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本の感想:小林 恭二

日記から抜粋した本の感想です。

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小林 恭二 『カブキの日』

表紙:4101478120

小林 恭二『カブキの日』

出版者:新潮社 新潮文庫
出版年:2002.7
価格 :\552+税
ISBN :4-10-147812-0

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bk1(02191590)

解説:

琵琶湖のほとりに「世界座」という巨大な歌舞伎の劇場(ほとんどディズニーランド的規模)があって、主人公の蕪(かぶら)が両親とともにその劇場へ舟でやってくる。今日は「カブキの日」、世界座の顔見世興行の日なのである。世界座では、保守派と改革派の役者の勢力争いが続いていて、なにやら陰謀のにおいもする。蕪は若衆の月彦とともに、そんな世界座の楽屋世界を巡ることになる……。

 世界座の建物はすさまじく広く、とくに下っ端役者が住む三階の楽屋は九龍城砦のような巨大迷宮と化している。蕪と月彦が巡るこの三階の世界の描写が、それはそれは素晴らしい。広場もあれば、コンビニもあり、ついでに死神に妖怪まで居るのである。私が一番気に入ったのは、給食所のシーン(ハードカバー版 p.121)で、どんな料理本にも負けないような和風ビュッフェのメニューが……。ああ、お腹すいた……。

 冒険のクライマックスは、顔見世のクライマックスとシンクロし、混乱と狂乱と陶酔の中で踊りだしちゃって、もうもう凄いです。(『カント・アンジェリコ』と比べてみたりして)

 歌舞伎のことを知らなくても十分楽しめますが、知っていればもっと楽しめるかも。

 読了後、『幻想文学 53』に掲載されている作者インタビューを読む。こういう使い方ができるから、『幻想文学』はいいよね。
 冒頭の朝霧の中を舟で「世界座」へ行くシーンがベネチアっぽいなぁなんて思っていたら、やっぱりそういうイメージで書いたらしい。小林恭二って『ゼウスガーデン衰亡史』 『短歌パラダイス』 の人だったんですね。

 ハヤカワ文庫FTの書評リンクを強化すべく【THATTA ONLINE】を読んでいて、大野万紀さん(【内 輪 第101回】)や水鏡子せんせい (【みだれめも 第106回】)が、 『カブキの日』をSFと呼びたがっているのを知る。無理なのはお二人とも承知だけれど(笑)。一方で「ファンタジー汚染」なんて言う人がいるのに、優れた作品は全部「SF」ってのは、ちょっとずるいと思うな。いや、「汚染」うんぬんという人と、面白い作品をSFに含めちゃおうとする人とは別人だとは思うんですが。 『幻想文学』では、『カブキの日』(←石堂藍絶賛)は純文学に分類されていますね。私自身は、こりゃファンタジーでしょと思いながら読んでいました。

 ただ水鏡子さんの場合、SFであるかないかの基準に「世界を語る物語であるか」をもってこようとしているようで、それだと私のファンタジーとはなにかの定義と一部かさなってしまうような……。ひょっとすると、定義はほぼ同じで名称が違うだけなのかも。

(1999/05/11)

小林恭二『カブキの日』がついに文庫化。
表紙だけ見てるとそうは思えないでしょうが、少女・蕪と美少年・月彦が、保守派と改革派の役者の勢力争いが続いている巨大な歌舞伎劇場世界座三階の楽屋に迷い込むという、『千と千尋の神隠し』の歌舞伎座バージョンみたいな話なんですよ。超お勧め。

Web新潮新刊紹介:『カブキの日』
第11回三島由紀夫賞発表新潮社
小林恭二著作リスト

(2002/07/05)

私の紹介を読んで購入された【凍月】さんが、「大当たりっ!!!」と叫んでいるのを見て、嬉しくなりました。
この装丁だとファンタジーの人は気が付かないんじゃないかと思いますが、日本ファンタジーノベル大賞が好きな人なら絶対ハマるはずですから、ぜひぜひ。

(2002.07.13)

[著者]こばやしきょうじ  :小林 恭二
[書名]かぶきのひ     :『カブキの日』

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小林 恭二 『短歌パラダイス 歌合二十四番勝負』

小林 恭二『短歌パラダイス 歌合二十四番勝負』

出版者:岩波書店 岩波新書 新赤版 498
出版年:1997.4
価格 :\660+税
ISBN :4-00-430498-9

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bk1(01442969)

解説:

 現代短歌を代表する20人の歌人を集めて行われた「歌合」の実況中継。参加した歌人は、岡井隆、奥村晃作、高橋睦郎、三枝昴之、河野裕子、小池光、永田和宏、道浦母都子、井辻朱美、大滝和子、加藤治朗、水原紫苑、田中槐、荻原弘幸、俵万智、穂村弘、東直子、紀野恵、杉山美紀、吉川宏志、梅内美華子。

 「歌合」というのは、いくつかの組に別れて歌を作り、その歌をそれぞれ一首づつ出して対抗するという遊び。さらに、それぞれの組の人間は、自分の組の出した歌を批評し、褒め称えるわけです。相手の組の方がいい出来だと思っても、自分の組の歌の良いところを見つけて無理矢理誉めなくちゃいけない。源氏物語でも「○○合せ」というのが出てきますけど、要するにアレです。
 で、この批評というのが、ミソでして、誉める方の読み方が上手くないとだめで、一つの歌の解釈が割れたりするとそれもだめだったりして、非常にスリリングです。

 中井英夫(短歌雑誌の名編集長でもあった)のファンで、寺山修司(デビューは短歌です。中井英夫に見出された。)が好きで、井辻朱美さんのファンという割には、短歌の読み方を知らない私には、非常に面白く勉強になる本でありました。紀野恵さんの歌が気になるので、探してみようかと思っています。

(1997/09/20)

[著者]こばやしきょうじ  :小林 恭二
[書名]たんかぱらだいす  :『短歌パラダイス 歌合二十四番勝負』

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有里 (Alisato Akemi)
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