原稿No.200204-02
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スニーカー文庫は、背表紙上部に青のラインのある「角川文庫・青版(青帯)」というシリーズから誕生したというのですが(【ジュニア文庫博物館】の「ジュニア文庫創刊年表調査」参照)、レーベルが独立したのはいつなのか調査してみました。
ブックオフのスニーカー文庫の棚にいって、実物調査しました。
その結果。
ネット書店を検索してみると、bk1とTRCでスニーカー文庫が最初に出てくるのは1989年8月から。
ちなみにラインナップは、
ファンタジーフェアの一環だったかどうかは不明。
というわけで、「角川スニーカー文庫」の正式な創刊は1989年8月。ただし、その半年前の2月25日から「スニーカー文庫」という名称は使われていたということになります。
「角川文庫・青版」ができた時期については調査続行。
1986年8月発行の『ガル・フォース 赤い悪魔のサンバ』【ISBN4-04-410301-1 amazon4-04-410301-1】が、スニーカー文庫に入っているので、そのあたりが最初じゃないかと思うのですが。
2003/09/23追記:
一番最初の青版は、富野由悠季『機動戦士ガンダム 1』【ISBN4-04-410101-9 amazon4-04-410101-9】のようです。刊行は、1987年10月30日。
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とりこさんから言及(7/27)していただいたほか、メールでも情報をいただきました。
翌年、ガルフォースの続刊やら富野由悠季の小説版ガンダムが出て、当時はてっきりアニメ関係の文庫なのかと思ってました
【トリイカ 2003/7/27】
ああ、なんかすごく大事なことを言われた気が。
スニーカー文庫の前身が「小説」ではなく「アニメ関係の文庫」だと認識されていたことは、「ライトノベル」を考える上でポイントのような気がします。
いただいたメールからは以下のことが判明しました。
「YOUNG SELLERSという無愛想な名前からスニーカー文庫という愛称を考えて、その後に正式にレーベルとして独立させたんでしょうね。」とのことです。
『ロードス島戦記』(リプレイ版?)も『聖エルザクルセイダーズ』も『コンプティーク』誌に掲載されていたようです。『コンプティーク』誌って、ゲーム雑誌なんですよね。ああ、またなにかすごく重要なところをカスっているような気がする。
ソノラマ文庫もコバルト文庫も「小説」から始まっているけれど、スニーカー文庫(とそこから派生した文庫)は、「小説」から始まったんじゃないんですね。
ネットの知人がこんなことを書いていました。少女小説もいわゆるライトノベルも読まない人ですが、鋭いところを突いているかも。
少女小説というと、なんか教養小説の少女版という印象をそこはかとなく感じていたのですが。なんというのかな、そこは入口なんであって、背後には広い深いもっと進んでいける世界があるんじゃないかと。ライトノベルだとそういう印象を受けない。「遊び」という気がする。悪い意味なのか良い意味なのかわからないけど。切り離されちゃってる感じ。
何から切り離されているのかが問題。大塚英志はその「何か」に繋げようと(というかこじつけようと)してるみたいだけど、。
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林哲矢さんからツッコミが入りました!
86年当時の一中学男子(コンピュータ・ゲーム誌の読者で、SFMを含む小説誌は読んでいなかった)は、ソノラマ、ハヤカワJAの仲間として見てました。アニメ関係の文庫といったら、アニメージュ文庫で、これとははっきりカラーが違うし。
【草の日々、藁の日々 2003年7月29日】
うーん、そうなんですか……。ソノラマ文庫はわかるけど、ハヤカワJAは意外だったり。
でも今のソノラマ文庫やハヤカワJAとスニーカー&電撃系文庫は明らかに違いますよね? それではいったいいつ分かれたんだろう?
