小説
〜『航路』登場文学作品解説〜

目次


ジェームズ・バリ『ピーター・パン』

原典リンク

Peter Pan:Alex Catalogue of Electronic Texts
Peter pan-txt

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作品解説

ジェームス・マシュー・バリ James Matthew Barrie(1860−1937)は、スコットランド生まれのイギリスの作家。1904年に戯曲『ピーター・パン』を書き大成功をおさめる。
『ピーター・パン』にはいくつもの版があり、1904年に書かれた戯曲のほか、1902年に発表した自伝的小説『小さな白い鳥』からピーター・パンの出てくる部分を独立させた1906年の『ケンジントン公園のピーターパン』、戯曲をもとに書かれ1912年の『ピーター・パンとウェンディ』がある。

現在『ピーター・パン』として読まれ、ミュージカルやディズニー映画の原作となっているのは『ピーター・パンとウェンディ』である。

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『航路』登場部分

でもピーター・パンが、死ぬっていうのはすごい冒険だろうなっていうところは好き。
8章 上巻p.124

【解説】
メイジーが『ピーター・パン』の本を読みながら言う台詞。
『ピーター・パンとウェンディ』の8章の最後に出てくる。『航路』8章のエピグラムにあるように、ブロードウェーのプロデューサー、チャールズ・フローマンの最後の言葉でもある。
『航路』では、この台詞がこの後も何度か登場する。

"To die will be an awfully big adventure."
James M. Barrie "PETER PAN"

検索してみるとわかるのだが、『ピーター・パンとウェンディ』にはこの他にも「死」にまつわる単語が頻出する。ネバーランドは死と隣り合わせの地でもあるのだ。

 ジョアンナは心臓を落ち着かせようとするように、片手を胸に当てた。「『死ぬっていうのはすごい大冒険だろうな』」とつぶやくと、敷居を越えてデッキに出た。
24章 上巻p.354

【解説】
〈船〉の中でジョアンナは覚悟をきめてデッキに出る。

死ぬっていうのはすごい大冒険だろうなと元気よくいったつもりだったけれど、震えがちの声はやっぱり自信なげに響いた。
44章 下巻p.224

【解説】
ジョアンナは〈船〉のデッキにひとりたたずむ。

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ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』

原典リンク

OZ:Alex Catalogue of Electronic Texts
The Wonderful Wizard of Oz-txt

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著者と作品解説

ライマン・フランク・ボーム Lyman Frank Baum(1856-1919)は、アメリカの作家。
ニューヨークに生まれ、新聞記者、編集者、セールスマン、劇場支配人、プロデューサー、雑貨店主、劇作家などさまざまな職業を経て、子供向け創作で好評を得、さらに『オズの魔法使い』で大成功し、オズのシリーズ14冊のほか、戯曲や詩、大人向けの作品も数多く書いた。
『オズの魔法使い』は、1902年にボーム自身の脚本でミュージカルとなり、1939年にはジュディ・ガーランド主演で映画化された。

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『航路』登場部分

 でも、死が消滅に直結することだとしたら、どうして彼らは「おしまいだ!」とか「終了する」とかいわないんだろう。『オズの魔法使い』の西の悪い魔女みたいに、「溶けていく、溶けていく」となぜいわない? (5章 上巻p.72

【解説】
ジョアンナは、死とNDEについて考える。

『オズの魔法使い』に関連する台詞だが、映画好きのジョアンナのことなので原作ではなく映画の台詞なのかもしれない。

ジョアンナは犬を抱きしめた。ここはもうカンザスじゃないみたいね、トト」といい、足をひっこめてピアノのへりから離れた。 (55章 下巻p.356

【解説】
この場面については、ネタバレにつきノーコメント。

これも『オズの魔法使い』に関連する台詞だが、原作には該当する台詞がないので、おそらく映画からの台詞だと思う。

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ジェーン・オースティン『高慢と偏見』

原典リンク

Pride and Prejudice by Jane Austen

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作品解説

作者ジェーン・オースティンについては以下を
Jane Austen英国女流作家探索】 作品については以下のサイトを参照。
グーテンベルグ21「高慢と偏見(上)」

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『航路』登場部分

 ブライアリー先生はずっと独身を通していた。「世間の人々が独身者をどう思うかという問題に関するミズ・オースティンのコメントは正しい」授業で『高慢と偏見』を読んだあと、ブライアリー先生はいった。
21章 上巻p.304

