花郁悠紀子・単行本解説
* 四季つづり(文庫版) *


【書誌情報】
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秋田書店(秋田文庫), 1999.11, ISBN4-253-17471-X
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【収録作品】

注:作品名をクリックすると、各作品の紹介にジャンプします。(極力ネタバレにならないようにしています。)
コメントは、コミックス版のコメントを一部修正して使用しています。

【解説】

日本を舞台にし、季節をテーマにした作品が集められています。
「夏の風うたい」「秋の時うつり」「冬の波さやぎ」「春の花がたり」は、連作短編で《四季つづり》として新書版コミックスにまとめられています。
夏から始まっているのは、最初に描くチャンスがめぐってきたのが夏だったからだとか。
Nifty-serveのFCOMICOの70年代会議室での話題によれば、連作の登場人物の名前が花郁悠紀子さんの名前にちなんでいるとのこと。 (「夏の風うたい」の悠、「秋の時うつり」の由紀彦、「冬の波さやぎ」の郁也、「春の花がたり」の櫂) 言われてみれば、なるほど。 それ以外の作品でも登場人物の名前が興味深いので、登場人物一覧を載せてみました。

どの話も、死者と残された者をめぐる話で、作者が亡くなった後、読むのが辛かったです。

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1. 夏の風うたい
  なつのかぜうたい

【初出】ブリンセス 1976年 9月号
頁数:33頁
【コメント】

妹 奈津子を交通事故でなくした功作の家に、父をなくした悠が引き取られてきた。 悠はショックで事故のことを忘れているのだという。 父のことを思いだそうとしない悠に功作は、亡くなった妹の話をする。記憶の風から逃げなければ、いつか風は優しくなると……。

愛する者に先立たれた者が、辛い記憶を抱いてどのように生きるかという話なのですが……。作者の運命とシンクロして、ちょっと読むのが辛いんです。

【登場人物】

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2. 秋の時うつり
  あきのときうつり

【初出】ビバ・プリンセス 1976年 秋季号
頁数:40頁
【コメント】

鷹緒(たかお)は、異母弟の由紀彦を引き取るため、由羅高原へやってきた。だが、由紀彦は、 由羅高原に住む野生馬の長である黒馬・羅侯(らごう)と別れるのを嫌がる。 由紀彦は、羅侯が由羅高原の神なのだという……。

花郁さんは馬が好きだったそうで、馬の群れのでてくる作品がいくつかあります。 これもそのひとつ。
ストーリーの中に神話や童話を取り入れるのも花郁作品の特徴。他にも 「春の花がたり」(作中人物が作った童話)「春秋姫」(佐保姫、竜田彦) 「カルキのくる日」(ギリシャ神話) や 「私の夜啼鶯」(アンデルセン童話)などがあげられます。 この神話は、花郁悠紀子さんのオリジナル?

【登場人物】

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3. 冬の波さやぎ
  ふゆのなみさやぎ

【初出】プリンセス 1976年 12月号
頁数:40頁
【コメント】

陸美(むつみ)の家に、父の友人の養女となっていた大海(おおみ)が戻ってきた。 養父が海で亡くなり、養母の身体の具合が悪くなったためだ。 姉としてなんとか大海と親しくなろうとする陸美だが……。

タイトルの「波さやぎ」というのは、木の葉がさやぐ音が波の音に聞こえることからつけられたもの。

【登場人物】

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4. 春の花がたり
  はるのはながたり

【初出】プリンセス 1977年 5月号
頁数:40頁
【コメント】

櫂(かい)の小説家の父が亡くなった。遺品の整理のため、父の暮らしていた別荘へやってきた櫂は、 花の谷で翔(しょう)という少年と出会う。遺産争いに疲れた櫂は次第に翔に惹かれていく。
だが、翔は櫂の父と愛人との間の子であり、しかもその母は櫂の父の異母妹だった。

花郁作品で何度もでてくる異母兄妹の禁じられた恋のテーマが出てくる話。 他には「紅玉の園にて」や「カルキのくる日」「風に哭く」などがあります。 「幻の花恋」や「それは天使の樹」も、ちょっとその傾向があるかもしれません。
「百千鳥」は、この物語の前日譚。

【登場人物】

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* 百千鳥
  ももちどり

【初出】プリンセス・ゴールド 1979年 夏季号
頁数:39頁
【コメント】

小説家の車折舟(くるまざき しゅう)は、結核の療養のため高原の別荘へやってききた。そこは、妾の身であった母と過ごした思い出の地であった。

花の谷で、舟は杳(はるか)と出会う。不仲の妻との確執に疲れ果てた舟は杳と結ばれ、杳は身ごもるが……。

この幸福な終わりのつづきが「春の花がたり」なんです。ああ...。

波津彬子「ゆきのとむらい―六花抄」(朝日ソノラマ刊『秋霖の忌』)と読み比べてみるのも興味深い。ヒロインの性格の違いに注目。
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【登場人物】
車折舟(くるまざき しゅう)……小説家
車折八千代(くるまざき やちよ)……車折舟の妻
車折櫂(くるまざき かい)……車折舟の娘
美作杳(みまさか はるか)……花の谷でであった娘
美作清乃(みまさか きよの)……杳の母
美作翔(みまさか しょう)……杳の息子
了三……美作家の使用人
さよ……車折家の別荘のお手伝い
美津子……車折家の別荘のお手伝い

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* 春秋姫
  しゅんじゅうき

【初出】ビバ・プリンセス 1978年 秋季号
頁数:50頁
【コメント】

日本画家 衣笠翠景の娘 茜は、交通事故で死去した父の遺品を整理していて竜田姫の絵を見つける。 その絵のモデルは、茜に良く似た娘だった。その日遺言状が開かれ、茜以外にも翠景の娘がいることがわかる。
茜はその娘 藍根(あいね)に会うため、金沢へ向かうが……。

花郁悠紀子の故郷金沢の風物も堪能できる傑作。茜と藍根、春と秋ふたりの娘の対比が実に鮮やか。 もし私が作品集を編むのなら、ぜひこれを入れたい。

【登場人物】

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7. 菊花の便り
  きくかのたより

【初出】ビバ・プリンセス 1979年 秋季号
頁数:42頁(初出時 40頁)
【コメント】

司郎の養父 東朔太郎の実子 文(あや)が事故で死んだ。文は朔太郎が妻と離婚したとき、母親についていったのだ。
墓参りと療養を兼ねて、妻の故郷の旅館に泊まっていた朔太郎は、小川を流れてきたという文からの手紙を受け取る。
手紙はその後も何通も届き、司郎と朔太郎は少年時代の文に似た人影を見る。 不思議なことに手紙は何年も前に書かれたもののようで、届く順番もばらばらだった。

「菊慈童」をモチーフにした作品。 「菊慈童」というのは、帝に追放された少年が、菊の葉の露によって不老不死となり、 700年もの間少年の姿のまま、帝を恋慕うという物語。 文(あや)とその父を菊慈童と帝になぞらえているわけです。

【登場人物】

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有里 (Alisato Akemi)
http://alisato.web2.jp/book/kai/

最終更新日:2005/05/09