ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の『スリーピー・ホロウ』を観る。いやもう前評判どおり。素晴らしい。 幻想文学ファン必見。夜の映像はビデオになると暗く映るのが常なので、劇場でその美しさを賞玩するが吉。 青と黒、あるいは白と黒の夜の色彩がもう美しいのなんのって。
さて、物語。
時は1799年。3つの首なし死体が発見されたというスリーピー・ホロウの村にニューヨーク市警の刑事イカボット・クレーンがやってくる。村人たちは殺人は首なし騎士の亡霊の仕業だと噂していた。そして「科学的な捜査」を始めるイカボットの前にも、実際に首なし騎士が現れる。父を殺されたマクバス少年と地主の娘カトリーナの協力で真相を追うイカボットだが……。
ジョニー・デップ演じるイカボット刑事はときどきコミカルで雰囲気としては洋装をした金田一耕介。
助手をつとめるマクバス少年(マーク・ピッカリング)は、少年探偵団としかいえないような容貌で私はずーっとココロの中で「小林少年」と呼んでいました。
陶器のようなおでこも美しい地主の娘カトリーナは、『アダムズ・ファミリー』のウェンズディ(クリスティーナ・リッチ)。
目をつぶると萩尾望都『ポーの一族』のメリーベルみたいなんです。可愛いー。
実は美少女はカトリーナ以外にも二人出てきて、もうワタクシのツボ押されまくりー。
映像は息を呑むほど美しいです。特に森の中の夜のシーン。首が飛んだり血が飛んだりするところはえぐいですがー、全然怖くはないです。ストーリーももちろん面白いです。サスペンスとスペクタクル。
で、とりわけ注目していただきたいのが色彩です。ティム・バートン映画においては色彩は非常に重要です。
彼の作ったどの映画でも同じですが、一番重要なのが黒、ティム・バートンがもっとも愛する死と安らぎの色。
そして白、祝福された乙女の色、救いの色。彼の作品に出てくる「あこがれの君」の少女たちは、みな金髪で白いドレスで登場するのです。(白を着ていない少女は「あこがれの君」ではなくて、ティム・バートンの分身です)
赤は不吉な色、血の色、破滅をもたらす色。『ビートル・ジュース』でも『シザー・ハンズ』でも赤を着た者が凶事をもたらしたのです。
というようなことを念頭において色を追いかけていくと、なかなか興味深いです。
『スリーピー・ホロウ』ではこの3色にさらに青が加わるようです。
以下は『スリーピー・ホロウ』の色彩についてのネタバレ考察。
赤が不吉な色だっていうのは、イカボットの回想シーンの赤い扉でも明白でしょう。
あれの向こうにあるものは、さらに赤いアレですからね。「鉄の処女」ってのがすごく意味深。
バートン映画では赤は常に血とエロスとに結びついていて、忌避すべきものであるようです。
村を去ろうとするイカボットが眠っているカトリーナに掛けてやる上掛けもまた赤なんですね。
そういえばカトリーナのマントには赤い薔薇が刺繍してあるのです。「おんやー?」と思いましたが、これは赤ニシンだったようです。
ニューヨーク市長の服の襟も赤でした。
それから、首なしの騎士が「首なし」になるきっかけを作ったふたりの幼い少女が着ているドレスが、ピンク(白+赤)なのにも御注目。
青は魔力の色かなぁ? イカボットのおかあさんの服が青。 カトリーナが何やら薬をつくっているときの服も青みがかった色です。
真犯人が最後に着ている服が赤じゃないのが残念ですが、あれは結局あの人が闇の眷族だからということなのかしら?
ラストシーン、カトリーナが「白と黒」の服を着ているのは、彼女がもはや「あこがれの君」じゃなくてイカボットの伴侶である証です。そして彼らが歩くニューヨークの街は雪景色。祝福の白!
すっかりハマってます。映画の内容紹介だけでなく、壁紙やらスクリーンセーバーやらもダウンロードできます。丸ごと保存したら映画パンフレットは必要ないかも。
スクリーンセーバーは、パソコン画面の右から左へ奇怪な怪物のシルエットがゆらゆらと移動していくというもの。「キィーキィー」というなにかが軋む音つきです。映画観た人ならお分かりでしょうが、あの男の子が持っていたアレです。あのショッキングなシーンの直前に出てきたアレ。
壁紙はジョニー・デップやクリスティーナ・リッチのスチール写真のほかに、パンフレットの表紙にもなった首なし騎士の絵やらスリーピー・ホロウの風景などがあります。試みに首なし騎士の絵を壁紙にしてみましたが、キョーレツすぎて落ち着かないので撤去しました。(ちなみに現在の壁紙は、自作のピンクのチェック模様)
音楽もダウンロードできるはずなんですが、私のブラウザではうまく聴けません。悲しい……。
By 有里 alisato@anet.ne.jp