個々の作品や作家よりも、角川/富士見路線によるアニメ/ゲーム/小説の享受者層の誕生が重要なのかもだなあ。
【草の日々、藁の日々 2003年7月29日】
やっぱりその辺がポイントでしょうか。
メールでは、「スニーカー文庫」という名称は公募だったはずだという情報をいただきました。
「折り込みで告知、折り込みで発表」だったそうです。
詳しい情報をご存知のかたがいらっしゃいましたら、教えていただけると嬉しいです。
あと、当時の角川ノベルズとの関連もあるのではないかというご指摘でした。
別のメールでは、『コンプティーク』誌の詳しい内容と角川お家騒動の顛末を教えていだきました。
中村うさぎはコンプティークの編集者だったそうです。へぇ。
誰か「思い出のコンプティーク」とかいう俺オタク史ページを作って欲しい。
気長に調べますので、夏休みに実家に帰って昔の雑誌や文庫を発掘して面白いもの発見しましたという方は教えてください。
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【掲示板】から転載
はじめまして。興味深いネタだったのでちょっとおじゃまします。
>7月30日の日記について。
その当時でも、ソノラマと角川富士見ラインは”違うもの”でした。
というか高校生だった頃の私はそう見てました。ああ年がばれるって。
パソコン好きな学生はコンプティークのリプレイあたりからファンタジー
寄りの作品が多い(当時はそう見えた)角川富士見系に流れ、アニメ
コミック好きは富野監督作品や永井豪作品のノベライズがあり、
菊池秀行や夢枕獏がキマイラやDを書き下ろしていたソノラマ系に
流れるといった感じでしょうか。そういやソノラマでは清水義範や
笠井潔もSF学園伝奇物なんかを書いてたような気が。
当然両方にまたがる人も結構いて(私もその口なんですが)、それが
両者を同じ”よう”に見せたんじゃないかなあ、とは思います。
現在は嗜好が細分化してるから両者の違いも明確に見えるのかな
なんて考察するんですけど。
同種の傾向の作品のラインナップを見ればもっと深く分析できるかも
しれないんですが、うちにはソノラマ物しか残ってないからなあ。
…とりとめのない文章ですいませんでした。
ハヤカワJAはこの頃ほとんど読んでないなあ。印象が薄い感じです。
当時どんな作品があったかも思い出せない…
【[めがきら] 通りすがりですいません。 (2003/08/02 15:08:39) 】
めがきらさん、コメントありがとうございます。
角川文庫、ハヤカワ文庫JA、アニメ―ジュ文庫、コバルト文庫、講談社X文庫などなどのラインナップを年月ごとに表にしてみれば、傾向がわかるかもしれませんね。
ネット書店の書誌がそれなりに充実してきているので、やってやれないことはないのですが、大変そう。でもそのうちにやるかもしれません。
bk1は重いのが難。Yahooの検索がもうすこし細かく条件設定できれば、データとるのも楽なのに……。
【[有里] 文庫のラインナップ (2003/08/03 17:38:49) 】
分析サイトっぽいのはあるんですけど、どうもしっくりこなくって。
ご返答ありがとうございました。
【[めがきら] 気長に密かに期待してます。 (2003/08/09 09:24:21) 】
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『SFマガジン 2003年7月』に掲載された評論。特集「ぼくたちのリアルフィクション」の一環。
ヤングアダルトとライトノベルについて、これだけきちんとまとめられた評論は商業ベースの活字媒体では多分初めてのことだと思う。(SF系コンベンションや同人誌ではいろいろやっているみたいだけど)
頁数の都合か、「ヤングアダルト」と「ライトノベル」の定義をせずにいきなり固有名詞の羅列に入るあたり、初心者/門外漢向けではないけれど、SF・アニメ・ゲーム・男の子向け小説・女の子向け小説の全般に目配りが利いているのは、流石。
つっこむところはほとんどないです。ライトノベル史のスタンダードになるのにふさわしい内容だと思う。でも、用語説明はもう少しちゃんとやって欲しい。
「新井素子が少女小説レーベルではなくSFの新人賞からデビューしたことが、男性読者を潜在的な少女小説の読者にした」(p.30)
「少女小説系の変遷は、ライトノベルへと向かうそれとは異なる」(p.34)といった示唆も興味深い。後者についてはもっと深く掘り下げて、新書の1冊も出していただきたいところ。
作りかけのまま放ってある[和製ファンタジー関連年表](実は、《講談社X文庫ティーンズハート》の創刊年が間違っていた)を、この「ライトノベル25年史」の年表に合わせて補完修正しようかと思っています。
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考察
資料
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どこかにメモしたつもりで、どこにも載せていなかったようなので、載せておきます。
スニーカー文庫創刊の先駆けとなったといわれる、1986年夏の角川文庫ファンタジーフェアのラインナップです。
岬兄悟『バックサイド・ハンター!』の帯より。
「どーこがファンタジーや!?」と、力いっぱいツッコミいれたいラインナップ。アルスラーン戦記はファンタジーかも。
最後の『火の鳥 鳳凰編』はアニメ映画のノヴェライズで、これを売りたいがために無理やり「ファンタジーフェア」と銘打ったのかも。
追記:2003/07/27
帯には載っていませんでしたが、富田祐弘『ガル・フォース 赤い悪魔のサンバ』【ISBN4-04-410301-1 amazon4-04-410301-1】も1986年8月発行のようです。
帯によるとポスタープレゼントもやっていたようなので、イラスト重視で売り出していたことは間違いないですね。
ネットオークションに出ていた「角川文庫 ファンタジーフェアのイラスト 6枚」の写真から判断すると、文庫本の表紙になった永井豪(『暗黒の序章 マシンガイ竜』)、出渕裕(『大熱血。』)、美樹本晴彦(『T・T過去からの殺し屋』),安彦良和(『叛逆王ユニカ』)、高田明美(『放課後、アイスティ』)、天野喜孝(『アルスラーン戦記』) のイラストが30cm×20cmのポスターになっていたようです。
