diary Alisato's 本買い日誌
1999年11月前半 *


1999年
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11月前半

11月前半の話題
11月前半の読了本


1999.11.01(月)

 コバルト文庫の話題和製ファンタジーの話題のリンク集を別ファイルにまとめました。


1999.11.02(火)

クロネコヤマトのブックサービスで本が届く

 10月28日に注文した本がもう届きました。

・水鏡子『乱れ殺法SF控』(青心社)
・妹尾ゆふ子『魔法の庭 3 地上の曲』(プランニングハウス)
・飯田雪子『リアライン』(プランニングハウス)

4日で届くってのは、本当だったんですねぇ。 手数料は380円かかりますが、欲しい本が置いてある本屋への交通費と所要時間を考えたら、断然リーズナブルですね。 たくさん買う人、指名買いをする人、急ぐ人にはお役立ちです。
 いくら買っても手数料は同じなので、本屋で書名をチェックだけして、後でブックサービスを利用するってのも手かも。 ブックサービスは顧客情報が残るので、そのうちそれを利用したサービスも始まるような気がするし。(既に郵便自動振込み会員には、5回利用ごとに手数料サービスの特典がある。)

 本屋って、たくさん買う人間に対してサービスしたりしないでしょ? だったらどこで買ったっておんなじなんだよねぇ。CDショップやリサイクル本屋では、会員証を作って顧客の囲い込みをしようとしているのに。 (ブックカバーや栞で差別化を図ることをしている店あるけど)
 年に数冊ベストセラーを買うだけの人間たちばかりを見ていて、ひとりでその百倍も本を買う少数の人のことを忘れていたら、そのうち見限られると思う。

 もちろん本の実物を目で見て手に取れるという点で、まだまだ書店に存在意義があるのは認めます。 でも、それには、「ちゃんと棚を作る」ことをしないとね。

女性用和製ファンタジーと海外作品

 ついに【hosokin's room 1999年11月2日】にも飛び火? (細田さんがこの件に関して当事者らしいというのは存じ上げてます。でも、公にできない業務上の秘密に含まれちゃうんですね、きっと)

===引用開始===
 「女性用だとやはり外せないのがマイケル・ムアコックの「ストームブリンガー」シリーズ(『メルニボネの皇子』が1984年12月刊行)と、タニス・リーの「平たい地球(アズュラーン)」シリーズ(『闇の公子』が1982年10月の刊行)ですね。
===引用開始===
というのは、確かだと思います。少なくとも書き手の側に影響を与えたのは間違いないです。 トールキンの影響よりもそっちの影響のほうが大きいかも。
 前田珠子の《破妖の剣》シリーズなんて、この二人の影響そのまんまですもん。そのまんまでありながら、それに飲まれずにしっかり少女小説にしたところに前田珠子のすごさがあった(←過去形……)と思います。 それ以外の人だと、ひかわ玲子―エルリック、小沢淳―タニス・リー、高瀬美恵―タニス・リー(←多分)といったところでしょうか。(もっといるとは思うけど、読んでいないからわからない)

 和製ファンタジーへ影響を与えた海外ファンタジーの翻訳家としては、浅羽莢子、井辻朱美、安田均がキーパーソンでしょうか。 翻訳冊数からいえば、もっと多く訳している人がいるのですが、この3人は翻訳以外の露出度も高いから。

(1999/11/04追記)
ムアコックの「ストームブリンガー」シリーズの1巻目は、安田均訳、2巻目以降が井辻朱美訳です。
タニス・リーの「平たい地球(アズュラーン)」シリーズは、1作目の『闇の公子』が浅羽莢子訳、2作目の『死の王』が室住信子訳、3作目以降も浅羽莢子訳です。井辻朱美訳のタニス・リー作品は『白馬の王子』です。一応念のため。


1999.11.03(水)

 いただいたメールなどをもとに和製ファンタジー年表を作成してみました。 テスト版なので不明点や不備な点も多いのですが、私がどんなものを作りたいかは分かっていただけるのではないかと思います。

■妹尾ゆふ子『魔法の庭 3 地上の曲』

 妹尾ゆふ子『魔法の庭 3 地上の曲』(プランニングハウス)読了。
 良かったです。すごく。もったいないので、感想はゆっくり書きます。

■とみなが貴和『EDGE』

 とみなが貴和『EDGE』(講談社X文庫ホワイトハート)読了。
 キャラクターが良かったです。前作と同じような人物配置なのが気になるけど、続編も期待。


1999.11.04(木)

