花郁悠紀子・単行本解説
* カルキのくる日(文庫版) *


【書誌情報】
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秋田書店 秋田文庫, 2000.02, ISBN4-253-17481-7
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【収録作品】

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コメントは、コミックス版のコメントを一部修正して使用しています。

【解説】

「カルキのくる日」は、単行本収録時には、相当のページ数を書き足す予定だったという。

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1. カルキのくる日
  かるきのくるひ

【初出】プリンセス 1978年 11〜12月号
頁数:全80頁
【コメント】

娼婦殺しの犯人と目されるエドモン・ラムファード男爵を追って、彼の城までやってきた刑事のステフェン。 だが、ラムファードは旅にでており、城には彼の息子ダナエと娘のレダとエロウペがいるばかりだった。

城の地下には、ヴィシュヌとその妻ラクシュミー、そしてヴィシュヌの10の化身を表す翡翠の像があった。 ダナエが言うには、この城には呪いがかけられていて、城の住人が死ぬたびに像の顔が欠ける。 既に6体の像の顔が欠けていた。 その中の一体は、ラムファードに連れ去られたステフェンの恋人ディアナが自ら命を絶った時に、欠けたのだという。

その日、ダナエの妹のエロウペが死に、石像の顔が欠けた。
翌日、エドモン・ラムファードが船から錯乱して落ちて死んだ。そして、レダも……。

現在残っている作品は、ページ数の関係で、話の展開が性急だが、きちんと手を加えられていれば、 おそらく作者の最高傑作になったであろう作品。 モチーフとして、ギリシャ神話とインド神話が使われている。少女漫画でヴィシュヌ神が出て来たのは、この作品が最初かもしれない。
ミステリとしてのトリックはほとんどないのだが、話の組み立て方は、現在「新本格」と呼ばれているミステリの一派の作風に近いような気がする。

ところで、ダナエの話による像の顔が亡くなった順番と事件の真相(?)とでは、微妙な違いがあるんですが……まあいいか。

【登場人物】

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2. 黄昏に風 *

【初出】同人誌『らっぽり』 1979年
頁数:4頁
【コメント】

同人誌『らっぽり』の男と男がからむだけの ”ヤマなし、オチなし、イミなし”、略して「やおい」(現在、男同士の耽美恋愛物の意味で使われている「やおい」の語源は多分これです。)特集号に掲載された話。
今回はエピローグ的に「カルキがくる日」本編のあとに掲載されていますが、 もともとお遊び企画のための短編だったので、本編との関係がわからず、とまどう人もいるかもしれません。 いきなり、ああいうシーンで本編とは雰囲気も違うし……。
でも、この「物語」を全部読みたい!!と願うのは私だけではないでしょう。

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3. 踊って死神さん
  おどって しにがみさん

【初出】ボニータ 1979年 秋季号
頁数:40頁
【コメント】

社交界注目の的の美女 マダム・マデラ・C.ダヴィドが、妙な条件つきで彼女の城を売りに出した。 ―いわく、買手は男性に限ること。この一ヶ月間に希望者をつのり、その人々の中から金額に関係なく、 彼女の気に入った相手に譲ると。
マデラの心をとらえたのは、美少年シザリオン。 だが、シザリオンは、城の元の持ち主デュラクセン伯爵の復讐のためにマデラに近づいたのだ……。

構成からすると50頁ぐらい欲しかった話なのではないかと思われます。 「城」「踊る」「死神」の三題話だったのかも。花郁作品は、こういったモチーフ先行ストーリーがほとんどです。
男装の麗人と朴とつ青年(?)の組み合わせが好みだったりします。(笑)

「シザリオン」という名前はシェークスピア喜劇『十二夜』の男装の美少女からとった名前では。
【登場人物】

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4. 窓辺には悪魔
  まどべには あくま

【初出】ビバ・プリンセス 1979年 冬季号
頁数:40頁
【コメント】

母親から押し付けられた婚約を嫌って、世間知らずのエルヴェットが女子寮睡眠薬で自殺を計ろうとしたとき、窓からやってきたクライゼ。 エルヴェットは、彼を悪魔だと思い込むが、実は彼は実家から独立するため、バイトに明け暮れる男。 エルヴェットの部屋にやってきたのも、ボーイフレンド斡旋のアルバイトのためで、訪れるべき部屋を間違えたのだ。
エルヴェットは、クライゼが忘れられず、彼のアルバイト先を尋ね歩くが……。

ラストはちょっと『あしながおじさん』かも。
この主人公には、いまひとつ共感できませんが、脇役のエルヴェットの友人(♀。エルヴェットに惚れてる)と、 クライゼの友人(♂。クライゼに惚れてる)が、なかなか良かったりします。 でも、こういう人たちって、主役張れないのよね。

【登場人物】

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* 姫君のころには
  ひめぎみのころには

【初出】プリンセス 1980年 1月号
頁数:40頁
【あらすじ】

女性恐怖症のアルフォンスは、階段から落ちて幼児退行をおこしてしまったジウリアを、 幼なじみのレオナから押し付けられる。 レオナが恋人と同棲するので、ルームメイトだったジウリアをあずかって欲しいというのだ。 ガチガチの秀才だったジウリアは、階段から落ちてからお姫様のようになってしまったとか。 困惑したアルフォンスは、催眠術でジウリアの退行の原因を探るが……。

設定に無理のある話(自己暗示で他人の世界が体験できるなんて……(笑))なんですが、絵になるとそれなりに読めてしまいます。 でも、やっぱり変な話には違いない...。

【登場人物】

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6. 私の夜啼鶯
  わたしのないちんげーる

【初出】プリンセス 1980年 5月号
頁数:41頁
【コメント】

記憶を失った青年は、婚約者だと名乗る女性ロザモンドに連れられて、ある屋敷へとやってくる。 彼を迎えたのは、従兄弟のジェアードと亡き父の召し使いだったという中国の青年李仁(リーイン)。
自分が何者か確信が持てない青年が見たものは、怪しげなパーティと東洋の品々だった……。

あらすじには入れられませんでしたが、モチーフは、アンデルセンの『皇帝と夜啼鶯』です。 しゃれたヨーロッパの時代物。
続編の構想もあったそうです。 鳥をモチーフに―例えば毎回、カナリアだとか色々と変えて―同じキャラで2、3本描くつもりだったとか。

【登場人物】

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有里 (Alisato Akemi)
http://alisato.web2.jp/book/kai/

最終更新日:2005/05/09