著作紹介

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井辻朱美 著作紹介


『新装版 地球追放』

(沖積舎, 1990, ISBN4-8060-1032-4)

1982年に出版された作者の第一歌集の新装版。
作者自ら、「SF短歌」「FT短歌」と呼ぶ短歌は、わずか31文字の中に、宇宙や幻の都市や中世騎士物語の世界を閉じ込めたガラス玉を思わせます。 短歌のモチーフの中には”シャンブロウ”や”砂の惑星”まであって、思わず微笑したくなったりして。
「地球追放」のタイトルは、中井英夫の詩集から取ったものだそうです。

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『エルガーノの歌』

(ハヤカワ文庫JA, 1990, ISBN4-15-030333-9)

表題作は、故あって国を離れ、旅篭と居酒屋で歌われる歌の作り手となったエルガーノの物語。
その他、娘に化けて祭りにまぎれこんだ魔物の恋の顛末を語る「魔界の花」、 生を称える少女の幽霊と賭けをした神の物語「イシルハーンの賭け」など。
ロード・ダンセイニあるいはタニス・リーの短編を思わせるファンタジー集。

収録作品:魔界の花/北の娘/イスファタル/谷の女神/雲/海の王子/イシルハーンの賭け/北方の太陽/魔物の贈物/黄金の髪のロムセイ/赤い石/ファラオの娘/エルガーノの歌

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『パルメランの夢』

(ハヤカワ文庫JA, 1991, ISBN4-15-030353-3)

パルメランは、遊園地で将棋を指す自動人形だった。その中にはメルツェルという小男が入っていたが、やがて彼は死に、パルメランの中に幽霊として住みついた。 時計屋のファン・フウリク博士は、メルツェルの代わりにパルメランの中に棲むことになった。
パルメランは、遍歴帽子屋のロフローニョとともに世界のはての<隕石の原>へ旅し、虹の化石を見出すのだった…

いちおう表題作のあらすじめいたものを記すとこうなるのですが、あんまりちゃんと説明できない物語なのですね。作者自ら「かなりヘンな話」と書いているぐらいですから。

同時収録された「ロフローニョの四季」は、遍歴帽子屋のロフローニョを主人公にした連作。
 願いをかなえる黒い帽子は、悲しみに沈む春の国の王女のために。
 不死の火の鳥の羽根の帽子は、恋する吟遊詩人のために。
 水の恋文で作られた帽子は、神殿の巫女のために。

こちらは、一応ちゃんとした(?)メルヘン。どの話もハッピーエンドなので、私はこちらの方が好きです。

挿絵は三月由布子。

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『ヘルメ・ハイネの水晶の塔』 上・下

(講談社X文庫 ホワイトハート, 1991, ISBN4-06-255015-6/255026-1)

水晶通りのはずれにあるヘルメ・ハイネの塔へ家政婦としてやってきた、 魔法の箒を持つ少女マーレンの物語……だったはずなのだが、 下巻にいくと物語はどんどん解体し、時間も過去と未来を往復し、視点もマーレンから薬屋の女主人ミス・ダルシアへと移り、最後には螺旋状に閉じてしまう。

作者いわく、「ヌエのような物語」。
「特に後半では時間の流れがヘンになってしまうので、ストーリーというのはあんまりはっきりしてません。」
もしかしたら、失敗作なのかもしれないが、にもかかわらず魅力があるという、奇妙な奇妙なファンタジー。

挿絵はめるへん・めーかー。

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『幽霊屋敷のコトン』

(講談社X文庫 ホワイトハート, 1992, ISBN4-06-255057-1)

私の一番好きな物語。

コトンは、古い屋敷でたくさんの自分の一族の幽霊たちと暮らす娘。「幽霊屋敷」を観光客に見学させて生計を立てている。 ある日新聞記者の取材を受けたことから、彼女と幽霊屋敷の前に謎の女性が現れ、いつまでも変ることなく続けられるはずだった生活が変わっていく。良い方へか、それとも悪い方へか…

というようなお話。
やっぱりこれも奇妙なファンタジー。後半はちょっぴりホラー。最も近い雰囲気を持つのは、アラン・ガーナーの小説でしょうか。 生きた人間も出てくるけれど、魅力的なのは幽霊たちの方で、特に、ちょっぴり意地悪な従兄弟ドナンと、「ひと嫌いで、内気だったけれど、世界のどこへでもあるいていくことができた」ヨールキップは、実に印象的です。
 コトンは、日々ぼーっとして、お茶を飲んだり、日記を書いたりしています。日記を書くのは祖父との約束のため。

祖父は、それだけを彼女に約束させた。
「いいかい、おまえが書かなければ一日は枯れた薔薇の花びらのように、くずれてどこにもないものになってしまうのだよ。」(p.15)

この日記のくだりが、とても記憶に残っています。私が、今、こんなものを書いているのも、コトンと同じように、崩れていってしまう時間を留めておくためなのかもしれません。

 作者によれば、この小説は、”私小説ファンタジー”とのこと。井辻さんもこういうヒトなんでしょうか(笑)。
一応、ラブ・ストーリーです。

挿絵は、もとなおこ。

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『トヴィウスの森の物語』

(ハヤカワ文庫ハイ!ブックス, 1992, ISBN4-15-110007-5)

十字軍遠征のため、騎士トヴィウス卿は南へと旅立った。留守を守るのは、奥方と幼い息子。好奇心あふれる土地頃の少年は、禁じられている森へ入り、禁断の木を傷つけて、魔王の城へと連れ去られてしまう。

