更新日: 2000/05/30
5月20付けの「本屋を支えているのは、1ヶ月に本をたくさん買う本好きの人たち」というのは、書いていて自分でも根拠が気になったので、統計資料などを探してみました。
■統計資料
統計資料としては、次のようなものを見つけました。
・【出版業界ヘッドラインニュース(文化通信)】には以下のような記事があります。
総合読書率、10年間で最低。1年間の書籍代5866円。家の光協会、第53回全国農村読書調査。
(1999-04,1999-04-12,4段,6面)
・【家の光協会】の第53回全国農村読書調査は、上記記事の元になった調査報告。PDFファイルが参照できます。
・【YOMIDASランド この10年】の96年の話題、人気本<国内編>には以下の記事があります。
「読書に関する読売新聞社全国世論調査 「本離れ」止まらず=特集(96/11/06 東京朝刊 特集面 06段)」
■本好きは本屋をささえているか?
さて、「読書に関する読売新聞社全国世論調査 「本離れ」止まらず=特集(96/11/06 東京朝刊 特集面 06段)」のデータを利用して、表を作成してみました。元になったデータは次のようなものです。
=====引用開始=====
◆あなたが1か月に使う本代は、平均していくらぐらいですか。
・1000円未満 21.5 ・4000〜5000円未満 3.5 ・1000〜2000円未満 20.5 ・5000〜10,000円未満 2.4 ・2000〜3000円未満 11.4 ・10,000円以上 1.5 ・3000〜4000円未満 4.4 ・買わない、答えない 34.9=====引用終了=====
1ヶ月の書籍代 | % | G欄(円) | X欄(円) | Y欄(%) |
(a) 1000円未満 | 21.5 | 500 | 10,750 | 7.6 |
(b) 1000〜2000円未満 | 20.5 | 1500 | 30,750 | 21.7 |
(c) 2000〜3000円未満 | 11.4 | 2500 | 28,500 | 20.1 |
(d) 3000〜4000円未満 | 4.4 | 3500 | 15,400 | 10.9 |
(e) 4000〜5000円未満 | 3.5 | 4500 | 15,750 | 11.1 |
(f) 5000〜10,000円未満 | 2.4 | 7500 | 18,000 | 12.7 |
(g) 10,000円以上 | 1.5 | 15000 | 22,500 | 15.9 |
(h) 買わない、答えない | 34.9 | 0 | 0 | --- |
合計 | 100 | 141,650 | 100 |
注:
G欄は、(A)〜(H)までの各層の一人が1ヶ月に使う平均書籍代
X欄は、(A)〜(H)までの各層の人が1ヶ月に使う合計書籍代
Y欄は、(A)〜(H)までの各層の人が1ヶ月に使う書籍代が全体に対して占める割合
1ヶ月の書籍代が1万円未満の人は全体の63.7%で、1ヶ月の平均書籍代は1870円。
1ヶ月の書籍代が1万円以上の人は全体の1.5%で、1ヶ月の平均書籍代は1万円以上。
以下、呼びにくいので便宜上、1ヶ月の書籍代が1万円未満の人たちを「フツーの人」、1ヶ月の書籍代が1万円以上の人を「本好きの人」と呼びますが、「本好きの人」は「フツーの人」の6倍以上も本を買っているわけです。
1ヶ月に使われる書籍代の合計のうち、「本好きの人」たちが使う金額が占める割合は16%です。けれど本好きの人は、全体の1.5%、本を買う人中でも2.5%にすぎないのです。
ここでは「本好きの人」の1ヶ月の書籍代を1万5000円で計算しているのですが、これは少ない方だと思います。私の1ヶ月の書籍代は2万円です。WEBには、1ヶ月の書籍代が5万円だの10万円だのというオソロシイ人たちもいますからね。仮に「本好きの人」の1ヶ月の書籍代を2万円として計算し直すと、「本好きの人」たちが使う金額が占める割合は20%になります。
ということは、乱暴な計算をすれば本屋の客の2.5%にすぎない「本好きの人」たちが売り上げの2割を支えているということになります。
100人しか客がこない店だったら、「本好きの客」の12人の団体さんが新規顧客になったら、売り上げは一気に2倍になるという計算です。そんなばかな!? いくらなんでもそう上手くはいかんだろうと、私も思うんですが、ちょっとは気にしたほうがいいんじゃないでしょうか。
少なくとも「本好きの客」1人を逃すことは、「フツーの客」10人を逃がすことに等しいことは確かです。でも、本屋さんたちはそんなこと気が付いてないですね?
■本好きが認識されにくい理由
他の客の10倍も品物を買う客は「お得意さん」として大事にされるのが普通だと思うんですが、書籍に関してはそういうことは、ほとんどないといっていいですね。なぜでしょう?
ひとつには、書店側が顧客管理をしていないことが挙げられます。メンバーズカードやスタンプカードなどを導入していた書店は、ほとんどありませんでしたから(児童書専門店は例外的に顧客管理を行っていたようです)、お客の個別認識ができない。店の常連客も認識できない。売れている本を見て、客層を想像するのが、せいぜいのところでしょう。
ブックファーストではメンバーズカードを導入したということなので、これからはひとりでいっぱい買う「本好きの客」のことを、書店側も認識するようになるかもしれません。(渋谷のブックファーストのような特異な品揃えの店は、ヘビーユーザーのリピーターが多いと思います)
「本好きの客」が「お得意さん」として認識されにくい理由としては、あまりまとめ買いをしない(してる人もいますけど)ことも挙げられるかもしれません。小額の品物を何回もいろいろな店で購入しているため、トータルではかなりの金額の品を購入しているのに、個々の店ではそれを認識できないのかもしれません。メンバーズカードを導入していればそういう客も把握できるはずなんですが。
以前、「再販制度と書店の常連」を書いたときに、「会員制やクーポンや割引きなどが導入できないのは、本の再販制度のためらしい」ことを知ったのですが、再販制度のためにできないのは「本の本体の割引」だけで、それ以外のサービスのために会員制を採用するのは問題ないとおもうんですけどね。どうなんでしょ?
最終更新日:2001/09/14