花郁悠紀子・単行本解説
* アナスタシアとおとなり(文庫版) *


【書誌情報】

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秋田書店 秋田文庫, 2000.08.10, ISBN4-253-17564-3
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【収録作品】

注:作品名をクリックすると、各作品の紹介にジャンプします。(極力ネタバレにならないようにしています。)
コメントは、コミックス版のコメントを一部修正して使用しています。

【解説】

魔女アーシェラとその相棒のオルバー・ケロムが登場するファンタジック・コメディ。
画面からあふれる花とお菓子と魔法の数々をお楽しみください。

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1. アナスタシアのすてきなおとなり

【初出】ビバ・プリンセス 1976年 春季号
頁数:32頁
【コメント】

5歳のアナスタシアは、作家のパパと家政婦さんとの三人暮らし。
ある日、アナスタシアの家のとなりに引っ越してきたのは、金髪メガネのアーシェラさんと、正体不明の二次元的生物(?)オルバー・ケロムと猫ちゃんたち。 このおとなりさんは、とっても不思議な人たちで……。

花郁悠紀子のデビュー作。エブリディ・マジックというか一種のメアリー・ポピンズ物。
テーマやあらすじよりも、アーシェラさんやオルバーや猫ちゃんたちの画面での活躍を見るのが楽しい。
1976年当時の少女漫画は、現在のようなシリアスな異世界ファンタジーというものはほとんど存在せず、 こういったファンタジック・コメディだけが辛うじて描かれていました。 ちなみに1977年には、中山星香が同じような路線の「ヤーケウッソ物語」デビューしています。

1975年第二回プリンセスまんが大賞の佳作入選作(発表は『プリンセス』1975年12月号)。 同時入選に鎌田百合子の「翼のフローリア」。

【登場人物】

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2. アナスタシアのすてきな一週間

【初出】プリンセス 1978年 6月号
頁数:35頁
【コメント】

アーシェラさんたちがアナスタシアのおとなりに引っ越してきてから、一週間。
毎日のように起こる魔法での大騒ぎにアナスタシアはおおはしゃぎ。でも、SF作家のパパさんは、すっかりノイローゼ気味。 アーシェラさんに意見しようとするけれど……。

なんだかんんだいっても、お隣さんが、「魔法を使う」ということはしっかり認識し、 それでもパニックしないアナスタシアのパパさんって、実は凄い大物なんじゃないかという気がします。(笑)

【登場人物】

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3. アナスタシアのすてきないとこ

【初出】プリンセス 1978年 7月号
頁数:35頁
【コメント】

リオネルは、アナスタシアのいとこです。アナスタシアのパパの妹のマージョリーさんが結婚したケインズさんの息子だからです。 訳あって、アナスタシアの家で一緒に暮らすことになったリオネルですが、新しく母親になったマージョリーさんのことは絶対に「ママ」と呼ぼうとしないし、 女嫌いで、アナスタシアとは喧嘩ばかり。
あまりに喧嘩ばかりする二人は、パパさんに物置に閉じ込められ、ついでにオルバー・ケロムにおとぎ話の本の世界に飛ばされてしまいます。

今回のポイントは、おとぎ話のお姫様オンパレードでしょう。花郁さん、お姫様が大好きだったんですね。
リオネル君、育ったらいい男になりそうだ。(笑)

【登場人物】

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4. アナスタシアのすてきなさよなら

【初出】プリンセス 1978年 8月号
頁数:35頁
【コメント】

せっかく友達になれたのに、風向きが変わるため、あと2週間でアナスタシアたちとさよならしなければならなくなったアーシェラ。 最後の置き土産として、パパさんに素敵な再婚相手を見つけようと画策します。 でも、クラスメイトに"まま母"の怖さを吹き込まれたアナスタシアは、パパに見捨てられると思って家出をしてしまいます。

