更新日: 2001/01/06

「BOOK・OFF問題」について

Alisato's 本買い日誌 SPECIAL TOPICS

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2000.05.30(火)

「BOOK・OFF問題」について

 アクセス解析をみていたら【羊堂本舗】というところから、5月20付けの「ブック・オフが増えると新刊が売れなくなる」にツッコミが入っていたので、コメント。

 ツッコミいれた人は、「BOOK-OFFが近所に無いので、実際どんなものなのか良く知らなかったり」するらしいので、実物を見たら意見が変わるかもしれませんが、現在の意見は以下のような感じ。

===引用開始===
 何が問題なのやら。中古の所為で新刊が売れないと言われましても。中古の値段だからこそ消費者は漫画を買うのであって、新刊の値段じゃあ買わないというような発想は無いわけね。
(中略)
 ブックオフが無くなったとして、ブックオフの売上がそのまま新刊にシフトすると本気で信じているのだろうか?多分他の娯楽に行ってしまうと僕は思うのですが。
(2000/04/29 Sat[18:37] BOOK-OFF問題。)
===引用終了===

 「中古の値段だからこそ」本を購入する層というのはもちろん存在するので、「ブックオフが無くなったとして、ブックオフの売上がそのまま新刊にシフトする」ことは有り得ないのは当然なのですが、ブック・オフが存在しなければ新刊書店で本を購入していたはずの層については、全然考慮に入っていないのは、なぜなんでしょう? (この人、新刊書店では本を買わんのか???) ブック・オフを問題視している人が念頭においているのは、そいういう購買層のことだと思うんですけど。

 世の中には、
(1)「新刊書店であろうとリサイクル書店であろうと、目の前に欲しい本があったら買う人」や
(2)「新刊書店の値段でも本を買うが、新刊書店とリサイクル書店の両方に本があったら安いほうを選ぶ人」
がいるわけで、そういう人が存在する限り、ブック・オフの存在は、新刊の売り上げを削る存在であるのです。
 しかもその中に「本は一回読んだらすぐ売る」という行動パターンの人がいれば、本はリサイクル書店のところで「リサイクル」されるから、さらにその分売り上げは減るわけです。

 リサイクル書店での「新古本リサイクル」によって、どれくらい売り上げが減ったかという統計資料は多分どこにも公開されていないようので(あったら教えてください。ブック・オフの誰かが把握している可能性はありますが)、これは想像でしかありません。が、WEB日記などを読む限り、書店員さんたちはブック・オフによってマンガの売り上げに影響があったと感じているようです。

 私の場合、ブック・オフがなければ新刊書店で購入したであろう本というのは、書籍書購入費の約10%ぐらいでしょうか。あと、ブック・オフでみつけた古本を買うために買うのをやめた新刊図書がやっぱり10%ぐらい。つまり私の書籍購入費の20%ぐらいの金額が新刊に流れなくなったことになります。(私の書籍購入費は月に2万円。統計的にいうと1.5%ぐらいしかいない、本をよく買う層に入ります)
 あとは割合の問題ですね。私のような人が、多ければ影響は大、少なければ影響は小。でも絶対に影響は0ではない。0でない影響力は、いつか積み荷を背負ったロバの背骨を折る最後の藁の一本になるかもしれない、ということです。

 それで、私が気にしているのは、都心で新刊書店が入るような立地条件のところにブック・オフが何軒も出来ているってことなんですね。古本おたく以外のフツーの人が気軽に寄れてしまうような場所にブック・オフが出来ている。しかも都心です。住宅だって狭い。今までは売るのも面倒くさいし、棄てるのはもったいないからと家に保存されていた本が出回ることは十分に考えられます。今まで「新古本リサイクル」に無縁だった人たちが、どっと「リサイクル」活動に参加してくるようになったら、やっぱりコワイことになるんじゃないかなぁ。

 ブック・オフのシステムは消費者に対するデメリットはほとんとないといっていいんですけれど、あんまり手放しで喜んでばかりもいられないような気はしております。やる気のない新刊書店や出版社がつぶれたって、別に構わないんですが、良心的な店や出版社(それに作家)が一緒になってあおりを食らうように思えるので。

 新刊書店もリサイクル書店も従来の古書店も(それからネット書店も)うまーく棲みわけてくれて、回るべきところにちゃんとお金が回るといいんですけれど。
(といいつつ『妖しのセレス』をまとめてブック・オフで買う私。だって、新刊書店には最新刊しか置いてないんだもの。まあ、これはブック・オフがなかったら、多分買わなかったたぐいの本ですが。)

 図書館については、リサイクル書店とは、また問題が別でしょう。
 ブック・オフと違って、少なくとも1冊は新刊を購入するのだし、リサイクル書店と違って手元に本は残らないのですから、読んだ後で利用者が新刊を購入する可能性は残されているのです。
 児童書のように部数の少ないものは、図書館への納入によって一定部数を確保しているというところもありますし。

2000/10/04追記:
この話題はさらに続きます。
[「BOOK・OFF問題」から「出版流通問題」へ]をご覧ください。


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最終更新日:2001/09/14