和製ファンタジー年表

 和製ファンタジー年表ですが、いくつか項目を追加し、ジャンル別リストを作成しました。
 リクエストにお応えして、1955年生まれの人の年齢も年表に追加しました。

 こうして年表にしてみると、アレとコレが同じ年にあったのねーなどなどの発見があって面白いです。
重要な事柄が同時期に出てくるのがブームというものなんでしょうか。

■早見裕司『夏街道[サマーロード]』

 早見裕司『夏街道[サマーロード]』(アニメージュ文庫)読了。
 うーん……。話は面白いんですけどねぇ……。


1999.11.05(金)

ブックマーク【YOMIDASランド この10年】

 和製ファンタジー年表のための資料をインターネットで検索していたら、【YOMIDASランド】というサイトに当たりました。
 読売新聞のデータベースを利用したサイトのようですが、新聞記事からこの10年を振り返る、【この10年】という企画が面白いです。 文学賞やベストセラーの上位5位ぐらいまでの情報も載っています。

 【怖いもの読みたさ ホラー出版ブーム 映画人気か世紀末現象か…】という1987年の記事が特に面白かったです。10年前にもホラーブームが訪れる兆しがあったということらしいです。でも、ここで話題になっていいるハヤカワ文庫の「モダンホラー・シリーズ」って確か……。

 それにしても、日本ホラー小説大賞の情報がほとんどないんですけど、誰か作らないの? 資料がないから私にはできませんです。

■飯田雪子『リアライン』

 飯田雪子『リアライン』(プランニングハウス)読了。
 今まで読んだ飯田雪子さんの作品では、これが一番好き。私のツボ押しキャラはツァンナさんです。ああ、もったいない。

 物語が章ごとに複数の人物の視点で構成されるというのは面白いのですが、読者が感情移入しにくいのが残念。

クロウカードセット

 【安田ママ】さんによれば、めちゃくちゃ売れているという『カードキャプターさくら オールクロウカードセット』でございますが、えへへ、旦那に頼んで買ってきてもらいました。私が欲しかったんですー。封印の鍵はついてますが、バトンは別売り。当たり前か。いや、別にバトンは欲しくないです。 欲しいのはカードだけ。


1999.11.06(土)

本を売る

 館林のブック・オフで「買い取り30%UP」というチラシをもらったので、ここぞとばかりに不要な本を売りに行く。
 といっても、ほとんどが夫の本で、筒井康隆とかポール・ボネとか、えらい昔のオトメチックマンガとかなのだ。私は文庫落ちしたハードカバーを10冊ばかり売ることにする。だってこれ売らないと新しく買った本が入らないのだ。

 5つの紙の手提げ袋につめこんだ本は総額7千5百円で売れた。30%を甘く見るものではないですね。サービス券も750円分付いていたし、そのへんの古本屋に売るよりいいのでは。ついでにいうと全部美本だから、ブック・オフの人も楽できてお得だったと思うぞ。なお、私の分け前は千円+α。

 本を売り払ったその足で、また本を買いに棚へ向かうのが業の深さを物語る。古本ぢごく?
 以下の本を購入。
・ハードリー・チェイス『ミス・ブランデイッシの蘭』(創元推理文庫)
・安藤美貴紀夫『ボイヤウンベ物語』(講談社文庫)
『本の雑誌』96年11月号
・竹内志麻子『青い月(ちきゅう)の恋人たち』(集英社文庫 コバルトシリーズ)

 ハードリー・チェイス『ミス・ブランデイッシの蘭』の映画には2バージョンあるらしいが、原作も2バージョンあるらしい。誘拐された富豪の娘があんなことやこんなことをされてしまう鬼畜な初版と比較的穏当な書き直し版。 と、創元推理文庫のあとがきに書いてあり、創元推理文庫は穏当な書き直し版からの翻訳。
「鬼畜な初版本の翻訳が読みたいんですけど、出てないですかねぇ」と、とある方に尋ねたら、
「出ていたら正真正銘の希覯本です」とのお答え。
しょうがないから、書き直し版で我慢します。

 『ボイヤウンベ物語』は、どこかで話題になっていたような気がするんだが、どこだったかなぁ。

 竹内志麻子『青い月(ちきゅう)の恋人たち』は、現在人気急上昇中のヒトの24歳のときの作。
高校二年で'82年第三回小説ジュニア短編小説新人賞佳作入賞して、苦節5年で21歳の終わりに最初の本が出たそうで。 あとがきの最初の方の文章を見ると、後の化けっぷりも納得がいくような気がします。

