diary Alisato's 本買い日誌
1997年 02月 *


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1997年 02月

読了本一覧

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1997.02.01 (土)

 金蓮花『玄冬の昿野』(集英社コバルト文庫)を買う。この表紙の絵はあんまり好きじゃないけど...仕方ない。

金蓮花『玄冬の昿野』

金蓮花『玄冬の昿野』(集英社コバルト文庫)読了。

平凡な女子高校生が実は○○で、やがて自身の力に覚醒するという、お決まりのパターンの話ではあるが、この話のポイントは、脇役の母娘(未熟な母とその母に逆らえない娘)の相互依存関係にある。
作者自身はとってもいいお母さんであるせいか、最後の詰めが甘いと思う。
逆にクラスメイト達の悪意の描き方はなかなかにリアルである。

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1997.02.03 (月)

 積んでおくばかりで読んでいなかった中井英夫の『とらんぷ譚』『ケンタウロスの嘆き』 『虚無への供物』(創元ライブラリ)を読んでいる。(ちなみに、どれも再読)
こたつは読書には最適だが、いつの間にか寝てしまう(笑)。
『ケンタウロスの嘆き』の三島論、小栗・夢野・久生論などを読み、これらの作家が読みたくなって図書館へいく。

なぜか全集の三島の巻は貸し出し中。
いつもはほとんど借りる人なんかいないのに、なんで私が読みたいときに限ってないんだ?
『新青年傑作選』があったので、これを借りる。
ついでに宮部みゆき『今夜は眠れない』も借りる。

宮部みゆき『今夜は眠れない』

宮部みゆき『今夜は眠れない』(中央公論社) 読了。

母親が昔の知人から巨額の遺産を相続したために、騒動に巻き込まれた中学生の「ぼく」とその家族。
男は愚かで、女はしぶとく、そして、少年達だけが健気で大人だ。

実は、宮部みゆきは『レベル7』を読んで、あんまり好きじゃないと思っていたのだ。決して下手だからではなく、あまりにも上手すぎ、リアル過ぎて、読後感が「痛かった」からだ。過労死しそうになった父親と、過労死しかねない夫を持つ身としては、やはりあの話はしんどい。(ついでにいえば、大悪人が十分に罰を受けてないのも気に入らない。)その点、この話は視点が少年なので、大丈夫だった。

背中を「ほりほり」掻くという表現が気に入りましたです。

中井英夫『とらんぷ譚』(創元ライブラリ)

中井英夫『とらんぷ譚』(創元ライブラリ)読了。

中井英夫の代表作である、幻想連作短編集。
とらんぷになぞらえた連作短編がジョーカーも含めて54編一冊に揃っているのはやっぱり嬉しい。

建石修志の挿絵の美しい講談社文庫版も持っているが、中井英夫ファンとしてはもちろんこの東京創元社の全集も集めねばならない。あちこち探してようやく見つけ出した。埼玉のような田舎じゃこういう本は売っていないのだ。

以前読んだときは最も面白かった「幻想博物館」よりも、「真珠母の匣」の方が面白かったのは自分でも意外だった。
最初に読んだときの印象が強すぎたためだろうか。(「火星植物園」を読んだときの衝撃は忘れられない。)
「真珠母の匣」は、各月にちなんだ宝石が出てくるはずなのだが、ちゃんと見つけ出せない月があったのが悔しい。もう一度、探してみよう。
「悪夢の骨牌」は、まあまあ。「人外境通信」は、「笑う椅子」以外は退屈だった。

中井英夫『虚無への供物』(創元ライブラリ)

中井英夫『虚無への供物』(創元ライブラリ) 読了。

奥付けが1996年12月10日になっているのに感動した。12月10日は、『虚無への供物』の物語が始まった日付であると同時に中井英夫の命日でもある。

塔晶夫版ということで、講談社文庫版とは、冒頭および結末の文章が違っている。他にもいろいろ相違点はあるに違いないが、ちょっと読み比べる気力はない。
幻想ミステリだという記憶があったのだが、再読してみると意外に現代風なので驚いた。
衛星放送で、『薔薇の殺意』という題名でドラマ化されたのだが、結局一度も見なかった。TVガイド等の写真と解説を見る限り、かなり原作のイメージに近いものだったようだ。見ればよかったかもしれない。

中井英夫『ケンタウロスの嘆き』(創元ライブラリ)

