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コメントは、コミックス版のコメントを一部修正して使用しています。
SF系の作品を集めたコミックス。「サイエンス・フィクション」というより「サイエンス・ファンタジー」と呼びたい作品ばかりである。
プリンセスコミックス版では別々の巻に収録されていた、アナトリィ・ドニェプロフの登場する「フェネラ」「水面に咲く」「風に哭く」がまとめて読めるのが嬉しい。
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妖精界と人間界、二つの次元が接触してから50年、アシントン各地では、
ふさいだはずの次元の裂け目から、妖精人(エルフィーリ)たちが侵入してくる事件が起こっていた。
クレムリンからの亡命者、アナトリィ・ドニェプロフは、次元の裂け目をふさぐため、アシントン政府に迎え入れられた。
アシントンで、アナトリィは、フェネラと名乗る不思議な少女と出会う。フェネラは、人間の父と妖精人の母を持つ”キクナラエ”であり、
妖精界へ行くことを望んでいたが……。
花郁悠紀子の初の連載。
短い頁に話を詰め込んだためか、設定が分かりにくい部分があるが、画面いっぱい飛び回る妖精たちは壮観。
特に後半の妖精界の描写がすばらしい。
なお、作者は、フェネラとアナトリィというキャラクターには愛着があったらしく、のちに「水面に咲く」、「風に哭く」(『風に哭く』に収録)にも脇役で登場させている。
また、イラスト「百花繚乱」(『花宵闇』収録/文庫版『カルキのくる日』口絵)には、ストーリー後半に出てくる妖精の姫君ウルスラが登場している。
ところで、実をいうと私、アナトリィのフルネームを正しくいえたことがありません。花郁先生は、どうしてこんな難しい名前をつけたのでしょうかー。
ミューテーションで生まれた動物が棲む自然保護地区で、ハンターのジンが拾ったのは、月からやってきた天才少女マリオン。 彼女は望遠鏡で、この地区に自分そっくりの少女の映像が現れるのを見て、真相を確かめにきたのだ。 麒麟の群れの向うの大樹の下に現れたのは、確かにマリオンそっくりの少女だった……。
この作品に出てくる麒麟は、ビールのラベルを見ながら描いたとか。
ジンが事件の真相に気づく部分は、ちょっと苦しいけれど、それは置いておいて(笑)、
昼下がりの草原に精霊が現れ、そこを麒麟の群れが横切っていくというスペクタクルを楽しみましょう。
外傷が全くないのに、身体中の骨が粉々にされるという、奇妙な殺人事件がおこっていた。 特殊能力者の仕業ではないかと考えたアナトリィ・ドニェプロフはフェネラとともに、 特殊能力研究家のイリヤ・フュズリ博士の館に調査に赴く。 そこで彼らはフュズリ博士と、耳の聞こえないESPの少年ラレインと出会う……。
フェネラとアナトリィが再登場。
ただし、「フェネラ」との関連性は薄く、ふたりともすっかり特殊能力者として扱われています。
アナトリィに「フェン」と呼ばれているフェネラは、精神感応、遠視、透視、念動力などが使えるようです。
現在はふたりともESPステーション勤務かな?
水仙がモチーフになっています。
ESPのラシッドは、アナトリィ・ドニェプロフに連れられて、ある研究所へやってくる。
そこでは、動物と植物両方の性質をもつ植虫類(ズーフィタ)を使って惑星開発を行うズーフィタ計画が進められていた。
羽花と呼ばれる植虫類(ズーフィタ)をESPでコントロールして、開発を行うというのだ。
現在のところ、羽花をESPで動かせるのは、研究責任者であるナーシアス博士の異母妹フィリオリだけだったが、
激情にかられたラシッドもまた羽花を動かすことができた……。
植虫類(ズーフィタ)というのは、海底にいるウミトサカ、ウミヒノキといったものらしいです。
この作品を佐藤史生の『金星樹』と比べてみるのも一興。どちらも特殊能力のある植物がでてきますが、
構成と考証がきっちりしてわかりやすい『金星樹』と比べると、この作品はちょっと苦しいかも。
羽花のネタと海のズーフイタとフィリオリの身体の秘密とナーシアスとの恋とラシッドの成長譚を50ページで語るのは、かなり無理して話を詰め込まなくてはいけないんですよね。
花郁作品は、あらゆる細部にキーとなるモチーフ(今回は、ズーフィタ)をあてはめようとする手法なので、
どうしても構成に負担がかかるようです。
でも花郁さんが描きたかったのは、ストーリーというよりはズーフィタで、ズーフィタ自体はすごく魅力的に描かれているのだから、これはこれでいいのかも。
アナトリィは、今回はワキ役というかチョイ役。「水面に咲く」に引き続き、ESPステーションでのお仕事をしているようです。ワキ役なのに、画面のあちこちに必ず登場するあたり、とっても作者に愛されていたのかも。(笑)
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最終更新日:2005/05/09