新刊書を買う

 新刊書店では、以下の本を購入。
・田村由美『BASARA 外伝集』……コミックスじゃなくて雑誌形態
『SFマガジン』1999年12月号
・能田達規『おまかせ!ピース電器店 15』(秋田書店 チャンピオン・コミックス)
・岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店)
・ピアズ・アンソニイ『魔法の国ザンス12 マーフィの呪い』(ハヤカワ文庫FT)


1999.11.07(日)

■岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』

 岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店)読了。
 溝口@書物の帝国絶賛ってのも納得。確かに凄いわぁ。牧野修が好きな人なら絶対気に入りますでしょう。
 表紙と口絵に使われている絵は、久世光彦『怖い絵』にも出てきた甲斐庄楠音(かいのしょう・ただおと)の作。穢い(きたない)」といわれて大正画壇を追放された人だそうで、よくぞこんなにぴったりの「きょうてえ」絵を持ってきたもんだと……。


1999.11.08(月)

和製ファンタジーに関するメール

 匿名希望のMさん(仮名)から和製ファンタジーのルーツとファンタジーの定義に関する怒涛のメールをいただきました。 特にお願いして以下のページに転載させていただきました。 (1999/11/09 すみません、リンク間違えてました。直しました。)

●匿名希望 Mさんからのメール「和製ファンタジーについて」

 眼鏡猫さんからは、曽祢まさこ『不思議の国の千一夜』(1981?〜1985?)もルーツのひとつでは? というご指摘をいただきました。
確かに『なかよし』系列の”ファンタジー”も侮れないかも〜という気がしてきています。 なにしろ曽根まさこは、『魔女に白い花束を』というタイトルであの牧神社刊の『魔女グレートリ』をマンガ化してますからねぇ。
 おなじく『なかよし』の高階良子は『はるかなるレムリアより』なんてのを1975年に描いています。 この人は1970年代に江戸川乱歩や横溝正史のマンガ化を手がけていて、よく考えるととんでもない人かも。 掲載誌が『なかよし』ですよ、『なかよし』! 小学生の女の子が読んでいたというのに……。

 私はリアルタイムで読んでました。ひょっとしたら私が「人生間違えちゃった」一因は高階良子にもあるかも。

 それから1987年のホラーブーム(?)に関連して、『ハロウィン』『ホラーハウス』についても教えていただきました。 (今でている『ダ・ヴィンチ』にもそのあたりの話題が出てますね。)
 大陸書房の『ホラーハウス』には、ラヴクラフトの短編のマンガ化も載っていたそうです。 作者は松本千秋だそうです。(【TomePage】のCTHULHU神話リストには、しっかり載ってました。)

 中山星香からファンタジーに入った人は、表紙絵につられてハヤカワ文庫FTへ向かった人が多かったようですが、ホラー漫画を読んでいた人はどうなのでしょうね?

■ピアズ・アンソニイ『魔法の国ザンス12 マーフィの呪い』

 ピアズ・アンソニイ『魔法の国ザンス12 マーフィの呪い』(ハヤカワ文庫FT)読了。
 このシリーズをしばらく読んでいなかったので、すっかり前の話を忘れてしまいました。別に覚えていなくてもなんとかなります。基本的に登場人物の誰かが結婚相手を見つけてくる話だし。

 今回の一応の主人公は、アイビィ王女。前巻で弟のドルフ王子が魔法使いのハンフリーを見つけられず、代わりに婚約者を二人も連れて戻ってきてから3年後、「今度は私が……」と<ヘブン・セント>(って、何でしたっけ? 魔法のコイン?)を作動させたはいいが、マンダニアにとばされてしまい、そこでグレイという青年と出会う。

 フツーの大学生のグレイ君がいい感じ。大昔のビンク君を思わせる人の良さですね。 このシリーズはなぜかは知らねど、女は性格悪くて男は可愛いんですよ。
 読めばハマる(で、読み終わると内容を忘れる)良く出来たユーモア・ファンタジー。 これだけ分厚い本を量産していてもそれなりの質を保っているのは、たいしたもんだと思います。

『季刊 プータオ 秋の号』(白泉社)

 どういうコンセプトで作っているのか、さっぱり分からなかった白泉社の謎の雑誌『プータオ』が新装刊だそうです。 なんだか無駄に印刷のいい『ぱふ』という気がしないでもないです。CDアルバム付き。
 相変わらず何をやりたいのか分からない雑誌ですが、岡野玲子『陰陽師』の特集と『花とゆめ』創刊25周年メモリアルの特集があったので買いました。
 『花とゆめ』の特集は、簡易年表が載っていて『妖精王』『ピグマリオ』の連載時期がチェックできて便利。


1999.11.09(火)

容量危うし?

