注:作品名をクリックすると、各作品の紹介にジャンプします。
なお作品紹介では、結末までのあらすじを記してありますので、未読の方はご注意ください。
作者の没後編まれた作品集。ミステリタッチの作品が収められている。
「小妖精(エルフ)」「小さなジョスリン」は、デビュー前の未発表作品。
巻末に作品リストが収録されている。
「カルキのくる日」は、単行本収録時には、相当のページ数を書き足す予定だったという。
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娼婦殺しの犯人と目されるエドモン・ラムファード男爵を追って、彼の城までやってきた刑事のステフェン。
だが、ラムファードは旅にでており、城には彼の息子ダナエと娘のレダとエロウペがいるばかりだった。
城の地下には、ヴィシュヌとその妻ラクシュミー、そしてヴィシュヌの10の化身を表す翡翠の像があった。
ダナエが言うには、この城には呪いがかけられていて、城の住人が死ぬたびに像の顔が欠ける。
既に6体の像の顔が欠けていた。
その中の一体は、ラムファードに連れ去られたステフェンの恋人ディアナが自ら命を絶った時に、欠けたのだという。
その日、ダナエの妹のエロウペが死に、石像の顔が欠けた。
翌日、エドモン・ラムファードが船から錯乱して落ちて死んだ。そして、レダも。
誰かが石像の顔を削り落としていることに気づいたステフェンは、それが使用人のカザックであることを知る。
カザックは、すべての殺人の罪を認め、ダナエを連れ出してくれるよう懇願して塔から身を投げる。
最後に残ったダナエは、カザックの分の石像の顔を削り落とし、ステフェンに真実を告げる。
最初にラムファードの妻メアリが、ダナエの母たちを殺したこと。正気をなくしたメアリをダナエの兄が殺したこと。
兄を銃の暴発事故でなくした後、子供たちに性的虐待を行っていた父を麻薬で殺したこと。正気をなくした姉と妹を手にかけたこと。
ダナエは言う。「この城の者は救われません...カルキはもうこない...」
カルキはこの世に現れるヴィシュヌの最後の救いの化身。だが、カルキはもう来ない。ダナエは隠し扉の向こうに消え、それと同時に城中がゆれだす。
城が崩れ落ちる中でステフェンが見たのは、蓮の花に囲まれて静かに立たずむダナエの姿だった。
現在残っている作品は、ページ数の関係で、話の展開が性急だが、きちんと手を加えられていれば、
おそらく作者の最高傑作になったであろう作品。
モチーフとして、ギリシャ神話とインド神話が使われている。少女漫画でヴィシュヌ神が出て来たのは、この作品が最初かもしれない。
ミステリとしてのトリックはほとんどないのだが、話の組み立て方は、現在「新本格」と呼ばれているミステリの一派の作風に近いような気がする。
「黄昏に風」(『花宵闇』収録)は、この作品の続編。
ダナエとステフェンが再会する”やおい”物である。
記憶を失った青年は、婚約者だと名乗る女性ロザモンドに連れられて、ある屋敷へとやってくる。
彼を迎えたのは、従兄弟のジェアードと亡き父の召し使いだったという中国の青年李仁(リーイン)。
自分が何者か確信が持てない青年が見たものは、怪しげなパーティと東洋の品々。
やがて彼は、ロザモンドとジェアードが共謀して身元不明の自分を遺産相続人に仕立てあげ、
アヘンを使って言うなりにさせようとしていることを知る。
だが、実は彼は本物の遺産相続人アレクであり、彼を殺そうとしたジェアードは、李仁に撃たれる。
李仁は、アレクの父の遺言を守り、ジェアード達に協力するふりをしていたのだった。
あらすじには入れられませんでしたが、モチーフは、アンデルセンの『皇帝と夜啼鶯』です。
しゃれたヨーロッパの時代物。
続編の構想もあったそうです。
鳥をモチーフに―例えば毎回、カナリアだとか色々と変えて―同じキャラで2、3本描くつもりだったとか。
萩尾望都、城章子、佐藤史生、伊東愛子らとともに行ったヨーロッパ一周旅行のイラストエッセイ。
最大の目的は、イギリスはブライトンで開かれたSF大会であったらしい。
下宿屋の養女エルフは、町外れにあるヒューゴ屋敷を異常に恐れていた。 彼女はその屋敷の前で拾われたのだという。 ある夜、下宿人のために薬を買いに出たエルフは屋敷の前で不思議な少年に呼び止められる。 実は彼女は13年前、人間界と異世界が繋がったときに取り残された妖精で、少年は彼女を迎えにきたのだった。
異世界から取り残された妖精というのは、後の『フェネラ』につながるアイデア。
死の床についた老女が思い出す、小さなジョスリンの思い出。
老女が引き取った若くして死んだ姪の娘、ジョスリン。歌が好きな彼女は、老女の慰めだったが、
成長して恋をしたジョスリンは、事故で死んだ恋人の後を追って自ら命を絶ったのだ。
花郁作品は、なぜか初期から人が亡くなる話が多い。これなんか、登場人物、みんな死んじゃうんです...。
虫プロ商事が発行していた『ファニー』の1973年7月号に発表された第一回の「ファニーまんがカレッジ」佳作入選作。
同じく佳作に坂田靖子「新婚狂想曲」。『ファニー』でのデビューが決まりかけた頃、発行元の虫プロが倒産したのだという。
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最終更新日:2005/05/09