原稿No.199803-10
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【公開講座「現代ファンタジー入門】
井辻朱美氏を講師に横浜朝日カルチャーセンターで行われた公開講座。
《講師のことば》
三回連続でファンタジーの魅力について、お話ししたいと思います。一日目は、時間のファンタジー、二回目は空間のファンタジー、三回目はファンタジーの策略というか、世界観の文学としてのファンタジーをとりあげます。時間のファンタジーでは、比較的古典的な作品、ネズビット、ノートン、ピアスなどを、空間のファンタジーでは『千と千尋の神隠し』やダイアナ・ウィン・ジョーンズなど、現代のファンタジーをとりあげ、そして世界観のファンタジーでは、日常を転覆させるファンタジー独自の力を、枠物語、世界モデルの提示などのファクターをからめて『十二国記』(小野不由美)、『指輪物語』(トールキン)などのハイ・ファンタジーに探ってみます。
以下は、その講座の自分用のメモです。
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2003年8月30日(土)15:30〜17:30
受講者は私も含めて11人。女性ばかりで年代は20代後半から40代ぐらいまで。だいたい児童文学&ファンタジー読みな感じの人達でした。
井辻先生登場。鮮やかな水色のお召し物でした。TVで拝見したより小柄な感じ。
事務局の人がプロフィールを紹介しようとして、あまりの肩書きの多さに絶句し、「時間がもったいないので、あとは講座案内の紹介をご覧ください。」とやる一幕も。
第1回のテーマは、「時間のファンタジー」。
トマス・モア『ユートピア』から始まり、スーザン・クーパー『影の王』に終わるファンタジー作品の年表を資料に、時間のファンタジーというものがどのように生まれ、発展してきたかを眺めてから、フィリッパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』、E.ネズビット『魔よけ物語』、ヒルダ・ルイス『とぶ船』、ネイサン『ジェニーの肖像』、スーザン・クーバー『影の王』などをとりあげて、時間のファンタジーについてのいくつかのタイプ(幽霊譚、時間軸の交錯、観光ツアー、ある時代への哀惜、『バックツーザフュチャー』的家族のトラウマ癒し系)について解説するという講座でした。
年表を見て思ったのは、ファンタジーというのは神話・伝説を除くとメインは旅行なんだなということ。時間のファンタジーというのも旅行のヴァリエーションなんですね。
面白かったのは、幽霊譚も時間ファンタジーの一種として取り上げられていたことで、確かにピアス『トムは真夜中の庭で』なんて幽霊譚のヴァリエーションという気がしますね。
それから、入門講座だからということもあるのでしょうが、作品についてコメントするときには、必ず映像化の話が出てくるのが印象的でした。
1964年の『メアリ・ポピンズ』の映画化によってSFXが一般化されて、その後は映像化された魔法や不思議な事件が当たり前になってしまって、文学としてのファンタジーは不思議な現象/事物を描くことそのものではなく、それを通して人間の内面を描くことにポイントをおくようになってきたという指摘が興味深かったです。
あと脱線話として、ディズニーの三大お姫様物の『白雪姫』『眠れる森の美女』『シンデレラ』はそれぞれ描き方が違っていて、『白雪姫』はグリムタイプで登場人物の着ているものが年代不詳、『眠れる森の美女』は時代を中世に設定して衣装もわりと時代に忠実、『シンデレラ』は王子様が19世紀風だという話が面白かったです。『シンデレラ』は、話のパターンとしては一番古く、中国にも似たような話があって、地域や時代ごとにお色直しされているのだとか。
講座のメインの話はネズビットの『魔よけ物語』でしたが、今は残念ながら絶版なのだそうで。(【ニム】さんは読んでいるんだよねー。うらやましい。)
ネズビットはウェルズと仲が良くって、その作品はC.S.ルイスにも大きく影響を与えているのだそうな。へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜。
いろいろ刺激のある講座でした。ディズニーとファンタジー関係については、自分でも調べてみたいです。
次回は9/13。楽しみ。
講座で取り上げられていた主な本
★は現在入手困難。
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2003年9月13日(土)15:30〜17:30
今回のテーマは「空間(Raum)と場所(Topos)のファンタジー」。
なぜ、ファンタジー講座で時間と空間について扱うかというと、ファンタジーというものは時間と空間をいじるものだから、という前振りに続いて、夢想の舞台となる「場所」についての解説がありました。ファンタジーの舞台になりやすいある特定の「場所」がいくつかあるという話で、たとえば、
城やホテルは、寝食とレジャーの機能を兼ね備えた閉じたひとつの世界を形成している。島もまた、隔離された閉じた世界である。
で、次にファンタジーに関連していそうな空間の思想――風水思想、箱庭療法、ミニアチュールの世界、洞窟と地下世界の夢想、NLP(神経言語生理学)などなどについての解説がありました。
ミニアチュールの世界は、ファンタジーの世界観(第二世界の創造)につながる点があり、NLPは枠物語にもつながるという話でした。
具体的なファンタジー作品のとしては、エレベーターを舞台にした物語としてネズビット「エレベーター=ボーイはだれ?」(『魔法!魔法!魔法!』収録)、博物館を舞台にした物語として、カニズバーグ『クローディアの秘密』とメアリ・シュトルツ『鏡のなかのねこ』が取り上げられました。
今回は参考文献も話題も多く(90分で大学の講義2コマ分の内容)、まだ私の中で消化しきれていません。NLPの話は、なかなか興味深いものがありました。
★は現在入手困難
夢想の舞台となるトポス
風水思想
地下世界
場所のファンタジー
NLP
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今回のテーマは「ファンタジーの仕掛け」。ファンタジーの「あの手この手で、日常のベタ感をひっくり返す方法」について。
ファンタジーを、現実と別世界の対比の観点から、「枠物語」「ハイ・ファンタジー」「サイコ・ファンタジー」に分類しての解説。メインは、「枠物語」と「サイコ・ファンタジー」、特に『メアリー・ポピンズ』と『マリアンヌの夢』でした。
最後に井辻先生から受講者へ「ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(DWJ)を読んだか、どの作品が好きか」という質問がありまして、私が『グリフィンの年』が好きと言ったら「あれ、かわいいですよね〜(←語尾にハートがついてる感じ)」、『わたしが幽霊だった時』も好きといったら「えええ〜っ!? 私はあれが一番苦手で……」とおっしゃってました。
DWJの面白さがよく解らないと、井辻先生はどこかで書いてらしたことがあったので、多分あちこちで、この質問をしていらっしゃるのではないかと想像します。
DWJは形式こそファンタジーだけれど、面白さの半分は、伏線がどう収束していくかというミステリーの面白さだと思うんで、純ファンタジストの井辻先生には理解しがたいところがあるのかもしません。残りの面白さも、ホラーやホラ話の要素が入っているし。
私は好みの根っこがブラウン神父と『光車よまわれ!』なので、ミステリーっぽくてホラーがかっているのも全然オッケーなんですが。
休み時間には、井辻先生の著書の『魔法のほうき』にサインをいただきました。どうやってお願いしようかなーと思ってたんですが、他にもサインをお願いする人がいたので、私も便乗しました。
井辻先生の講義を受けるというのが夢だったので、実現してとても嬉しいです。
枠物語
夢オチ
お話の中のお話
劇中劇
書物の中へ入る
別世界へ行って帰ってくる
エヴリディ・マジック
その他
ハイ・ファンタジー
サイコ・ファンタジー
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