 このページの置いてあるBIGLOBEのホストの容量を調べてみたら、5Mバイトのうち4.4Mを使っておりました。 まだ大丈夫だとは思いますが、うっかりでかい画像を格納したりすると、あっという間に満杯になってしまうかも……。
まあ、2000年になったら、古い日記はどこかへ格納し直すと思います。

 BIGLOBEのホームページには、ファイル数1000個までという馬鹿げた制限があったのですが、いつのまにかこの制限はなくなったようです。

 NIFTYのほうのホームページは、@niftyホームページへ移行するかどうか考慮中。
自前のCGIが使用できるのはいいけど、URLが変わると、リンクしてくださっている方々にお知らせしなくちゃいけないから、面倒なんですよねぇ……。

■阿刀田高『恐怖コレクション』

 阿刀田高『恐怖コレクション』(新潮文庫)読了。
 この本は、夫の古本屋行き本の山の中にあったのを拾いました。阿刀田高は、奇妙な味の短編の書き手として名前だけは知っていましたが、実際に読むのは初めて。新聞に掲載された短編は読んだことがありますが、あまり出来のいいものではなかったせいか、特に読みたいとは思わなかったのです。

 ショートショート集かと思ったら、「一応」エッセイ集でした。「一応」が付くのは、日常的なことを綴ったエッセイだと思って読んでいると、オチの一行でゾクッとさせられたり、不可思議な気分にさせられたりするからです。どこまでが実で、とこからが虚かわからなくなるものが多く、なるほど”奇妙な味”の短編の名手といわれるだけの人だと思いましたです。

 戦時中の想い出を綴った「めがね橋」や、家族のことを綴った「披露宴の席で」なんてのが怖いです。「歪な金塊」「経帷子」は、凄みと怖さとユーモアと思慕が微妙に入り交じっていて好きです。
 他の作家の作品を紹介したエッセイもあって、ロバート・ブロック『ベッツィーは生きている』を紹介した「二重構造の世界」や、中島敦『文字禍』『狐憑』を紹介した「中島敦のこと」、中島敦『牛人』やウォルポール『銀の仮面』を紹介した「友達」などは、紹介された作品を読みたくなってしまいました。(巻末には、しっかり引用作品の出典一覧が載っています。ポイント高し)

 北村薫『謎物語』のときも思ったのですが、作家がエッセイで紹介する本って、なんだかとっても魅力的に見えますね。 実物よりも紹介文のほうが面白い作品もたまにはありますが、だいたいはどれも傑作です。実作家が「やられたっ!」「とてもかなわない」と思いながら紹介するものばかりだからでしょうか。
 というわけで、いろんな作家が他の人の作品を紹介するエッセイばかりを集めた本があったらいいのになぁと思いました。 そいういう本って、出てます?  「私のすすめるこの3冊」というような企画物じゃなくて、普通に書いたエッセイを集めたものがいいんですけどね。企画物だと奇をてらったり無理やり誉めたりする人がいるので、いまいち面白くなくて。

 ところで中島敦『牛人』の紹介ですが……。そのまま引用します。

====引用開始====
 やがて叔の健康が衰えた。身動きもできぬようになるにつれ、今まで隠されていた牛男の本性がひとつ、ひとつあらわになり始める。さまざまな命令はすべて牛男のところで改変され、また外からの情報もことごとく牛男のところで作り変えられて伝えられた。叔は遅れてそのことに気づくが、もう遅い。怒りの叫びも狂気のせいにされてしまう。
(p.192)
====引用終了====

 なんでこのタイミングでこーゆーのをみつけちゃうのか、自分でも分かりませんが……。 なにかが想起されてしまって……。うーん……。


1999.11.10(水)

 コバルトリスト、ちまちまと入力中。

サイクリング

 夏の間の運動不足がたたって、ウェスト周りがおそろしい状態になってきた。 今日は天気もよいので、脂肪を燃やすべく3キロ離れたところにある公園までサイクリングをすることにした。
 ほどよく暖かいので、自転車に乗るのも気持ちがいい。目的地の公園は、畑を公園用に整備しただけといった風情だが、 一面にコスモスの花が咲いていて、それはそれで壮観。ちなみにうちのご近所での「一面」というのは、小学校の校庭が5つぐらい入る広さをいう。毎年、人海戦術で種を撒いているらしい。

 あちこちぐるぐる廻って一時間。さて、少しは脂肪が燃えたか?