風向きが変わるといなくなってしまうあたり、やっぱりアーシェラさんは、メアリー・ポピンズ。
ちなみに、オルバー・ケロムは、花郁悠紀子さんの自画像にそっくりです。

【登場人物】

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5. チューリップ・カーニバル

【初出】プリンセス 1976年 7月号
頁数:27頁
【コメント】

街にカーニバルがやってきた。過保護のママに止められて、エディーは屋敷の外にも出られない。 だが、「お行き、ぼうや」という声とともに一陣の風が吹き、エディーは気が付くとカーニバル会場にいた。
カーニバルで会ったのは、不思議な少女アーシェラ。カーニバルをめぐるうち、エディーは独り立ちする勇気を身につける。

カーニバルの海賊船やメリーゴーランド、竜と王子の画面は、ディズニー映画に影響を受けたと思われる。 考えてみると、ディズニー映画(『メリー・ポピンズ』や『ピーター・パン』や『白雪姫』)を絵に出来た人って、 萩尾望都と花郁悠紀子ぐらいしかいないんですね。 ただ、綺麗なだけでは、ディズニー映画にはならないんです。動いて、テンポがないと、あの雰囲気は伝わらない。
この作品のアーシェラさん、若いーっ。

【登場人物】

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6. マーガレット荘の老婦人
  まーがれっとそうのろうふじん

【初出】ビバ・プリンセス 1976年 夏季号
頁数:35頁
【コメント】

魔物たちの集会 兼 いとこの結婚式のため、とある街にやってきたアーシェラとオルバ。運よく、女性に一週間だけ部屋を貸すという家を見つける。
マーガレットに囲まれたその"マーガレット荘"の老婦人は、皮肉屋で偏屈。さすがのアーシェラも取付く島がない。
栄養失調で倒れた老夫人を見て、アーシェラは庭のマーガレットの花に訳を尋ねる。

おばあさんが主人公というのは、よく考えると少女漫画では画期的なことですね。
構成は拙いと思うけど、大好きなんです、この作品。
これを読んで、モンゴメリのアンシリーズの中の「偶然の一致」「茶色の手帳」(『アンをめぐる人々』村岡花子訳、新潮文庫,1959)と いった短編を思い出しました。

【登場人物】

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7. わが愛しのフローレンス
  わがいとしのふろーれんす

【初出】ビバ・プリンセス 1977年 冬季号
頁数:40頁
【コメント】

クラブの歌手エドウィナは、雨の中で、金髪長髪の美少年を拾う。 金髪美少年は、エドウィナの家に居着いてしまい、彼女に惚れているマネージャのレイモンドは気が気ではない。

エドウィナは、少年に2歳のときに死に別れた娘の話をする。娘の名前はフローレンス、美しい金髪の少女だった。 娘の話をしながら、酔いつぶれるエドウィナに少年が尋ねる。「あんたは娘の何を覚えていたの?金髪だったこと?」 エドウィナは答える。「ばかね。わたしはあの子を愛してたのよ。それを覚えているのよ。」

なぜか最後の最後まで、肝心のことがわからないオマヌケなエドウィナさん。(笑)
お人好しのマネージャーのレイモンド氏とはいい組み合わせなんじゃないかと思います。
コメディと呼んでいいのかどうかわからないけれど、読み終わったあと、やさしい気持ちになれる佳作。

【登場人物】

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8. 妖精は扉をたたいて
  ようせいはとびらをたたいて

【初出】プリンセス 1977年 3月号
頁数:37頁
【コメント】

ある日、エドウィンの家に家政婦がやってくる。 名前はジェラルダイン、ベテランという触れ込みの割には若くて家事が下手で、 なぜかエドウィンの妹デライラは彼女を妖精だと信じ込む。

花郁悠紀子さんの作品のあらすじを書くのはとってもむずかしいです。 特にコメディ作品の場合、テンポと絵で読ませてしまうから、うまく話が伝えられない(苦笑)

作者は、この作品や「それは天使の樹」「窓辺には悪魔」「昼さがりの精霊」といったロマンチック・コメディを一種のシリーズものとしてとらえ、 タイトルとテーマに妖精・天使・悪魔・精霊といった言葉を入れ、ラストのコマにテーマとなる絵がくるように描いていました。 この作品の場合、ラストのコマは、"扉をあける妖精"です。

【登場人物】

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有里 (Alisato Akemi)
http://alisato.web2.jp/book/kai/

最終更新日:2022/05/09