映画『王の帰還』感想

(初版:2004/03/04 改定:2004/03/08)

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[最新日記][2004/03/04の日記]


2004年3月3日に見た『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』字幕版のネタバレ感想です。

冒頭のシーン、誰かと思ったら……。最初はビルボとフロドかとおもっただよ。ああいう美しいシーンをもってこられると、そのあとの展開が悲しいね。ホビットに似た種族だったスメアゴルがボロボロのゾンビみたいな状態を経てゴラム化していく過程が、エグ〜。さすがは、B級ホラー映画出身の監督だと思いましたよ。

エグいといえば、豚顔オークの崩れた顔が何度もアップになるのが、なんとも。豚顔がそんなに気に入ったのか?>PJ 
さすがは『怒りのヒポポタマス』(観てないけどタイトルで内容は想像できる)なんて映画を作った監督だと思いましたよ。

エルフの行列は美しかった。FOTRでは削られていたので、観ることができて嬉しい。
アルウェンが未来を幻視するシーンは良かった。あのシーンのアルウェンはきれいだった。「母」の顔をしていたからかもしれない。フードが顔にかぶさって、なんとなく聖母マリアのイメージ。
ぽっちゃりした巻き毛のお子様はひょっとして、イライジャ似の子が選ばれたかな。イライジャ似だとフロド=キリスト、アルウェン=聖母マリアという意図がはっきりするんだけど。

メリピピの別れのシーンがよかった。状況がわかっていないピピンと、もう二度と会えないかもしれないと覚悟を決めるメリー。メリーは賢いからね。物見櫓をかけあがっていくところで涙。

デネソールはあんまりだ……。本当はものすごく有能でそのために自滅しちゃった人なのに。
ボロミアの死を聞いて、思わず仕官を申し出るピピン。ピピンはボロミアに一番懐いていたから、彼のために何かしたいと思う気持ちはよくわかる。でもその相手があんなだったなんて。不憫すぎる〜。

烽火のシーンはすばらしかった。
でも、デネソールからの要請じゃなくて、ガンダルフがピピンにやらせたのが発端なわけで、いいのかなーとちょっと思った。デネソールが内心は援軍を期待しているけれど、依怙地になって却下したみたいな演出があればよかったんだけど。
セオデン様はかっこいいっ!  観ていて「セオデン様ぁぁぁ!」と心の中で絶叫すること数回。ここと、戦場での演説シーンと、死の場面ね。

ピピンが歌うというので、戯れ歌かと思ったら、真面目で悲壮な歌でしかも思いがけず良い声だったので驚いた。でも隣でデネソールがくちゃくちゃと意地汚く食ってて、ピピンが情けなさそうに泣いているのが不憫じゃ〜。

デネソールのあの食べ方の表現はなんなんだろう。
多分、ストレスからくる過食だと思うんだけど。安らぎを求めて食べ物をむさぼり食らうけれども、満たされない(当然だ)。
そういう表現をあそこで持ってくるってことは、PJか脚本家の誰かが、過食になったことがあるってことなのかしら。PJなら充分あり得そうだし、あとの二人も過食症やっていてもおかしくないような雰囲気があるし。(摂食障害障害はバイタリティーがあって完全主義な人がなりやすいらしい)

剣をもってきたのが、エルロンドだったのが意外。アルウェンかと思ったのに。娘が死にそうだから態度豹変というのは、苦し紛れの脚本だろうけど、気持ちはわかるのでOK。

エオウィンは案外悲壮感がなかった。原作ではアラゴルンに振られて死ぬつもりだったみたいだけど、映画ではアラゴルンが死者の道に行っちゃったから、自分が王を守らねばと思ったのかなという感じ。

ガンダルフがピピンに語る「銀色のガラス」うんぬんのモトネタは原作のどこに出てくるのかな? エンドロールの歌(エンヤじゃなくてアニー・レノックス "Into the West"だそうな)の歌詞にも使われていましたが。
(追記:原作の『王の帰還』のラストの方と『旅の仲間』のトム・ボンバディルの家でフロドが見る夢として出てくるようです)

エオウィンはメリーにあっさり正体を明かしちゃったけど、まあいいでしょう。両手の剣で、ジュウの足を切ったりしてカッコイイ。
「私は人間の男ではない!」というシーンがイメージ通りだったから、満足。

