.Date: Thu, 14 Oct 1999 Subject: 和製ファンタジーについて はじめまして、なみおかといいます。 ここ数日、貴Webページからのリンクをたどって私のWebページ【日々是好日!】に 来られる方が多いようなので気になって確認してみましたところ 日記において興味深い内容について書かれていましたのでメールをお送りしました。 和製ファンタジーの起源についてなのですが、 私見ではありますがその要素として 【翻訳ファンタジー】【RPG】【コンピューターRPG】の3つがあると考えています。 【翻訳ファンタジー】起源の和製ファンタジーとしては 79年の【グイン・サーガ】(栗本薫 ハヤカワJA)がその初期のコナンを意識したスタイル からも顕著な例として考えられますが、作者自身があとがきやハンドブックのインタビューで 【美獣シリーズ】(高千穂遥)に触発されてと言及しています。 また、【グイン・サーガ】自体も初期の数年以降は徐々に世界観などがシフトしていった ので日本型のファンタジーとして後発の作品に影響を与えているかもしれません。 このタイプのファンタジー小説としては他に【風の大陸】(竹河聖 富士見ファンタジア文庫) などもあげられると思います。 【RPG(テーブルトークRPG)】起源としては広く認識されたものとしてはTRPG よりもむしろTRPGの【ファイティング・ファンタジー】を下敷きとして84年に発表された 【火吹山の魔法使い】(スティーブ・ジャクソン 現代教養文庫)をスタートとして 広がった「ゲームブック」の方が代表的かもしれません。 当時小学生だった私の周りでも一時的ですが相当数の人間がゲームブックを楽しんでいました。 また日本製RPG起源のファンタジー小説としてはグループSNEのRPG【クリスタニア】 を下敷きとした88年の【ロードス島戦記】(水野良 角川文庫)がルーツであると 言ってよいと思います。 【コンピューターRPG】起源ですが、パソコンではウィザードリィやウルティマがありますが、 一般に広く浸透したケースとしてはファミリーコンピューター用として発売された 86年の【ゼルダの伝説】同じく86年の【ドラゴンクエスト】があげられると思います。 ファミコンのRPGとしては【ハイドライド・スペシャル】というパソコンからの 移植作品もほぼ同時期に発売されていますが、こちらは当時の話題性からもあまり 大きな影響を及ぼしていないと考えることもできます。 最後に日記で言及されていました、前田珠子さんとひかわ玲子さんの和製ファンタジー においてのポジションですがひかわ玲子さんの【エフェ&ジーラ】(大陸ノベルス)が 88年の12月、前田珠子さんの【聖獣復活譚】(集英社文庫コバルトシリーズ)が89年の 1月で発表された年代としてはやや後半に位置づけられるようです。 私個人の認識ではひかわ玲子さんや前田珠子さんは女性読者層にファンタジー、特に 異世界ファンタジーを持ち込んだ作家というように考えています。ひかわ玲子さんは ファンタジー小説家として成立した作家、前田珠子さんはコバルト(少女小説界)に 異世界ファンタジーを持ち込んだ作家と認識しています。 これらの作品にさらにいくつかの作品を加えたタイムテーブルを示すと以下のようになります。 79.05 「グイン・サーガ」がSFマガジンに掲載(栗本薫 小説) 84.12 「火吹山の魔法使い」の翻訳版が発売(スティーブ・ジャクソン ゲームブック) 86.02 アクション要素の強いRPG「ゼルダの伝説」発売(ファミコン) 86.03 「ハイドライド・スペシャル」ファミコン移植版が発売(ファミコン) 86.05 コマンド型RPG「ドラゴンクエスト」発売(ファミコン) 86.08 「アルスラーン戦記」が角川ファンタジーフェア作品として発売(田中芳樹 小説) 86.12 ウィザードリィ型のダンジョンRPG「ディープ・ダンジョン」発売(ファミコン) 87.12 「ウィザードリィ」ファミコン移植版が発売(ファミコン) 88.04 「ロードス島戦記」発売(水野良 小説) 88.12 「エフェ&ジーラ シリーズ」発売(ひかわ玲子 小説) 89.01 「聖獣復活譚(前編)」発売(前田珠子 小説) 89.11 「破妖の剣 漆黒の魔性」発売(前田珠子 小説) 相互関係としては 海外FT−−→影響下にあるFT作品 | | ↓ | TRPG |後に対抗意識 | | ↓ ↓ ゲームブック−−→潜在的なコンピューターRPG市場成立−−→影響下のFT作品(ヤングアダルト初期) | ↑ | |対抗意識 ↓ | 日本でTRPGが広く認識され始める−−→RPGの起源としてのプライド−−→影響下のFT作品 みたいな感じになると思います(実際はより相互に影響を与えあっているようですが) 私自身はファンタジーを認識したのは翻訳ファンタジーからではなく、 ゲームブックやコンピューターゲームからでした。 それらによって私の中ではファンタジー世界(特に剣と魔法の世界)がある意味お約束の世界として 認識されるようになったみたいです。 ソフトバンク社から【RPG幻想辞典】という武器・魔法・モンスターなどの設定を網羅した資料集の 先駆けとなった本が出版されたのもこの頃でした。 なお、タイムテーブルで示した角川ファンタジーフェアについては こちら(http://www.tennodai.com/~nob/highend/road01.html) のWebページで詳しく書かれています。こちらを見る限り日本スタイルのファンタジー小説を決定づけた 第一のターニングポイントといえるかもしれません。 最後にファンタジーの起源についてではなくコバルト文庫のリストについてですが、 TRC(http://www.trc.co.jp/trc-japa/index.asp)のWebページの新刊書籍検索で 書名にコバルトと入力して検索すると約2000冊程度の発表逆順の一覧が表示されます。 最初期の作品については網羅されていませんが、ある程度役立つと思います。 また同様の方法で他のいくつかの文庫についても調べることができます。 一部ソースを再確認していないので怪しい部分もあると思いますが、私の中でのファンタジー起源 はこのような感じです。 突然の長文失礼いたしました。それではm(_ _)m -- Name : なみおか (Namioka) WebURL : http://www2.justnet.ne.jp/~n.namioka/ |
有里からの返信(一部抜粋) |
和製ファンタジーについての考察どうもありがとうございます。 翻訳ファンタジーについては、元になる作品が「ヒロイック・ファンタジー」 なのか指輪物語系のいわゆる「ハイ・ファンタジー」なのかで、少々扱いが異なる のではないかと思っています。 「ヒロイック・ファンタジー」はSFからの流れで、「ハイ・ファンタジー」は、 神話・伝説からの流れにつながるような気がします。 ただ、ライトノベル(特に少年向け)の場合は、直接「ハイ・ファンタジー」から 影響をうけたものは少なくて、RPG経由で影響を受けたものが、多いのかもしれません。 ゲームブックというのは盲点でした。コンピュータRPGの前にそういうものがあった のをすっかり忘れておりました。 『ゼルダの伝説』『ドラクエ』が86年、角川ファンタジーフェアが86年というこ とは、和製ファンタジーに関しては、86年が第一のターニングポイントで、88年 ごろから少女層(と一般層)にまで浸透していったと見るのがいいようですね。 |
http://www2r.biglobe.ne.jp/~alisato/diary/