 帰りに図書館で、ちくま日本文学全集(文庫版のコンパクトな全集)の内田百ケンと中島敦の巻を借りる。

悪徳を喰らう件(くだん)

 古今東西の神話的生物がいろいろ出演するファンタジー漫画、山岸凉子『妖精王』の文庫を読み返していたら、件(くだん)が出てきた。文庫版だと2巻の238ページ、「3本のななかまどの木」を過ぎて、爵がクーフーリンのことを疑ったときに登場する。姿は牛身人頭で、『幻想文学』56号の表紙によく似ているのだが、このくだんは予言はしない。代わりにこんなことをいう。

「おれは 猜疑心や 偽善など 人間の悪徳を 食って生きている
 いま おまえの 疑いの心が おれをここへ 呼んだのだ」(p.239)

 はて?
 人間の猜疑心を食らう「件(くだん)」というのは、『幻想文学』56号にでてきた「くだん」や「牛女」とは、あきらかに属性が違う。いったいこの「件」のルーツは何だ?

 昔、どこかの雑誌のインタビューで、山岸凉子本人がこの「件」の元ネタについて語っているのを読んだことがあったので、【山岸凉子カテゴライズ】で質問したところ、元ネタは内田百閧ナ、インタビューは『妖精王の帰還』(新書館,1979)に収録されていることがわかった。

 そこで『妖精王の帰還』のインタビュー記事(正確には樹村みのりとの対談)を読んでみると、山岸凉子はこう語っている。

===引用開始===
ええ、人間に牛と描く。実はあれ、出典があるんですよね。内田百閧フ短編かなんかにあるのね、字からきた創作だと思うの。猜疑心とか欺瞞とかの固まりの人間が罰をうけると人牛になってしまう、っていう話なんです。カフカの『変身』じゃないけど、ある日気がつくと、原っぱのまんなかで件になっている、そしてみんながワーッと笑いにやってくる、そんな短編があったんです。それがすごく記憶に残ってて「すごい、顔だけが人間で体が牛なんだ」って、それを字からだけ想像したことがすごいと思ってね。
『妖精王の帰還』p.25 (新書館,1979)
===引用終了===

 山岸凉子がいっている出典は、内容からいって、『幻想文学』56号にも収録されている内田百閧フ「件」に間違いなさそうだが、百閧フ小説には「猜疑心とか欺瞞とかの固まりの人間が罰をうけると人牛になってしまう」というくだりはない。
 山岸凉子は、どこから「猜疑心うんぬん」を拾ってきたのだろう? 自分で思い込んでいるだけなのか、それとも別の短編にそんな話があったのか?
 謎である。とても気になる。

 【幻想掲示板】で質問したくてたまらないのだが、このタイミングで質問したらまずいかなぁ……。

 ちなみに『妖精王』の「件」は、主人公を追いまわしたあげく、急には方向転換ができないために岩にモロにつっこんでしまうのである。


1999.11.11(木)

 美容院に行って、髪を切ったところ、風邪をひいたみたいです。(首のあたりが涼しくなったからかなぁ)
 今日は頭が痛いので、メールのお返事などなどは後日。
阿刀田高『アイデアを探せ』(文春文庫)を購入。

■アスプリン『こちら魔法探偵社!』

アスプリン『こちら魔法探偵社!』(ハヤカワ文庫FT)読了。

■神坂一『スレイヤーズ』

神坂一『スレイヤーズ』(富士見ファンタジー文庫)読了。
面白いっすね。文体は新井素子調。改行が多くてマンガっぽい文章ですが、宝石の護符を作る過程の描写などを読むと、 行き当たりばったりで書き散らしているんじゃないってことは分かります。続きを探します。


1999.11.12(金)

