ロングフェロー『ヘスペラス号の難破』
〜『航路』登場文学作品解説〜

目次


ロングフェロー『ヘスペラス号の難破』

原典リンク

University of Toronto English Library (UTEL) :
Henry Wadsworth Longfellow (1807-1882)
 The Wreck of the Hesperus

[Top]


著者および作品解説

ヘンリー・ワーズワース・ロングフェロー(Henry Wadsworth Longfellow, 1807-1882)は、アメリカの国民的詩人。メイン州のボードン・カレッジを卒業後、2回にわたる4年間のヨーロッパ留学ののち、ハーバード大学のフランス語、スペイン語教師を務めた。
代表作は、Evangeline (1847)、The Song of Hiawatha (1855)など。

The Wreck of the Hesperus は、その題名通り、帆船ヘスペラス号の難破を題材にした詩。
経験豊かな老水夫がとめるのも聞かず冬の海を航行していた帆船ヘスペラス号は、嵐にあう。船には船長の娘も乗っていた。船長は船から投げ出されないよう娘をマストに縛り付ける。だが、どんな嵐も乗りきってみせると語った船長は死に、娘は船と共に嵐の海に沈む。翌朝、漁師が漂うマストのそばに浮かぶ娘の亡骸を見つける。

関連ページ

[Top]


『航路』登場部分

[Top]

 キットが電話に出た。「ごめんなさい。けさからずっとロングフェローの『宵の明星[ヘスペラス]号の難破』を暗唱してるの。もしかしたら手がかりになるかもと思ったけど、でもロングフェローでしょ。授業で教えたとしても、高校じゃなくて中学ね」 「『”おお、父よ! 教会の鐘の音が聞こえます。おお、あの音はなんだろう?”』」と背後でブライアリー先生の声がした。「『”岸辺の岩場の霧鐘だ”と叫び、彼は外海へと舵をきった』」
30章 下巻p.27

【解説】
キットにかけた電話の向こうでブライアリー先生が『宵の明星号の難破』を暗唱している。

引用された部分は、以下の通り。

"O father! I hear the church-bells ring,
Oh say, what may it be?"
"'T is a fog-bell on a rock-bound coast!" --
And he steered for the open sea.
The Wreck of the Hesperus (ll.37-40)

『宵の明星[ヘスペラス]号の難破』は、ロングフェローの作品の中では比較的マイナーな詩だと思われる。タイタニック号と同じく冬の海での難破ということで、連想がはたらいたのだろうか?

引用された詩の中で「おお、父よ!」と叫んでいるのは、船長の娘。


「もしケヴィンなら、宿題は『ヘスペラス号の難破』の百六十九ページから百八十ページまでだと伝えなさい。期末試験に出ると」
「とにかく無事でよかった」とジョアンナ。
「『”おお父よ! 輝く光がみえる”』」ブライアリー先生がいった。「『”おお、あれはなんでしょう”』」
32章 下巻p.56

【解説】
キットにかけた電話の向こうでブライアリー先生の声がする

引用された部分、

"O father! I see a gleaming light,
Oh say, what may it be?"

は、以下のように続く。ショッキングな展開である。

But the father answered never a word,
A frozen corpse was he.
The Wreck of the Hesperus (ll.45-48)


”おお父よ、銃の音が聞こえます”」とブライアリー先生の声がした。
「なにかわかったらすぐ電話する」とキット。
「とにかくできるだけはやく――」
「『”おお、あの音はなんだろう?”』」とブライアリー先生がいった。 「知りたいのよ」とジョアンナはいい、キットは了解と答えたが、ちゃんと理解してもらえたかどうかはわからない。うしろでブライアリー先生が朗々と語りつづけている。「『”遭難した船だ、この怒れる海を生き延びることはできぬ”』彼らはわれわれに話しかける
32章 下巻p.56

【解説】
キットにかけた電話の向こうでブライアリー先生の声がする。

引用部分は以下。

"O father! I hear the sound of guns,
Oh say, what may it be?"
"Some ship in distress, that cannot live
In such an angry sea!"
The Wreck of the Hesperus (ll.41-44)

実はこのときブライアリー先生はジョアンナの求める答えのヒントを口にしているのだが、彼女は気付かない。


リードを自分のウエストと犬と柱に巻き、ぎゅっと縛った。
「こうすれば、あなたを放さずに済むわ。『ヘスペラス号の難破』みたいに」そういいながら、ここにブライアリー先生がいてくれたらいいのにと思った。「『彼は折れた帆桁から綱を切り、彼女を帆柱に縛りつけた』」と暗唱したけれど、つぎの行を口にしようとしたとき、出てきたのはべつの引用だった。
51章 下巻p.312

【解説】
ジョアンナは沈みゆく〈船〉の中で子犬に話し掛ける。

引用部分は以下。つづく2行は下巻p27で、ブライアリー先生が暗唱していた部分。

He cut a rope from a broken spar,
And bound her to the mast.
The Wreck of the Hesperus (ll.35-36)

[Top]


[Home] [Book] [目次]

有里 (Alisato Akemi)
http://alisato.web2.jp/book/briary/