注:作品名をクリックすると、各作品の紹介にジャンプします。
なお作品紹介では、結末までのあらすじを記してありますので、未読の方はご注意ください。
魔女アーシェラとその相棒のオルバー・ケロムが登場するファンタジック・コメディ。
画面からあふれる花とお菓子と魔法の数々をお楽しみください。
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5歳のアナスタシアは、作家のパパと家政婦さんとの三人暮らし。
ある日、アナスタシアの家のとなりに引っ越してきたのは、金髪メガネのアーシェラさんと、正体不明の二次元的生物(?)オルバー・ケロムと猫ちゃんたち。
このおとなりさんは、とっても不思議な人たちで、指を鳴らせば、猫やポットが空を飛ぶ。
仕事が忙しくてアナスタシアの誕生日すら忘れていたパパさんも、アーシェラさんに諭されて、アナスタシアと一緒にいてあげることの大事さを思い出すのでした。
花郁悠紀子のデビュー作。エブリディ・マジックというか一種のメアリー・ポピンズ物。
テーマやあらすじよりも、アーシェラさんやオルバーや猫ちゃんたちの画面での活躍を見るのが楽しい。
1976年当時の少女漫画は、現在のようなシリアスな異世界ファンタジーというものはほとんど存在せず、
こういったファンタジック・コメディだけが辛うじて描かれていました。
ちなみに1977年には、中山星香が同じような路線の「ヤーケウッソ物語」デビューしています。
1975年第二回プリンセスまんが大賞の佳作入選作(発表は『プリンセス』1975年12月号)。
同時入選に鎌田百合子の「翼のフローリア」。
アーシェラさんたちがアナスタシアのおとなりに引っ越してきてから、一週間。
毎日のように起こる魔法での大騒ぎにアナスタシアはおおはしゃぎ。でも、SF作家のパパさんは、すっかりノイローゼ気味。
アーシェラさんに意見しようとするけれど、話しているうちに亡き妻の「子供に魔法と夢と幸せを教えたい」という言葉を思い出し、
目的を忘れて亡き妻へのラブレターを書き出す始末。
かくして、アナスタシアのすてきな日々とパパさんの受難の日々は続くのでした(笑)。
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なんだかんんだいっても、お隣さんが、「魔法を使う」ということはしっかり認識し、 それでもパニックしないアナスタシアのパパさんって、実は凄い大物なんじゃないかという気がします。(笑)
リオネルは、アナスタシアのいとこです。アナスタシアのパパの妹のマージョリーさんが結婚したケインズさんの息子だからです。
訳あって、アナスタシアの家で一緒に暮らすことになったリオネルですが、新しく母親になったマージョリーさんのことは絶対に「ママ」と呼ぼうとしないし、
女嫌いで、アナスタシアとは喧嘩ばかり。
あまりに喧嘩ばかりする二人は、パパさんに物置に閉じ込められ、ついでにオルバー・ケロムにおとぎ話の本の世界に飛ばされてしまいます。
可愛い子には旅をさせろってことですね。冒険するうちに打ち解けていく、アナスタシアとリオネル。
悪鬼たちに食べられそうになったところをアーシェラに救われ、リオネル君、すっかり素直になりました。
今回のポイントは、おとぎ話のお姫様オンパレードでしょう。花郁さん、お姫様が大好きだったんですね。
リオネル君、育ったらいい男になりそうだ。(笑)
せっかく友達になれたのに、風向きが変わるため、あと2週間でアナスタシアたちとさよならしなければならなくなったアーシェラ。
最後の置き土産として、パパさんに素敵な再婚相手を見つけようと画策します。
でも、クラスメイトに"まま母"の怖さを吹き込まれたアナスタシアは、パパに見捨てられると思って家出をしてしまいます。
オルバとアーシェラは、写真を使ってアナスタシアの亡きママを呼び出し、アナスタシアを無事見つけ出します。
アナスタシアが眠ってしまった夜更け、魔女の正装に身を包んだアーシェラは、こっそりとさよならを告げるのでした。
風向きが変わるといなくなってしまうあたり、やっぱりアーシェラさんは、メアリー・ポピンズ。
ちなみに、オルバー・ケロムは、花郁悠紀子さんの自画像にそっくりです。
街にカーニバルがやってきた。過保護のママに止められて、エディーは屋敷の外にも出られない。
だが、「お行き、ぼうや」という声とともに一陣の風が吹き、エディーは気が付くとカーニバル会場にいた。
カーニバルで会ったのは、不思議な少女アーシェラ。カーニバルをめぐるうち、エディーは独り立ちする勇気を身につける。
すっかり、凛々しくなって帰ってきた息子に過保護のママはうれし泣き。
そして、アーシェラたちチューリップ・カーニバルは、さびしい子供を勇気づけに、また次の街へと向かうのだった。
カーニバルの海賊船やメリーゴーランド、竜と王子の画面は、ディズニー映画に影響を受けたと思われる。 考えてみると、ディズニー映画(『メリー・ポピンズ』や『ピーター・パン』や『白雪姫』)を絵に出来た人って、 萩尾望都と花郁悠紀子ぐらいしかいないんですね。 ただ、綺麗なだけでは、ディズニー映画にはならないんです。動いて、テンポがないと、あの雰囲気は伝わらない。
魔物たちの集会 兼 いとこの結婚式のため、とある街にやってきたアーシェラとオルバ。運よく、女性に一週間だけ部屋を貸すという家を見つける。
マーガレットに囲まれたその"マーガレット荘"の老婦人は、皮肉屋で偏屈。さすがのアーシェラも取付く島がない。
栄養失調で倒れた老夫人を見て、アーシェラは庭のマーガレットの花に訳を尋ねる。
花たちは、老婦人の昔を映し出す。恋人にマーガレットと呼ばれていたこと。その恋人と喧嘩別れしたこと。恋人の息子に生活費を送るため、多額の借金をして、
そのために屋敷を手放さねばならないこと。
老婦人に同情したオルバ達は、魔法を使って、屋敷の権利書を取り戻す。
権利書を手にして、けげんな顔の老婦人を待っていたのは、さらなる奇跡。彼女の恋人の息子ジョシュアが、彼女を訪ねてきたのだった。
おばあさんが主人公というのは、よく考えると少女漫画では画期的なことですね。
構成は拙いと思うけど、大好きなんです、この作品。
これを読んで、モンゴメリのアンシリーズの中の「偶然の一致」「茶色の手帳」(『アンをめぐる人々』村岡花子訳、新潮文庫,1959)と
いった短編を思い出しました。
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最終更新日:2005/05/09