原稿No.200205-02
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[文庫書店ランキングの比較] のために、ジャンル別のランキングを見ていて、気になったのが文庫の総合ランキング内での順位。ほとんどの書店では、総合ランキングから文庫は除かれているが、もし文庫も含めて順位をつけたらどうなるのだろう?
なんとか知る方法はないかと調べて、bk1のランキングなら、だいたいの位置が割り出せることが分かった。
bk1総合ランキングには基本的に文庫が入っていないが、例外的に『指輪物語 10』(評論社文庫)がランクインしており、さらにSFジャンルのランキングには、総合にランクインしている本と文庫とが混ざって表示されているからだ。ある文庫AのSFジャンルでの順位が、総合順位10位の本Bより上ならば、文庫Aは本Bよりも売れていると考えることができる。
(もちろんジャンルごとに順位が入れ替えられていないという前提において、であるが、手間の割にメリットはなかろうから、順位が入れ替えられている可能性は低い。)
というわけで、2004/01/19〜2004/01/25のbk1ランキングを分析してみた。
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以下は、bk1の総合ランキングにジャンルごとの順位を付け加えた資料である。
[bk1ランキング総合 2004/01/19〜2004/01/25]
[bk1ランキング ジャンル別 2004/01/19〜2004/01/25]
[bk1ランキング サブジャンル別 2004/01/19〜2004/01/25]
また、以下のサイトでメールマガジン「週刊bk1」に掲載された総合10位までの順位を見ることができる。
【異次元を覗くホームページ:週刊bk1.htm】
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結論から言うと、文庫ランキング10位までの本は、総合順位10位『フューチャー・イズ・ワイルド』より売れている。(→証明)
文庫15位の『指輪物語 10』が総合で19位なのだから、もし総合ランキングに文庫を加えたら上位は文庫本で占領され、さらに15冊の本がランキング50位内から滑り落ちることになる。
書店でのベストセラーランキングは、販売促進のためのツールである。
その役割はふたつ。読みたい本を買う人に、どんな本が出版されているかを知らせることと、売れている本を買う人に、どんな本が売れているかを知らせること。そして可能ならば、単価が高い本が売れるようにするのが望ましい。
というわけで、原則的に文庫や新書は別枠で集計されているのだろう。単行本が売れていることをアピールしたほうが、書店としてはメリットがあるのだから。
証明:
SFランキングにより、『デルフィニア戦記 第3部〔2〕』の売上数(SF2位)>『フューチャー・イズ・ワイルド』売上数(SF3位)
文庫ランキングにより、文庫9位の売上数>『デルフィニア戦記 第3部〔2〕』の売上数(文庫10位)
したがって、文庫1位〜9位>『デルフィニア戦記 第3部〔2〕』>『フューチャー・イズ・ワイルド』(総合10位)
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よくよく見ると、bk1のランキングのジャンル分けはかなり恣意的に行われているようだ。(もっとも、恣意的なのはbk1だけではないのだが。)
まず、SFやボーイズラブといった固定マニアのいるジャンルを独立集計する。これらのジャンルは、マニアでない人はほとんど興味を示さないから、総合から分離しても問題はない。また、興味のあるジャンルの本が、他ジャンルの本に埋もれることなく表示されるのだから、マニアにとっても歓迎すべきことだろう。
ちなみにbk1に問い合わせたところ、ボーイズラブ系の本は、文庫・新書の区別なく「ボーイズラブ」ジャンルで集計されているそうだ。
ボーイズラブは、完全に独立して集計されているため、総合ランキング内の順位を推定することができない。だが、紀伊国屋BookWebの文庫ランキングで白泉社花丸文庫が富士見ファンタジア文庫とほぼ同じぐらいの順位で登場しているのを見ると、bk1の総合ランキングでもかなり上位にくるのではないかと思われる。
