花郁悠紀子・単行本解説
* 花宵闇 *


【書誌情報】
新書館, 1982.05
【収録作品】
  • 「珠玉幻想画集」(カラーイラスト集) →内容
  • 「柘榴人」 →解説
  • 「黄昏に風」
  • 「未発表作品集」(カラーイラスト集)
  • 「カットコレクション」
  • SF小説「最後の者」
  • Q&A→内容
  • エッセイ →内容
  • 作品リスト
  • 竹宮恵子「花郁悠紀子さんのこと」
  • 佐藤史生「思い出」
  • 坂田靖子「金沢での伝染性幻想」
  • 萩尾望都「<オバランド>の花郁さん」
【解説】

没後、新書館より刊行されたイラスト集。
扉絵、表紙イラストの他、未発表のカラーイラスト、同人誌に掲載された「カルキのくる日」の続編、 SF小説等が収録されている。

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1. 珠玉幻想画集

【内容】
・カルキのくる日(後編扉絵)
・幻の花恋(扉絵)
・踊って死神さん(扉絵)
・夢ゆり育て(扉絵)
・マルガリテース(扉絵)
・風に哭く(扉絵)
・銀砂嶺―イラの物語 ……【初出】ペーパームーン14号 , 1978
・秋の影 ……【初出】こどもの森, 1978
・鶯(プリンセス口絵)
・百花繚乱(プリンセス口絵)
・四季つづり(コミックス表紙)/フェネラ(コミックス表紙)
・夢ゆり育て(コミックス表紙)/冬の波さやぎ(扉絵)
・虹夫人(扉絵/2色)/水面に咲く(扉絵/2色)
・百の木々の花々(扉絵/2色)
・カルキのくる日(扉絵/2色)
・フェネラ(扉絵/2色)
・春秋姫(扉絵/2色)/不死の花(扉絵/2色)
・柘榴人(カラー) ……【初出】ペーパームーン18号, 1979
・イカロスの翼 ……【初出】ペーパームーン20号, 1980
・真夏の夜の夢

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2. 黄昏に風 *

【初出】同人誌『らっぽり』 1979年
頁数:4頁
【あらすじ】

「― 生きていたんだな。それとも幽霊か」青年は少年に尋ねる。
「ぼくをみてどう思います?変わりましたか」
「いや...ああ...背がのびた......」「そうだ。幽霊じゃ成長しない」
「なぜ...きたんです...」
青年が見せるのはヒスイの耳飾り。
「これが...ロサ伯爵の殺しの現場に落ちていたのを偶然に思えってのは 苦しいがね。そいうことにしてもいい」
「もうそれはみつからないと思っていました。忘れようと思っていました。何もかも...」
「うそつきめ...」青年は少年の唇を奪いながらつぶやくのだった。

【コメント】

こういう話です。これだけです。同人誌『らっぽり』の男と男がからむだけの "ヤマなし、オチなし、イミなし"、略して"やおい"(現在、男同士の耽美恋愛物の意味で使われている”やおい”の語源は多分これです。)特集号に載った話ですから。
青年は『カルキがくる日』のステフェン、少年はダナエ。ファンには嬉し恥ずかしの一編です。
この「物語」を全部読みたい!!と願うのは私だけではないでしょう。

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4. 最後の者(SF小説) *

【初出】同人誌『ヴェガ』 1975年
【コメント】

8人の宇宙船の乗組員が異星人の少年を見つけるが、その少年の身体には精神体化した多くの異星人が巣くっていて、 地球人の身体にも乗り移ろうとしていた、というのがメインストーリー。 ネタとしては「たったひとつの冴えたやり方」と同じ。 兄と妹の許されざる愛という「風に哭く」に出てくるモチーフも出てくる。

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5. Q&A *

「『寄宿舎ごっこに』熱中しました」
【初出】『ペーパームーン』14号 1978年夏
「うちわ軍団の夢」
【初出】『ペーパームーン』18号 1979年夏
「愛しのドルリー・レーン」
【初出】『ペーパームーン』23号 1980年夏
【コメント】
「愛しのドルリー・レーン」は、入院中の1980年夏に書かれた。
「Q.今、あなたは長い眠りから目覚めました。まずは始めにすることは何ですか? A.思いっきり深呼吸をして、コップ一杯の水を飲みたい......実感をもって。」 といったやりとりが、読むたびに切ない。

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6. エッセイ *

「悩ましきもの---花と男」
【初出】『ペーパームーン』14号 1978年
「わたしの夜の翼」
【初出】『ペーパームーン』16号 1979年
【コメント】
花郁悠紀子さんは、花が好きで、デスラー総統みたいな人が好みだったらしい。
『指輪物語』も『メアリー・ポピンズ』もエイキンも読んでいたし、 シルヴァーバーグの『夜の翼』(ハヤカワ文庫SF)が好きで、 『フェネラ』のイメージはこのあたりからきていたようだ。

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有里 (alisato@anet.ne.jp)
http://alisato.web2.jp/book/kai/

最終更新日:2001/10/31