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なお作品紹介では、結末までのあらすじを記してありますので、未読の方はご注意ください。
花郁悠紀子の初のコミックス。
表紙裏のコメントには
「初体験のこととて要領がわからず、不備な点が多いのですが、
読んでくださった方が少しでもこのキャラクターたちを好きになってくれれば
とてもうれしいのですが...」
とある。
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妖精界と人間界、二つの次元が接触してから50年、アシントン各地では、
ふさいだはずの次元の裂け目から、妖精人(エルフィーリ)たちが侵入してくる事件が起こっていた。
クレムリンからの亡命者、アナトリィ・ドニェプロフは、次元の裂け目をふさぐため、アシントン政府に迎え入れられた。
アシントンで、アナトリィは、フェネラと名乗る不思議な少女と出会う。フェネラは、人間の父と妖精人の母を持つ"キクナラエ"であり、
妖精界へ行くことを望んでいた。
フェネラとアナトリィは、カーニバルの団長が次元装置を使って空間に穴を開けていることをつきとめる。
この装置は、エイドリアンという男が団長の父である次元科学者に作らせたものであった。
エイドリアンは、50年前の次元騒動で妖精界へ飛ばされてしまった妻に会うため、
冷凍睡眠をして次元装置が完成するのを待ちつづけていたのだ。
アナトリィは、次元装置を使って、フェネラとエイドリアンを妖精界へ送ることを決意する。
アナトリィの装置により、フェネラとエイドリアンは、妖精界へと送り込まれる。
だが、そのとき、装置を悪用しようとするカーニバルの団長たちもまた妖精界に入り込んでしまった。
エイドリアンは妻と出会えたのもつかの間、悪人たちの放った凶弾に倒れ、
悪人たちは、フェネラの祖父である妖精王によって獣に変えられる。
祖父と対面したフェネラは、自分の母と父の運命を知る。
フェネラとフェネラの父コンラート・ヘイルを人間界へ戻すため、母フェーヌは自らの身を犠牲にしたこと、
人間界へ戻ったコンラート・ヘイルは、不老不死者として生き続けていること。
自分の存在の意味を知ったフェネラは、アナトリィ達とともに生きるため、人間界へ戻るのだった。
花郁悠紀子の初の連載。
短い頁に話を詰め込んだためか、設定が分かりにくい部分があるが、画面いっぱい飛び回る妖精たちは壮観。
特に後半の妖精界の描写がすばらしい。
ファンタジー漫画ばやりの今日でも、妖精界の至福を絵に出来る人は少ない。
やはり花郁悠紀子は、本当のファンタジーを知っている人だったのだと思う。
個人的には、後半にでてくるハルピュイアがとっても好きである。
なお、作者は、フェネラとアナトリィというキャラクターには愛着があったらしく、
のちに「水面に咲く」(『風に哭く』に収録)、「風に哭く」(『風に哭く』に収録)にも脇役で登場させている。
また、イラスト「百花繚乱」(『花宵闇』収録)には、ストーリー後半に出てくる妖精の姫君ウルスラが登場している。
白い馬に乗った妖精の若殿に対して、ウルスラが剣を抜いているとうドラマチックな構図だから、もしかしたら、なにかのストーリーの一部だったのかもしれない。
クラブの歌手エドウィナは、雨の中で、金髪長髪の美少年を拾う。
金髪美少年は、エドウィナの家に居着いてしまい、彼女に惚れているマネージャのレイモンドは気が気ではない。
エドウィナは、少年に2歳のときに死に別れた娘の話をする。娘の名前はフローレンス、美しい金髪の少女だった。
娘の話をしながら、酔いつぶれるエドウィナに少年が尋ねる。「あんたは娘の何を覚えていたの?金髪だったこと?」
エドウィナは答える。「ばかね。わたしはあの子を愛してたのよ。それを覚えているのよ。」
ある日、弁護士がやってきて、彼女の夫だった男が亡くなり彼女に遺産が残されたこと、
死んだと聞かされていた"息子"フローレンスが生きていることを知らされる。
実は、エドウィナは、夫の実家に子供を奪われるのを恐れ、フローレンスを"娘"として育てていたのだが、結局フローレンスは夫に引き取られ、
その後死んだと聞かされていたのだ。
息子に会いにフランスへ行こうとするエドウィナに、金髪の少年が冷たく声をかける。
「フランスへいったってあえないよ」
ここでやっと、エドウィナは金髪の少年がフローレンスであることに気づく。
「僕がわからなかったじゃない?...」つぶやく少年にエドウィナは答える。
「それでもわたしはあなたを愛していたわ。 ―わたしが覚えていたのは、あなたを愛していたことよ。」
金の雨の中でふたりは抱き合うのだった。
なぜか最後の最後まで、肝心のことがわからないオマヌケなエドウィナさん。(笑)
お人好しのマネージャーのレイモンド氏とはいい組み合わせなんじゃないかと思います。
コメディと呼んでいいのかどうかわからないけれど、読み終わったあと、やさしい気持ちになれる佳作。
ある日、エドウィンの家に家政婦がやってくる。
名前はジェラルダイン、ベテランという触れ込みの割には若くて家事が下手で、なぜかエドウィンの妹デライラは彼女を妖精だと信じ込む。
二人の父クリストファーはやもめで、現在祖母に会いに出かけていて留守なのだが、村人たちは、
ジェラルダインをクリストファーの再婚相手だと決め付けてしまう。
実はジェラルダインは、二人の母カザリンの妹で、クリストファーに会いたくてやってきて、家政婦に間違われてしまったのだ。
村人の噂を聞いて飛んで帰ってきた父クリストファー、ジェラルダインが家政婦でないと知って混乱するエドウィン、
結婚祝いに駆けつけた早とちりの村人たち、人々が集まって大騒ぎをしているところへ飛び込んできたのが、
デライラが大木に上ったまま降りられなくなったという知らせ。
慌てて駆けつけるエドウィンたち。だが、手を滑らせて落ちるデライラの前にいち早く飛び出し、彼女を受け止めたのはジェラルダインだった。
誰が見ても間に合うはずのなかったその瞬間、エドウィンは、ジェラルダインの背に妖精の羽根を見た。
結局、ジェラルダインはデライラの看病のために残り、村人たちの噂が本当になるのも時間の問題だとエドウィンは思った。
花郁悠紀子さんの作品のあらすじを書くのはとってもむずかしいです。特にコメディ作品の場合、テンポと絵で読ませてしまうから、うまく話が伝えられない(苦笑)
作者は、この作品や「それは天使の樹」「窓辺には悪魔」「昼さがりの精霊」といったロマンチック・コメディを一種のシリーズものとしてとらえ、タイトルとテーマに妖精・天使・悪魔・精霊といった言葉を入れ、ラストのコマにテーマとなる絵がくるように描いていました。この作品の場合、ラストのコマは、"扉をあける妖精"です。
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最終更新日:2005/05/09