中井英夫『ケンタウロスの嘆き』(創元ライブラリ)読了。
中井英夫のエッセイ&評論集。
最初に読んだ中井英夫の作品は高校の図書館で読んだ『黒鳥譚・青髭公の城』だった。なぜかその前後に読んだ三島由紀夫の『仮面の告白』とイメージがダブってしまい、しばらく中井英夫は夭逝した美青年だと信じ込んでいたのだが(苦笑)、この評論集を読むと、私の「幻想」の方向性は間違っていなかったように思う。

『新青年傑作選』(立風書房)

全5巻で、評論や翻訳などの巻もあるのだけれど、私が借りたのは、探偵小説の巻。
乱歩「二銭銅貨」や「押絵と旅する男」、夢野久作「押絵の奇跡」などなどが入っている。小栗虫太郎のもあったのだが、目が文体に拒否反応を示し、全然読めなかった。
題名を忘れてしまったが、見えないウサギと暮らす男の話がとても良かった。

1997.02.05 (水)

宮部みゆきにハマる
 『今夜は眠れない』がめっぽう面白かったので、続編の『夢にも思わない』も借りる。
本当は、昨日借りたかったけど、図書館が休刊日だったのだ。

ついでに小野不由美『月の影 影の海』上下(講談社X文庫ホワイトハート)も借りる。

図書館の帰りに書店に寄って宮部みゆき『ステップファーザー・ステップ』(講談社文庫)を買う。

宮部みゆき『夢にも思わない』

宮部みゆき『夢にも思わない』(中央公論社) 読了。

『夢にも思わない』の主人公の少年が巻き込まれた少女殺人事件と初恋の顛末。
相変わらず「ぼく」の友人のメガネ君(すみません、名前忘れました)は、名探偵だが、名探偵には名探偵なりのなにもかも視えてしまうという苦悩があるらしい。
それにしても、宮部みゆきって、女性を描くときは容赦ないですね。

宮部みゆき『ステップファーザー・ステップ』

宮部みゆき『ステップファーザー・ステップ』(講談社文庫) 読了。
プロの泥棒と、その泥棒を父親代わりにしてしまった中学生の双子の兄弟の奇妙な家族愛(笑)を描く、宮部版『スィートホーム殺人事件』
へろへろと読んでしまったので、第1話の文体の凄さにはぜーんぜん気がつかなかった。
女は新聞をきれいに畳めないというのは真実だと思います。私もだめなんです。(笑)

小野不由美『月の影 影の海』上下

小野不由美『月の影 影の海』上下(講談社X文庫ホワイトハート) 読了。

平凡な女子高校生が、異界からの使者に呼ばれて、異界へ渡り冒険をする。と、書くといかにもありがちなストーリーですが、主人公の性格のうっとぉしさと出会う艱難辛苦がハンパじゃない。
確かにこれだけの苦労をしなくちゃ、平凡な女子高校生が王になるという話のリアリティは出ない。正しく「成長小説」、真の「ヤングアダルト」。
下巻に入って、あれだけうんざりしていた主人公にいつのまにか感情移入している自分を発見してしまいましたです。さすがは、『東亰異聞』の作者。

話の内容とは関係なく気になったのが、宮部みゆきも小野不由美も「自分の居場所を確保する為にいい子で居続ける子供」について言及していること。これに菅浩江を加えると、なんか出てきそう。(この三人似たようなタイプだと思う。)

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1997.02.08 (土)

 小野不由美は面白かったので、『風の海 迷宮の岸』上下(講談社X文庫ホワイトハート)も買う。
『男子高生のための文章図鑑』で、一部を読んで以来読みたかった 三島由紀夫の『三島由紀夫レター教室』(ちくま文庫)も買う。

[game] Nightsにハマる

 セガ・サターン用のゲーム『Nights』を買う。ハマる。

三島由紀夫『三島由紀夫レター教室』

三島由紀夫『三島由紀夫レター教室』(ちくま文庫) 読了。

5人の登場人物の書簡で綴られるコメディ。それがそのまま手紙の文例にもなってしまうというのが、すごいところです。

三島由紀夫の歿年は1970年だから、この作品はもう30年も前の作品のはずだけど、全然古びていない。
「まんまるに太って」「ほうぼうにペン・フレンドを持っていて切手収集家」の丸トビ一君なんて、オタクそのものじゃないか。昔っからこういう人っていたのね。
こんなにおしゃれで、いぢわるな作品を書いていた人が、なんであんな風に死んじゃったんでしょ。

