映画『ロード・オブ・ザ・リング』感想
(2002/03/14)
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映画『ロード・オブ・ザ・リング』日本語吹替版の感想を思いつくままに。詳しい内容にいろいろ触れていますので、映画未見の方はご注意ください。
なお、筆者は評論社旧版・新版・追捕編は読了済み(瀬田貞二訳は好きだが「ですます調」には違和感あり)、『シルマリルの物語』は未読、原書も未読、1979年のバクシによるアニメ版はロードショーで見ました。指輪ファンとしては、薄い方です。
- 字幕版の評判があまりにも悪いので、わざわざ吹替版を見に行きました。吹替版で見てよかったと思います。割と瀬田訳を踏襲した格調高い台詞が多かったように思います。「ゴグリ」が「ゴラム」だったり、「馳夫」が「韋駄天」だったり、「野伏」が「さすらい人」だったり、「ひとつの指輪はすべてを支配し」だったりしましたが、耳で聞く分にはそのほうが分かり易いし。声優さんもお上手で、ほとんど違和感がありませんでした。サムはちゃんと「フロドさま」って呼んでましたし。
- 冒頭の語りの部分、語り手はガラドリエル様なのね。
人間たちについて説明がずいぶんな言われようだと思ったけど、エルフ視点からすればあんなものか。「ひとつの指輪はすべてを支配し」は、耳で聞く分かりやすさを重視すれば、妥当な訳でしょう。
- ホビット庄はイメージ通り。のどかで美しい。映画が始まったばかりだというのに、ガンダルフが村に入るシーンで泣いてしまう。ばかみたいだ。でもこの先に待っているものを思うとね……。
物語が終わったとき、このなんでもない風景がどれほど大切で貴重なものだったかが分かる。物語の行く末を知っている者は、この平和な情景が少しでも長く続いて欲しいと思ってしまう。原作の序盤が長いのは、つまりそういうことなのだと思う。
- ホビットの穴は居心地がよさそう。ビルボはイメージ通り。その他の、ホビットもいかにもホビットだ。ちゃんと裸足だし、足大きいし、足の甲に毛が生えてるしー。ホビット娘もホビットらしくて、しかも可愛い。フロドは顔が良すぎる感じもしますが、まあいいよね、主人公だしー。首が太くていかにもホビット的体型なのは、なにか特殊メイクをしているのだろうか?
- 原作を読んでいても区別のつかなかったメリーとピピンですが、映画を見て区別がつくようになりました。おっちょこちょいであごがとがっていて黒っぽい方ががピピンで、少しだけ分別があって、ぽっちゃり気味で茶色い方がメリー。
(【うさぎ屋】さんの【映画『ロード・オブ・ザ・リング』原作未読者用 FAQ】は、既読者にも便利)
- 黒の乗り手の現れるシーン、素敵。でも、このシーンって、バクシのアニメの演出を踏襲していると思う。キャラクターがあまりにもアメリカーンで、ファンには評判の悪いいバクシのアニメ版『指輪物語』ですが、風景とか演出はそれほど悪くないんだよね(終わり方は最悪だけど)。 中でも黒の乗り手の現れるところから、躍る小馬亭での出会いのあたりは、非常に良く出来ていて、その辺りをこの映画でも上手く取り入れていると思います。
- アラゴルンはカッコええっ!