死者の道のみなさんは、ディズニーランドのホーンテッドマンション状態。

やるぞ、やるぞと期待してみていたら、やっぱりあった、レゴラスのアクロバット。「まとめて一人」には笑いました。

高い高いまっすぐ階段でのフロドとサムの別れはちょっとサムが可愛そうだけど、TTTのサムが疑り深くて厭な奴という印象があったから、あれぐらいやらないとバランスがとれなかったのかも。でも、シェロブとの大立ち回りがあったりと、大活躍じゃん。

サムがフロドに指輪を返すシーン。あれがあるからこそ、ラストの言葉が生きるというか。

火口でのシーンは、FOTRのイシルドゥアとエルロンドのシーンをなぞっているんだね。

透明フロドとゴラムの格闘シーンが長いぞ。
原作のイメージだと、指輪はめた、どっかからゴラム登場、ふいをついてガブッ、取った、ばんざーい、ばんざーい、おととぉ、落下、いとしいひとぉぉぉ、と割とあっという間という感じがしたんですが。あんなに長く格闘していると、ああやっぱりフロド、染まっちゃったんだなぁ……と悲しくなるのであります。

溶岩の中のサムとフロド。美しい……。涙。

フロドが目覚めるシーンは、FOTRの裂け谷のシーンと対比させてるのかもしれない。
あのときのフロドは無垢だったけれど、今はそうではない。ガンダルフはもはや灰色ではない。あのときいなかったギムリとレゴラスが友人としてやってくる。 アラゴルンはいまや王様だ。メリピピだけは変らないけれど、ちょっと背がのびたかも。そしてサムは心配そうな従者ではなく、生死を共にした対等の存在としてフロドに微笑みかける。

王の手は癒しの手のシーンがないですよ。悲しい〜。SEEに期待だ。

王様のお歌もアルウェン登場もキスシーンもなんだかなぁ……。
アルウェン登場は唐突だけど、原作もあんな感じだからワタクシ的には無問題――どうでもいいし。アルウェンはあんまりきれいじゃなかったけど、エオウィンがきれいでよかった。

他の方々が盛装なのに、ホビットの4人が地味な服なのが気になりますが、あそこはホビットはホビットであらねばならないから、ゴンドールやローハンの服を着ちゃいけないんだよね。で、地味な服のホビットに群集がざざざざざ〜と跪くのが壮観。涙。

ホビット庄に帰ってくるときは着飾っているのね。あのシーンもFOTRのガンダルフ登場シーンと対比させてある。

酒場での、以前と変らない平和でお気楽なホビットたちの様子に、4人がなんともいえない表情でエールを飲み干すのが印象深い。あのシーンを見て、ベトナム帰還兵たちのことを考えた。
カットされてはじめて「ホビット庄の掃討」の意味がわかった。原作を読んだときはどうしてあんな蛇足のようなエピソードがついているのか不思議だったのだけれど、トールキンは書かずにはいられなかったのだろう。あのエピソードがなければ、ホビット庄のホビットたちは、フロドたち4人の真価を知ることはなかったのだ。映画ではせめてもの代わりということか、サムが意を決してロージィのところへ(プロポーズをしに?)行くのだが。

灰色港のシーンまできっちりやるとは思わなかった。所詮ハリウッド映画だしなぁと思っていたら、しっかりフロドも乗るんだもんなぁ。やられました。
船に乗ったフロドの笑顔が悲しい。フロドの笑顔をいつから見ていなかったんだろう。涙。こうなることは、わかってたんですけどね。そういえば、私ってっば、最初にFOTRでフロドがガンダルフの馬車にかけよるところから泣いてたし。

ラストは、サムのあの言葉で終わるとは! 脱帽。

エンディングロールの歌は、フロドの旅立ちの歌なんだろうけど、ちゃんと映画を観終えた観客に向かっての歌でもあるのね。
ボロミアが一番最後だったのですなぁ。

後ろの席のお嬢さんがた(見る前は「あたし、ハリーポッターが見たいのよねぇ。」とのたまっていました)が、「まさかサムで終わるとは思わなかった」「ほんとはサムが主役だったんだね」と口々にいいあっていました。
いや、ほんと、いつの間にかサムが主役に。多分、指輪をフロドに返したときに、こうなることが決まったんだなと。

ともあれ、最後までちゃんと描ききってくれた。ピーター・ジャクソン監督とスタッフに感謝。それからアカデミー賞受賞おめでとう。

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※このページの背景素材は【Silverry moon light】からお借りしました


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By 有里 alisato@anet.ne.jp
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