【解説】
ジョアンナの回想。
ミズ・オースティンのコメントとは、『高慢と偏見』の冒頭のことであろう。

IT is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune must be in want of a wife.
However little known the feelings or views of such a man may be on his first entering a neighbourhood, this truth is so well fixed in the minds of the surrounding families, that he is considered as the rightful property of some one or other of their daughters.
Pride & Prejudice, Chapter I of Volume I

グーテンベルグ21の伊吹千勢訳】では次のように訳されている。

 独身で相当の資産のある男性は当然細君が必要であるというのは世間一般にみとめられた真理であります。
 この真理は人々の胸中にがんとして根をはっていますのでそのような資格をそなえた男性が近所に引っ越してきますと、その考えにも気持ちにもおかまいなく、その男性はそこら近所の娘のたれかかれかの正当な所有物としてみなされるのであります。
ジェーン・オースティン/伊吹千勢訳「高慢と偏見(上)」

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ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』

原典リンク

Lewis Carroll: Alex Catalogue of Electronic Texts
Through the Looking Glass-txt
翻訳工房アリス
セイウチと大工

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著者と作品解説

ルイス・キャロルについては以下を参照。
ルイス・キャロルのページ

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『航路』登場部分

残念だな、きみが乗船していることをもっとはやく知っていれば、もっといろいろな話ができただろうに『お靴や――お船や――
31章 下巻p.41

【解説】
ジョアンナは〈船〉の中でブライアリー先生と出会う。


ブライアリー先生が口にしているのは、『鏡の国のアリス』Through the Looking Glass の「せいうちと大工」のパートからの引用。

'To talk of many things:
Of shoes---and ships-- and sealing wax--
Of cabbages--and---kings---
And why the sea is boiling hot---
Lewis Carroll  The Walrus and the Carpenter

なぜいきなり「せいうちと大工」が引用されたのかは不明。"To talk of many things" という語句に触発されただけなのかもしれない。

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トマス・ハーディ『日陰者ジュード』

原典リンク

Jude The Obscure : Alex Catalogue of Electronic Texts
Jude the Obscure -txt

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著者および作品解説

トマス・ハーディについては以下を参照。
トマス・ハーディペーパーバックガイド
『日陰者ジュード』は、学問に憧れる青年ジュードが、肉感的でしたたかなアラベラと、精霊のようなスーに翻弄されて破滅の道を辿る物語らしい。

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『航路』登場部分

「『死ぬときは誰もがひとり、天がそうおぼしめした』」とブライアリー先生がいった。
37章 下巻p.138

【解説】
キットにかけた電話にブライアリー先生が出る。


引用は、ジョン・キーブルの1827年の詩集"The Christian Year"所収の詩、"Twenty-Fourth Sunday after Trinity"の冒頭。(→解説

作家トマス・ハーディーは、自身も読んでいたこの詩集を、勉強・読書を 愛する『日陰者ジュード』の主人公にも読ませ、やはり冒頭から 二行を引用している(Part Second, Chapter One.)。

Why should we faint, and fear to live alone,
Since all alone, so Heaven has will'd, we die?

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トールキン『指輪物語』

著者および作品解説

J・R・R・トールキンについては以下を参照。
J・R・R・トールキン - Wikipedia

『航路』登場部分

そしてフロドは至福の国をめざして帆をあげた」 (35章 下巻p.88
「フロドは灰色港でエルフの船に乗った」
35章 下巻p.88

【解説】
〈船〉の中でブライアリー先生は「水を渡ることは古来より死の象徴だった」と語る。

語られているのは間違いなくトールキンの『指輪物語』だが、現実のブライアリー先生が他の文学作品と同じように『指輪物語』を語ったかどうかは定かではない。(この部分はむしろジョアンナの趣味のような気がするのだが)

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有里 (Alisato Akemi)
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