小野不由美『風の海 迷宮の岸』上下

小野不由美『風の海 迷宮の岸』上下(講談社X文庫ホワイトハート) 読了。
『月の影 影の海』の前日譚。主人公は、蓬莱で「人」として育ち、十二国の世界へ呼び戻された幼い「麒麟」の少年。麒麟は王を選び、王に仕える神獣だが、少年泰麒は、麒麟としての自覚もないまま、王を選ばねばならなかった。
素直な泰麒君、可愛い。この話はハッピーエンドで終わっているけど、『月の影 影の海』では、彼は行方不明になっている。どこにいるかというと…それはまた別の物語。

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1997.02.09 (日)

 図書館で、小野不由美『風の万里 黎明の空』上下(講談社X文庫ホワイトハート)を借りる。

小野不由美『風の万里 黎明の空』上下

小野不由美『風の万里 黎明の空』上下(講談社X文庫ホワイトハート) 読了。

『月の影 影の海』の続編。前回の主人公陽子、江戸時代の日本から流れ着いた少女 鈴(すず)、国を追われた皇女 祥瓊(しょうけい)の三人が旅の果てに巡り会う。
陽子は前回で一皮向けているからいいが、あとの二人は自己憐憫にひたるうっとぉしい女と、己の非を顧みず他人を妬むわがまま娘。
「なんだ、こいつら」と思いつつ読み進むうちにしっかり感情移入して、そのうちに人格鍛え直されてしまうあたりは、前回と同じ。一歩間違えたらとんでもなく説教臭くなる話を、一気読みさせるのが作者の力量。
ラスト近く、鈴が「この旅券が目に入らぬか」ってやるところで、思わず拍手〜。

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1997.02.13 (木)

 図書館で、赤瀬川原平『新解さんの謎』を借りる。
我が家にも『新明解国語辞典』はある。ひまつぶしに読むと面白い。

赤瀬川原平『新解さんの謎』

赤瀬川原平『新解さんの謎』 読了。
独特の語義説明で有名な『新明解国語辞典』から、用例や語義を拾ってきて、その編纂者像に迫ろうという本。読んでいて大爆笑間違いなし。この本のおかげで、『新明解国語辞典』の売り上げは伸びたことでしょう。

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1997.02.14 (金)

 図書館に去年から京極夏彦の『絡新婦の理』をリクエストしてるのだが、なかなか順番がこないので一度読んだ『姑獲鳥の夏』を借りてしまう。
ついでに、赤瀬川原平『純文学の素』も借りる。

■京極夏彦『姑獲鳥の夏』

京極夏彦『姑獲鳥の夏』 (講談社ノベルス)読了。

再読である。『狂骨の夢』が出たばかりの頃、知人達に薦められたのだが、誰にあらすじを聞いても要領を得ない。「作家がいて〜、古本屋で拝み屋がいて〜、ハンサムな探偵がいて〜、でも探偵は探偵役じゃなくて…」読んでみて確かにあらすじを説明するのが困難な話だというのがわかった笑)

シリーズ中、私が最も好きなのは『魍魎の匣』で、京極夏彦は少女を描いているときが一番嬉しそうだと思った。

文章の背景に、明治の文豪やら欧米のミステリやら漫画やらがちらちらするのだが、さすがに妖怪好きの作者だけあって、容易にしっぽをつかませない。『魍魎の匣』の車内のシーンは乱歩の『押絵と旅する男』『姑獲鳥の夏』の怪しい坂は漱石の『夢十夜』『鉄鼠の檻』『薔薇の名前』『ファンシィ・ダンス』にブラウン神父、わらべ歌なら横溝正史、『狂骨の夢』のトリックはEQ…って感じがするんですけどね。
誰かそういうの調べているのだろうか?

赤瀬川原平『純文学の素』

赤瀬川原平『純文学の素』 を読む。
赤瀬川源平は、銀行にお金を預けるという行為が、なぜかポルノになってしまうという、とんでもない文体を使える人なんである。

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1997.02.15 (土)