でも折れた剣が出てくるシーンで、ボロミアと区別がつかなかったのはヒミツだ(笑)
- 問題のアルウェン姫登場のシーン。原作では影薄くて、いきなり出てきてアラゴルンをかっさらっていく女というイメージが強いので(追補編を読んで一応納得はしたが)、これぐらい印象が強いほうがいいだろうとは思うのです。でないとエオウェン姫の立場がないし。だから、ああいうキャラクターになるのはいいんだけど……。でも、でも、リブ・タイラーって全然エルフ乙女って感じじゃないんだもの。ほとんどロムラン星人のお嬢さんのようです。(エンタープライズに乗ってサービック役でもやってろって感じ。)
あれを「夕星(ゆうづつ)姫」と呼べというのか? ドレス着せてボカシかけておけば、まだなんとか見れますが、でも、気品がー、気品がー。(涙)
- ガンダルフとサルマンの魔法でのド突き合いはいかがなものかと思ったよ。じじいプロレス? あんなところで金と時間を使うくらいなら、ロリエンのシーンをもう少し丁寧に描いて欲しい。
サルマンのストレートヘアは素敵。傲慢ぶりも素晴らしい。
「木を全て引っこ抜け!」っていっているシーンがしっかり入っていて、これは後々のエントの登場への伏線ねと思った。
- オーク怖い。べとべとでろでろしているのは、やめて欲しい。
- レゴラス、長生きの割には短気じゃないの。(笑)
レゴラスのイメージはオッケーだ。特に動いているところ。大活躍だよね。弓に矢をつがえる動作の素早いこと、素早いこと。かっこいいーっ。
- 「僕がいきます!」って言うフロド、カッコいい。でも原作にあったビルボの出番がぁ……。まあ、こうでもしないと主人公の影が薄くなっちゃうからね。
でも「若者」には辛い任務だと思う。『指輪物語』って主人公が成長する話じゃないんだよね。いや、成長する連中もいますが、主人公にとっては得るものより失うものの方が多い旅なんだもの。主人公の年齢設定を「中年」ではなく「若者」にしたので、痛ましさが増したというか。
- 「私の弓を!」「斧を!」のシーンって原作にはなかったのね。家に帰って原作を読み返して知りました。エルロンドの会議ってなぜかあまり印象になくて。旅の仲間の選出って、原作では思ったよりも淡々と行われるのですね。(それに裂け谷に何ヶ月も長逗留してたり……。さっさと旅立てや(笑))
- モリアの入り口でのメリーの手柄がフロドの手柄になってるー。まあ、主人公ですから。でも沼に石を投げたのは原作ではボロミアなのに、ホビットの仕業になっているー。これで井戸のドボーンまであったら、ホビットはまるっきりの足手まといではないですか。ひどい。もっともメリーとピピンには名誉挽回のチャンスがあるけど、ボロミアにはないからね。ここでボロミアがバカをやったら、いくら最後に奮戦してもとり返しがつかないほどいやな奴になってしまうからかも。
- 原作では最初の頃に出てくる(出発前だっけ?)、ある重要な会話がモリアの広間でのシーンで出てくるのに注目。良く考えてありますねぇ。
- ゴグリは吹き替え版でも「ゴラム」と呼ばれているけれど、ちゃんと「いとしいシとぉ……」と言っていました。
- レゴラスは本当にかっこいいのだ。
フロドがやられたのを見て、敵にとびかかっていくメリーとピピンも偉いぞ。
- バルログってああいうデザインだったのか。まるでデーモンなんですが……。バクシのアニメ版のイメージが頭にあったので、戸惑う。でも炎の鞭を持っているのは原作通りなのか。ガンダルフはカッコ良かった。
- ロリエン(やっぱり「ロリアン」じゃなくて「ロリエン」の方がイイ)の美術は素晴らしい。アラン・リーを引っ張り出したっていうのは大手柄。
森に入るときにギムリが「この森には魔女がいる」云々といっていたので、ガラドリエル様の実物に会って一転して崇拝者になってしまうことへの伏線かなと期待していたのだけれど、そういうシーンが全然なくて残念。
- ガラドリエル様はアラン・リーのイラストのイメージに近いのだが、アップで写すときには、もうちょっとなんとかして欲しかった。化粧かCGで皺を消すとかボカすとか。
水鏡のシーンの演技なんて、まるっきりの悪者みたいです(涙)。わざと仲間割れさせようとしているみたいじゃない。台詞にも高貴さが感じられなくて、あんなのガラドリエル様じゃないやい(涙)!
旅の仲間たちが心の中を見透かされるというようなシーンもちゃんと描いて欲しかった。
- ミスランディアを悼む歌はアニメ版の方がよかったと思った。
- 贈り物を渡すシーンぐらいちゃんと見せろーっ!!
ギムリが贈り物を辞退して、ガラドリエルの髪を一筋欲しがる場面は絶対必要。このままではドワーフは粗暴な奴というイメージでしかないではないの。
でも皆さん、さりげなく衣装が変わってます。レゴラスの弓が変わっているのを確認。
- ボロミアご乱心からフロドがひとりで出発するところまでで、「あれ?」と思う個所がいくつか。原作を調べてみたら、微妙に変わってました。(メリーとピピン関係ね)
細かいところを忘れたかと思ったけど、案外覚えているもんですね。
- 水の中を必死になって追いかけてくるサム・ギャムジー萌え〜。
いろいろぶーたれてますが、エルフ女性をもっと美しく撮って欲しかったというのと、チャンバラ場面を短くしてロリエンのシーンを丁寧に撮って欲しかったという点を除けば、かなり頑張った作品だと思います。続きもおおいに期待。
吹替版のスタッフロールで、エルフ語指導という項目を発見。確かに必要ですよね、吹替え用のエルフ語発音指導。日本にもそいうことができる凄い人がいるのだなと思っていたら、アーサリアンや指輪サイト関係者の間でも有名な方だったのですね。
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※このページの背景素材は【きんぽうげの部屋】からお借りしました
By 有里 alisato@anet.ne.jp
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