と、いう導入部分の説明を読むと、ファンタジーにありがちな少年の自己探求の物語のように思えますが、一筋縄ではいかないのがこの作者のファンタジー。

「予定調和」なんて言葉をふっとばし、そんなのあり〜?という展開になってしまいますが、無意識からくみ上げた「本物のファンタジー」というのは、そういうものなのかもしれません。
(でも、やっぱり小説としては破綻している気がする。)

死人の生える魔王の庭の庭番である美しい魔物のギルメットや、夜になるとハリネズミの皮をぬぐ妖精の少女、 深い井戸の底に棲む螺旋の男など魅力的なキャラクターが出てきますが、主人公のマルコム君は、 とっても影が薄いです。

挿絵は、中山星香。

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『完全版 風街物語』

(アトリエOCTA, 1994, ISBN4-900757-01-2)

風街は、魔法使いによって作られた、地球の辺境にある街。あらゆる風が流れ込み、夢が吹き寄せられ、さまざまな物が掘り出される。噴水があり、塔があり、常に奇妙な出来事が起こっている。 この本は、この街に住む老学者マーチ博士が綴った記録である。

不思議な街、風街を舞台にした連作短編集。
風街の空気は、明るく透明で、ユーモアに満ちていて、時にせつない。 ロード・ダンセイニやタルホファンなら、きっと気に入るでしょう。
私は、コーヒー党なもので「珈琲の魔物」がとっても好きです。

収録作品:不死の竃/眠り男の森/マーチ博士の備忘禄/チェスの平原/噴水綺譚/オルゲルビュヒライン人形芝居/ロビン・グッドフェロウの災難/少女と傘/夢の掃除人/まがまがしい伝説/春一番/魔女のしもべ/指環の魔人/花瓶−−あるいは硝子の屈折率について/珈琲の魔物/地震の話/扉綺譚/ファルファレーシュ/ドラゴンの夢

購入ガイド
★ 版元【アトリエOCTA】の【単行本目録】。 購入については【購入方法】を参照。
★ISBNでネット書店を検索:ISBN 4-900757-01-2
bk1/ISIZE/旭屋/Jbook/BOL/紀伊/amazon/eS!/本屋

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『遥かよりくる飛行船』

(理論社, 1996, ISBN4-652-07305-4)

帯の文章いわく
ふと空を見上げたら奇蹟と出会った。
銀色のビルの街に生きるアスナ。彼女を空からみまもる飛行船。
未来へと向かう都市の喧噪と濃密な島の血の間でゆれるアスナが紡ぐ恋の魔法。
のびやかな新感覚ラブ・ストーリー。


非常に正確に内容を表した文章ではあるのですが、装丁に騙され(?)、この「新感覚ラブ・ストーリー」を、「都会的センスのラブ・ストーリー」だと思って読んだ人は、頭抱えることうけあい。(笑) なにしろ、アスナの働くビルは、夢の地層の地殻変動が起きていて、そのためにゼラニュウムの鉢植えが生えるという、訳の分からない設定になっているのですからね。 その上、アスナが恋する相手というのが、夢の地球からやってきた惑星管理官で、 その実体は「アンハングエラ」、この地球では絶滅してしまった鳥になりかけた恐竜だというんですから、頭クラクラしてきます。(笑)
(多分、稲垣足穂の愛読者なら、こういうのにもついていけるでしょう。私は、もちろん大丈夫でした。)

舞台は摩天楼の都市になっていますが、『幽霊屋敷のコトン』に似た印象を受けました。 ラブストーリーで、後半ホラーがかったところがあるからでしょうか。 アスナは、コトンの生まれ変わりといっていいかもしれません。

テーマパークの予定地の埋立て地に「海からやってきた古いものたち」が集まるシーンは、怖いです。

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『 ファンタジーの森から』

(アトリエOCTA, 1994, ISBN4-900757-02-0)

『幻想文学』誌※ に連載されたファンタジーについてのエッセイ、 歌集『水族』※ からの短歌、オペラと人形についてのエッセイ、トールキン・ 『ナルニア国物語』※ ・東京ディズニーランドについて語ったエッセイからなる。

 トールキンについてのエッセイでは、 『指輪物語』※ の一節が著者自身の訳で記されていて、井辻朱美訳『指輪物語』への憧憬をかきたてる。 (現在出版されている瀬田貞二訳は文体の選択を間違えたという気がしてならないので、井辻訳のLOTRを読んでみたいと思う。)

 この本の最後に収録されている「光と闇の現象学―東京ディズニーランドの洞窟」での考察が、 『遥かよりくる飛行船』のテーマパークのシーンへと繋がっている。

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『とっても奇蹟な日常』

(ヴォイス, 1995, ISBN4-900550-65-5)

ニューエイジ系の本の版元ヴォイスから出されたエッセイ集のためか、「気」の話や自己実現の話題が多い。

理学部の自然人類学科の学生だった井辻さんがなぜ大学院では比較文学比較文化を専攻したかとか、 実は詩人になりたかったとか、青池保子『イブの息子たち』が愛読書だとか、意外とも思える一面も垣間見ることができて、 興味深い一冊。

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井辻朱美 妖精国の歌人
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有里 (alisato@anet.ne.jp)
http://alisato.web2.jp/book/ituji/

更新日: 2001/10/30