和製ファンタジー論

 引き続き反響メールをいただいております。いろんな人がいろんなことをいっています。なかなかに面白いです。

 ただ語る人のファンタジー観の立脚点と対象がはっきりしないと、百家争鳴っていうより百家走迷になっちゃうような気がします。なにしろもともと非常に幅の広い話題で、なおかつ語り手の生まれ年と興味の向かう方向によって、対象そのものが変わっちゃうんですから。
 ハヤカワ文庫FTと少女漫画から入った人と、ドラクエやTRPGから入った人と、1980年代の思想潮流について語る人とが想定する「ファンタジー作品」は別物でしょう。
 それらを一緒にして論じたら話は混乱するばかりでありましょう。

 というわけで、それぞれがどの地点に立って(=いつからファンタジーを読み始めて)、どの方向(ジャンル)をみて、語っているかをはっきりさせるために、年表を作っております。とりあえずの見取り図をつくるために。 わざわざ年表に年齢が書いてあるのもそのせいです。作品のところに作家の年齢もいれておくと、もっとわかりやすいかもしれませんね。(女性作家は嫌がるかも)

 みなさまからいただいたメールから具体的な作品名を拾って年表に加えておりますので、メールくださる方は、具体的に作者と作品名を書いてくださいね。 他にも更新しなきゃいけないものがあるので、作業は遅々として進みませんが、興味のある方は気長に待っていてください。

 ジュブナイルとヤングアダルトについて

 【大森望さんの10月26日付日記】に、この話題が。 もっと早く書いてくれれば、私が楽だったのに〜と思ったり……。私の定義はここ
 私は「ジュブナイル」と「児童文学」とのニュアンスの違いをうまく説明できなかったので、なるほどと思いましたです。

 大人の作者が子供の読者に向かって書くもの:児童文学
 大人の作者が子供の読者に向かって書くもの+ジャンル小説:ジュブナイル
 (精神的に)同世代読者に向かって書くもの:ヤングアダルト
というところでしょうか。この定義なら、サリンジャーもスニーカー文庫も「ヤングアダルト」になりますね。 納得。

 読んでいる人間にティーンじゃない人もいるという点に目をつぶれば、「ティーンズノベル」ってのは良いかもしれません。
 スニーカー文庫などなどを「ヤングアダルト」と呼ぶ風潮にもだいぶ慣れたので、それでもいいですけどね。勝手にしてって、感じで。

再販制度と書店の常連

11月2日の日記で書いた、「本屋って、たくさん買う人間に対してサービスしたりしないでしょ? だったらどこで買ったっておんなじなんだよねぇ。CDショップやリサイクル本屋では、会員証を作って顧客の囲い込みをしようとしているのに。」に関して、メールをいただきました。

 どうやら会員制やクーポンや割引きなどが導入できないのは、本の再販制度のためらしいです。ふうん。 なんでも再販制度のせいにしているような感がしないでもないですが……。
 よく考えてみたら、童話屋には会員証のようなものがあったのですが、あれはどうなるのでしょう。本を買うとハンコ押してくれて、それが溜まると景品がもらえるのではなかったかな。あそこは、本を買い取りしてたから、そーゆーことができたのでしょうか?

 でも私がいいたいのは、いっぱい買う人間に対しては割引きしろという話ではないのです。 (割り引いてくれるに越したことはないんだけどね。)
 書店の側に常連客を作ろうっていう発想がないように見えることが問題なんです。会員証や割引や賞品は、常連客を作る方法の一部でしかなくて、それもあまり上等なやり方とはいえないと思っています。

 なお、私は再販制度を全面廃止するとまずいことが起こりそうな気がするので、一部を改正すればぁ という考えです。


1999.11.13(土)

 頭痛がしていたのだが、それでも服やら靴やらを買いに行く。
 ショッピングセンターでは、購入金額を還元するという福引きをやっていた。3等が当たって、2千円を還元してもらった。

 『こんなマンガがあったのか!』(メディアファクトリー)を見つけて買う。

 頭の後ろと目の奥が痛むので、さっさと寝る。風邪じゃなくて、眼精疲労か?


1999.11.14(日)

 昨日よりは軽いが、やっぱり頭痛がする。でもバザーで売り子をする。 なぜか商品が一袋行方不明である。おととしも同じようなことがあったので、気を付けていたのだが……。 たいして高価でもない手作りの小物なので、盗まれるとかいうようなことはまず有り得ないのだが。どこに行ってしまったのか?

 というわけで、がっくりして更新する気力がありません。



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