小野不由美にハマる

ここまで来たなら、全部読む!というわけで、小野不由美<十二国記>シリーズの残りを買う。

ホームページ作成の本を買う

インターネットも始めていないくせにホームページの勉強でもしようかと、
『作ろう!魅せるホームページ 実践テクニックガイド』(インプレス)も買う。

別の本屋で、堀田善衛・司馬遼太郎・宮崎駿の鼎談集『時代の風音』(朝日文芸文庫)をみつけ
勢いで買ってしまう。

小野不由美『図南の翼』

小野不由美『図南の翼』(講談社X文庫ホワイトハート) 読了。
『風の万里 黎明の空』にちらりと出てきた恭国の女王 珠晶の即位前の物語。
王不在のまま荒廃していく恭国を憂い、12歳の豪商の娘 珠晶は、蓬山を目指す。
頭はいいかもしれないが、他人の迷惑顧みず己の道を突き進む高慢娘…に見えた珠晶が心情を吐露するくだりは圧巻。なるほど小説の視点というものは、こういう風に設定すべきものなのかと思いました。
思わぬ人(?)が思わぬところで顔を出すのも、このシリーズの魅力ですね。

小野不由美『東の海神 西の滄海』

小野不由美『東の海神 西の滄海』(講談社X文庫ホワイトハート) 読了。

『月の影 影の海』などに出てきた雁州国延王(えんしゅうこくえんおう)・尚隆と雁麒・六太が主人公の外伝。時代としては、『月の影 影の海』の300年ぐらい前の話。ファンタジーというよりは、政治小説みたいになってますが、それはそれで面白い。斡由(あつゆ)というキャラクターがなかなか興味深い。要するにこういうのが「平気で嘘をつく人」なんですね。

小野不由美『魔性の子』

小野不由美『魔性の子』(新潮文庫) 読了。
これだけ読むとホラーである。この世界にやってきた「異邦人」の話である。が、実は十二国記の外伝なんである。早くこの続きが読みたいものです

今日の収穫

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1997.02.17 (月)

 図書館より、以前から頼んでいた加藤典洋『言語表現法講義』(岩波書店)が貸し出し可能との連絡あり。借りに行く。

加藤典洋『言語表現法講義』

加藤典洋『言語表現法講義』(岩波書店) 読了。
現代にふさわしい文章の書き方を説く、講義録の形をとった「活字による模擬授業」。
考えを書き留めるのではなく、書くことによって考えるのだとか、文章の最後の美辞麗句は文章全体を殺してしまうとか、推敲には二つあって、他者の目で批判的に見ることと自分で書いたものを暖かく見守ることの両方が必要だとか、目ウロコな話が満載です。

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1997.02.22 (土)

 図書館より、京極夏彦『絡新婦の理』が貸し出し可能との連絡あり。いそいそと借りに行く。

京極夏彦『絡新婦の理』

京極夏彦『絡新婦の理』(講談社ノベルス) 読了。
うーん、今度のネタはフェミニズムなんですね。京極夏彦と平井和正は、女性の描きかたで私を苛立たせない数少ない男流作家なんですが、今回もフェミニズムを妙に茶化すことなく取り扱っていると思います。「婦人と社会を考える会」の女性が戯画的に出てきますが、それに対する男の方だって同じくらいバカに描かれてますしね、決してフェミニズムそのものを揶揄しているわけではない。だいたい『姑獲鳥の夏』でも『狂骨の夢』でも中善寺の憑き物落としは、差別と偏見を言葉の力で解体することだったんですから。

女子校の場面は、相変わらず嬉しそうに書いているなぁと思ってしまいました。はい。

私は、織作家のお屋敷の構造がどうなっているのか、とっても知りたいです。いや、京極作品に出てくる建物は全部、図が欲しいと思ってしまいます。

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1997.02.23 (日)

 図書館で、宮部みゆき『寂しい狩人』を借りる。

宮部みゆき『寂しい狩人』(新潮社)

古本屋のおじいさんとその孫を主人公の連作短編集。
虐待を受けた子供がある本を万引きすることでSOSを発する「うそつき喇叭」と、本の間に挟んであった名刺をめぐる物語の「歪んだ鏡」が印象に残りました。
宮部みゆきの作品には、「うそつき喇叭」の犯人や『レベル7』の極悪人や『夢にも思わない』の"彼女"など、自分の罪を他人に押し付けて自分は清廉潔白なふりをする人間というのが、随分出てくる気がします。
本の間に挟んであったといえば、私は図書館の本の間に領収書を見つけたことがあります。金額も名前もばっちり書いてある。いいんですかね〜、悪用されちゃってもしらないよ。(笑)

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1997.02.25 (火)

[net] 勢いでインターネット

 Nifty Serve経由でインターネットしようとしたのだがうまくいかず、勢いで市内にアクセスポイントのあったBIGLOBEにサインアップしてしまう。
その後、知り合いのページやらNightsのページやらに入り浸ったため、読書は一時ストップする。

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最終更新日:2001/09/14