これってSF?
で、ニール・ゲイマンの「雪と鏡とりんご」が読者賞の第二位。これを機に翻訳でないかな〜。
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図書館にいったところ、月末の特別整理日で休みであった。ショック〜。
仕方なく蔵書整理をしていて、カーレン・ブリクセン『運命綺譚』(ちくま文庫)を見つける。ええ、これ私が買ったの!?覚えてないけど、多分そうなんだろうなぁ...。
『銀河英雄伝説読本』もころがっていた。こっちは、たしか2週間前ぐらいに買った覚えがある。
本が増えて何がなにやら判らなくなってきたので、ブックカバーに書名を書いていく。夫は、ブックカバーに書名を書くなんて野暮だという。彼は、ブックカバーをした本を著者別に並べておくのが趣味なのだ。でも、書名が見えないと検索効率が落ちるのだ。私は一度に4、5冊の本を参照するんだから。
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友人の日舞の発表会を見に新宿へ行く。電車の中で『ミッドナイト・ブルー』を読む。
開演に間があったので、紀伊国屋に直行。
紀伊国屋コミックスのコーナーで波津彬子『燕雀庵夜咄』と『牡丹灯篭』を買う。波津彬子著作一覧と花郁悠紀子著作一覧をそのうち作るつもりなのだ。(家に帰ってから『燕雀庵夜咄』は読んだことがあるのに気づく。実家にあるのかもしれない。)
平井和正の『月光魔術団』の新刊と道原かつみ『Xの歌声』も見つけたが、地元の本屋でも買えるからと見送り。
『晶文社図書目録』をゲットし、文庫コーナーを回って2冊買い、発表会の会場へ。
発表会が終わった後、そそくさと神田神保町へ。私は、紀伊国屋より三省堂書店本店の方が好きなのだ。
三省堂書店本店で、『幻想文学』44号と47号を買う。何度来ても、ここの売り場作りのセンスは本当に絶妙だと思う。品揃えだけじゃなく、コーナーの作り方、本の並べかた、ところどころに立っている書籍紹介の札など、売り場担当者の「顔」が見えるようだ。
新刊書のコーナーで『術語集II』をみつける。『術語集』が面白かったのを思い出し、それも購入。
文庫のコーナーで、『中公文庫解説目録』と『青春と読書』(集英社の読書情報誌。恥ずかしい誌名だと思うぞ)をみつけ、もらってくる。 『青春と読書』は集英社文庫創刊20周年記念号で文庫本特集。結構面白いので、見つけたら、拾ってくることをおすすめします。タダなんだし。
文庫の古本でも漁ろうかと外に出たが、7時近かったので、ほとんどの店が店仕舞いを始めている。これはヤバイと秋葉原へ。夫から頼まれたVisual Basicの本を買うためである。
なんと棚おろしのため、7時半で閉店だというLaoxへ駆け込む。VBの棚に直行し、ざっと眺めて、カットシステムの本を買う。VB2.0用の解説書が良かったので、多分これでいいと思う。でも高かった。4千円近い。カードで買う。
帰りの電車の中で、『ミッドナイト・ブルー』読了。面白かった。菊地秀行の海外女性版という感じですね。
家に帰り着くと、見慣れぬブックカバーの本が5冊。中身を改めてみると、『月光魔術団』の新刊と『Xの歌声』が入っていた。夫が買ってきたらしい。良かった〜、買ってこなくて。我が家ではこういうことが時々あるので、夫と私の両方が読む作者の本を買うときは、注意が必要なんである。(苦笑)
中村雄二郎『術語集II』(岩波新書)
「悪」「カオス」「顔」「情報ネットワーク社会」「ヒトゲノム」「フェミニズム」「免疫系」といった、現代社会のキーワードを解説している。前の『術語集』の方が分かりやすかった気がするが、「フェミニズム」といった項目をこれだけコンパクトにまとめることだけでも凄いことなのだろう。
気になった項目は、参考文献でさらに深く調べることができる。
ナンシー・A.コリンズ『ミッドナイト・ブルー』(ハヤカワ文庫FT)読了。
読みはじめて改めて「ハードボイルドの文体」というものを実感しました。どうやら、私はタニス・リーなどの装飾過多な耽美な文体にいささか飽きてきていたらしく、簡素な文体がとても心地よかったです。
「過激な暴力、過激なセックス描写」という前評判にちょっと腰がひけてましたが、読んでみると、「こんなもん?」確かにファンタジーとしては画期的かもしれないけれど、私はミステリや菊地秀行で鍛えられているからなぁ。これでびびってたら『羊たちの沈黙』は読めないです。(笑)
ソーニャ・ブルーは魅力的。「彼女」の暴力を読んで、なんだかスッキリしてしまった私は、結構ストレス溜まっていたのか?
サラ・バレッキーに菊地秀行を足したようだと思いましたが、もしかしてこの形容はファンタジーファンには通じないのかも。ネットサーフィンしていて思ったのは、最近の読者って、SFとミステリとファンタジーとホラーにくっきり分かれていて、あんまり守備範囲外の本に手を出さないらしいってことですね。栗本薫みたいな人はだんだん少なくなっていのかしら。
この作品は、それらのどのジャンルのファンからも支持される可能性をもっていると思います。だから、売れてるのね、きっと。
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最終更新日:2001/09/14