インタビューと取材で構成された、竹宮恵子、萩尾望都ら24年組と、ポスト24年組と称される水樹和佳、たらさわみち、花郁悠紀子らについての特集。インタビューが載っているのは、山田ミネコ、ささやななえ、増山法恵、水樹和佳、たらさわみち、伊東愛子、花郁悠紀子。花郁悠紀子さんのページには、「ポスト24年組・最右翼 ファンタジーSFの確立者」というあおり文句が踊っている。
インタビュー内容
《出会い》…
24年組の作品との出会い。
大泉の二人のところに行ったのはたまたま、手紙を出したら来てもいいと言ってくださったからです(笑)。 それが高二ぐらい、ささや先生とも会えた頃です。(《出会い》)
花郁悠紀子の作品を解説した「5つのモチーフ」と実妹の開発明子(波津彬子)、佐藤史生、伊東愛子、坂田靖子、渡辺裕行(プリンセス編集)らのインタビューからなる「インタビュー・コラージュ」 で構成されている。評論としても非常に優れた特集。
「モチーフ1 SF―妖精たちの棲み家へ向かって旅立つ日まで」
”この世ならぬもの”を常に追い求めていた、と花郁悠紀子を評す人がいる。”この世ならぬもの”の自覚は此岸と彼岸の境界線の自覚と同義だ。 例えば”窓”。アナスタシアの許にアーシェラたち妖精が姿を現わす時は必ず窓からだ。窓こそ花郁さんにとって妖精たちの棲み家への通路を意味する。 「フェネラ」においては”次元のさけ目”という形をとっているのはいうまでもない。そういえば「ポーの一族」でエドガーがアランを連れ去ったのもやはり窓であった。 (p.218)
「モチーフ2 窓辺で待つ―空白の時間を生きる女たち」
”待つ”というのも花郁悠紀子にとって重要なモチーフだ。帰らぬ恋人を、あるいは救いの神を、まだ見ぬ恋人を待ち続ける人を花郁さんは描き続けた。 ビートルズのナンバーの”エリナ・リグビー”という曲の一節「夢に住みながら窓辺で誰かを待っている」を思わせる女性を花郁さんは好んで描く。 例えば「マーガレット荘の老婦人」、例えば「夢ゆり育て」...。彼女らが待つのも窓辺だ。彼女らにとって「待ち人」はこの世ならぬ人々なのだ。(p.220)
「モチーフ3 天駆く馬と少年―永遠に向けての疾走」
「モチーフ4 日本的世界へ―失われた時間を求めて」
「モチーフ? 閉じられた物語の群れたち」
花郁さんの自宅で見つかった「鬼花舞い」と題された作品をめぐる数点のスケッチ。
おそらく「緑陰行路」の次の作品になるはずだった作品で「不死の花」「百の木々の花々」の登場人物である万里と千尋の兄弟の能をめぐる葛藤が描かれるはずだった。
「インタビューコラージュ」
・小学校時代は『赤毛のアン』、中学時代はヘッセ、高校時代はSF、晩年は中井英夫、夢野久作に傾倒。
・デビュー前は最初創刊したての『花とゆめ』に持ち込んでいた。
・「シリーズにしてキチッとそろえるのが好きなんですよ」「SFの方でも、そういう(シリーズにした)構想があるのを聞いています。花や宝石をテーマにしてシリーズがありましたが
あれのSF版の話で。色をモチーフにした作品らしいんですけど。」(佐藤史生)
最終更新日:2022/05/10