「ファンタジーフェア」は毎年やっていて、1987年にはSF系同人誌で特集を組まれるくらいにはSFでファンタジーしていたようです。(【草の日々、藁の日々 2000年1月3日】の記述参照。)
1987年、1988年のラインナップは資料がみつからないので、調査続行。
(ブックオフあたりで、帯付きの本がみつかるとそれで解決なんですが……と思ったら、ブックオフって帯を外しちゃう店が多いのね。)
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白城弥生さんのところにリストが挙がっています。
【2003/08/20 青春の思い出?】【2003/08/21 誰も待ってないリスト】
私もブックオフで、折込みチラシの入っている文庫本をゲットしましたです。
初版が1987年8月の渡邉由自『魔群惑星 1 スイート・マジック』 です。「角川文庫 緑」でした。この本、どうやらISBNがふたつあるようです。他にもそういう本があるかも。(2004/06/27追記:スニーカー文庫の前身である角川文庫青帯になったときにISBNが変わったようです。)
ISBN4-04-169701-8 【bk1】……bk1のみにデータが存在
ISBN4-04-410201-5 【 amazon】……amazon、Yahoobkその他にデータあり
さて、それはともかく、折込みチラシについて。
「書き下ろし、オリジナル ファンタジーフェア」だそうです。
帯についているフェアマーク5枚と300円分の切手を送ると、応募者全員にオリジナルポスター(A4判5枚1組)がプレゼントされたようです。
作家とイラストレーターのサイン会も大なわれていたようです。
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1988年3月の角川文庫 80's 新青春フェアのラインナップ。(久美沙織『SPEAK EASYの魚たち』のカバー見返しより。)
角川文庫青版として出てから、スニーカー文庫に変ったようです。
20冊中、コバルト文庫に書いたことのある作家がなんと14人。コバルトに書いたことがなかった人は竹河聖、越沼初美、新津きよみ、野沢尚、松枝蔵人、藤沢映子の6人だけです。
大塚英志が『キャラクター小説の作り方』(講談社現代新書)【ISBN4-06-149646-8 amazon】のp.123で書いている「少女小説版スニーカー文庫の企画」というのは、これのことではないかと思います。
こういったジュヴナイル小説を決定的に衰退させたのはスニーカー文庫の登場でした。といってもスニーカー文庫は当初は「スニーカー」といういかにものレーベル名が明らかなように、実は少女小説用のシリーズとして企画されたものでした。いや、もっとはっきり言ってしまえば、集英社のコバルト文庫が売れているみたいだから作家をごっそり引き抜いて類似のシリーズを作っちゃえ、という企画で、しかしこれは失敗しました。
大塚英志『キャラクター小説の作り方』p.123 (講談社現代新書, 2003)
失敗したというのは、売れなかったということなのか、どこかから横槍がはいったのか、はっきりしないけど、多分売れなかったんだと思う。ティーンズハートを読むような子達には大人っぽすぎるし、リアリズムに近い少女小説は読者に飽きられつつあったから。
そして角川がスニーカー文庫を少女小説のシリーズとして立ち上げたものの失敗して、そこに救世主のように現れたのが、第二項で少し説明した「ゲームのような小説」としての『ロードス島戦記』などのファンタジー小説だった、というわけです。
大塚英志『キャラクター小説の作り方』p.124 (講談社現代新書, 2003)
ちなみに水野良『ロードス島戦記 灰色の魔女』
【ISBN4-04-460401-0 amazon】は、1988年4月の刊行です。
小説ではなく、リプレイの登場はもう少し早くて、1986年8月からパソコンゲーム雑誌『月刊コンプティーク』(角川書店刊)誌上で連載されていたようです。最初はオリジナルルールじゃなくて、D&D(R)で遊んでいたんですね。(【日本における D&D(R) の展開】参照)
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【ただ風のために。5 2003/07/31】から。ご協力ありがとうございます。
1988年8月〜9月のフェアのラインナップ。
「言うまでもなく、『引っ越し貧乏』の帯にあったものです。「最新刊」「書下し・オリジナル」と書かれています。」だそうです。
1986年の「ファンタジーフェア」に対して「全然ファンタジーじゃないのも入ってるやん!」とツッコミ入れられたので、「新青春」を付け加えたのでしょうか。
花井愛子、大和眞也はスニーカー文庫に入ったけど、新井素子は入らないとか、その後の展開は謎。
アルスラーン戦記ってスニーカー文庫じゃないんですね。
その後入手した、角川文庫'88新青春&ファンタジーフェアの折込チラシ。
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1989年9月刊行の園田英樹『剣狼伝説魔空界編 3 ティラノ』にはさまってた折込みチラシなんですが、既に8月にスニーカー文庫は創刊されていたはずなのに、そのことがひとことも書いてないのが謎。チラシだけ先に印刷してあったのか、それとも担当が別だったのか?
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青版/スニーカー文庫のISBNのつけ方の法則が、わかりました。
4-04-4aaabb-d
aaa……3桁の著者番号(ただし著者番号1桁のものは、10a。2桁のものは、1aa)
bb ……著者ごとのシリアル番
d ……チェックデジット
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