(2004年2月1日のディリーランキングは、吉原理恵子『幼馴染み』【bk1(02405509)】が『クイック・ジャパン Vol.52』【bk1(02401683)】を押さえて1位だった。ちなみに19:40の時点で【amazon】では45位である)
文庫や新書が総合とは別集計になっているのは、さきほど述べたとおりだが、これにはライトノベルやロマンス小説を総合ランキングから分離して目立ちやすくさせるという意味もあるようだ。
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総合ランキング順位と各ジャンルのランキング順位との関連表を作ったことで、bk1で売れているジャンルも見えてきた。
今回1位をとっているのは、「芸能・娯楽・スポーツ」ジャンルに分類される『クイック・ジャパン Vol.52 窪塚洋介/永久保存版「水曜どうでしょう』【bk1(02401683)】だが、2位以下には綿矢りさ『蹴りたい背中』他「文芸・ミステリ・SF・ホラー」ジャンルの作品が並ぶ。文芸ジャンルにランキング入りした15作品は、すべて総合ランキングで50位以内に入っている。(実際は20位までの本が総合ランキング入りしている。総合5位の綿矢りさ『インストール』が文芸ジャンルに入っていないのは不思議だが、2001年の本なので文芸ジャンルに登録されそこなったのかもしれない)
つまりbk1では、文芸ジャンルがかなりの売れ筋なのである。
書店で文芸書が売れるのは当たり前だと思うかもしれないが、実は他の書店ではそうではないのだ。
たとえば、bk1と同じ集計期間の【紀伊国屋BookWeb単行本 週間ベストセラー】では、上位100位のうち文芸書に分類されるのは30冊に満たない。あとはほとんどHowTo物あるは芸能ジャンルに分類される本だ。以下にその文芸書に分類される本を挙げる。カッコ内は、bk1での順位である。
01(02) 蹴りたい背中 04(--) 蛇にピアス 05(39) 半落ち 06(49) 世界の中心で、愛をさけぶ 07(--) 号泣する準備はできていた 13(15) 看守眼 14(16) 十三の冥府 16(34) 幻夜 20(09) 女王陛下のえんま帳 27(--) あらすじで読む日本の名著 29(--) 後巷説百物語 30(--) 「新しい人」の方へ 32(--) 葉桜の季節に君を想うということ 35(05) インスト−ル 52(--) 博士の愛した数式 60(43) 誰か 83(--) あらすじで読む日本の名著no.2 85(40) 水滸伝12(炳乎の章) 88(--) あらすじで読む日本の名著no.3 97(--) 百の旅千の旅 99(--) 神も仏もありませぬ
『後巷説百物語』『葉桜の季節に君を想うということ』がbk1ランキングに出てこないのは、ネットではすでに購入ピークが去ったためだと考えられる。(【週刊ビーケーワン Vol.158】によると『後巷説百物語』は、2003年11月10日〜11月16日の総合ランキング1位である。)
bk1総合18位の『小説の未来』【bk1(02400938)】や21位の『テクストから遠く離れて』【bk1(02401401)】が紀伊国屋では見当たらないことに注目。
bk1では、文芸書は非常に特異な売れ方をするが、それについては別項で書くつもりである。
[bk1ランキング ジャンル別] を見てもらえば分かるが、芸能・娯楽・スポーツや、ビジネス書、実用書も売れ筋である。
だが、もっと売れるジャンルがある「サブカル・アングラ・エロ」と「女性・ライフスタイル・恋愛」である。
この二つのジャンルは、現在は【Bookうら】【Bookぶら】というセレクトショップになっているのだが、まさかこんなに売れているとは思わなかった。
要するに売れているジャンルだから、セレクトショップになったということなのだろう。
「男性オタク」相手の【Bookうら】が売れるのは当然という気がするが、女性相手の【Bookぶら】が売れているというのは、意外だった。
女性は通販にそれほど抵抗がないので、ネット書店を利用する人も多いのかもしれない。また『エクスタシー』【bk1(02380067)】や『サティスファクション』【bk1(02192439)】が売れているところを見ると、リアル書店で買うのが恥ずかしい本が売れているということなのか。ボーイズラブジャンルが売れているというのと、どこかつながっているのかもしれない。
(2004/02/03)
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