異次元を覗くHP】の管理者 加藤さんからいただいたメール (1999/10/19)
※ご本人から許可をいただいて転載しています。

Date: Sat, 16 Oct 1999 Subject: あるオタクの証言  有里さん、こんばんは。加藤@異次元を覗くHPです。 和製ファンタジーの話題、もりあがってますね。わたしは翻訳の異世界ファンタ ジーに触れたのは高校のとき「ドラゴンランス」がはじめてでした。それ以前の 時期についても異世界ファンタジーで日本人の作者、というものを読んだという 記憶はほとんどありません。水野良の「ロードス島」は読んでましたが。  同時期のライトノベルについては結構読んでいたつもりですが、まるっきりの 異世界というとなかなか思いつきません。「吸血鬼ハンターD」もはるか未来と いう設定でしたし。完全な異世界の物語という発想は完全に外来のものではない かと。  ほかのメヂィアの話になると、ファンタジー=中世ヨーロッパ的世界描写とし て考えると 「聖戦士ダンバイン」(日本サンライズ)1983 「機甲兵ガリアン」(日本サンライズ)1984(多分) 「重戦機L−GAIM」(日本サンライズ)1984 あたりはどうでしょう。直接ファンタジーにつながったとは思えませんが、L− GAIMは中世というかんじではありませんでしたが、王政復古ものと言われて いました。  このあたりの作品はガンダム以降、ミリタリー的な盛り上り方に偏向していっ た巨大ロボットアニメ業界内でのアンチテーゼだったのではないか、と思ってい ます。小説の和製ファンタジーを増やすきっかけになったとは考えにくいのです が地ならしくらいにはなってるはずです。 アニメではわたしが小さいころ「燃えろアーサー白馬の王子」というのがあった 気がしますが、これも他に影響を与えていない独立存在でしょうね。  ゲームはドラクエの影響がやはり大きいですね。L−GAIMのメカとキャラ のデザインをした永野護は、1989年出版のイラスト集「Joker3100」でドラゴン を登場させ、コメントに「昨今のRPGブームによって、こういった生物がなじ み易くなったことは描くほうにとっても楽になった」と語っています。  和製ファンタジーについてはそれまでにも書きたい作家はいたでしょうが、売 れるかどうか、マーケットに受けいれられるかが分からずに出せずにいたのがR PGのヒットという外部要因によって出しやすくなって出た。という印象があり ます。それまでは、完全な異世界ということでなく、SFの皮をかぶったりして いたのでは?  それから三国志の影響も少くないのではないでしょうか。これは主に田中芳樹 の系譜ですが。光栄からシミュレーション「三国志」が出たのは1984年あたりだっ たと記憶しています。(PC9801用で縁がなかった)後年の三国志ブームはこのゲー ムの影響抜きには語れません。そして和製ファンタジーがある程度売れはじめた 時点で「売れるんなら似通ったもの何でも投入」という姿勢の中で、戦記ものが マーケットに投入されはじめたのではないでしょうか。翻訳ファンタジーが好き で和製ファンタジー読んでみたら何か雰囲気ちがう、という場合、こういった要 素が混ざっているからではないでしょうか。(そういえば大学のとき読んだ「イ ズァローン伝説」というファンタジー漫画はヨーロッパのファンタジーにキリス ト、仏陀の物語を混ぜて、諸星大二郎の「暗黒神話」で落としてました)  何か、とりとめのない文になってしまいましたが、1986年から中学生でしたの で、同時代のオタクの一証言ということで……。 -- ----------------------------------------- 加藤 隆史(Takashi Kato) Web http://www1.zzz.or.jp/~tkatou/index.htm 「虎よ虎よ」のマレー語訳は「ハリマオ!ハリマオ!」 .

有里からの返信(一部抜粋)

貴重な証言(笑)ありがとうございます。

「三国志の影響」というのは、重要なポイントのような気がしています。
中国風世界とファンタジーガジェットを導入したという点と、
戦記物で登場人物がたくさん出てくるストーリー展開を読者に受け入れさせた
という点で。
ただそれが、ゲームのせいなのか、マンガのせいなのか(横山光輝が描いていま
すね)、田中芳樹のせいなのかよく分からないですが。
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